情熱sympathy last
突然の悪魔の出現にその場が氷りついた。
そんな雰囲気など気にする事なく悪魔は室内に入る。
委員長は蛭魔相手でもなんとか威厳を保とうと努力はしているが及び腰になっているのを完全には隠せていなかった。
「なっ、何なんだ君は?!今は会議中だぞ!出て行きたまえ!」
少し声が裏返っているので残念ながら威厳も迫力も無い。
「コレはほんのお礼デスヨ。ツマラナイ物デスガドーゾ」
蛭魔は委員長に封筒を差し出した。
受け取った委員長は恐る恐る中を確かめ、何が入っているのか気付くと、とたんに顔色が変わった。
顔は青ざめ、大量の脂汗を流し出した委員長のただならぬ様子に風紀委員の誰もが息を潜めて見守りつつも好奇心が首をもたげるのを押さえられない。
「Ya-Ha-!」
悪魔の声に身をのり出しかけた者達が再び萎縮した。
茫然自失の委員長を蹴って部屋の隅に押しやると前に立ち風紀委員一同を見回しニヤリと笑う。
その笑顔に皆の背筋が冷たくなる。
「てめえらには世話になったなぁ?部活禁止にしてくれたお陰でネットトレーディングでガッポリ稼ぐことが出来たぜ。あんまり儲かったから つい島を買った程だ」
島?
島っていくら位するんだ??
っていうか、いくら稼いだんだ?!
それぞれの頭にいくつもの疑問が浮かぶ。
「この無人島…瀬戸内の島だから、仮に“獄門島”とでもしておこうか。次にまた部活禁止なんて言うふざけたプレゼントをもらった日には てめぇら全員強制連行で無人島でのバカンスにご招待してやるぜ!楽しみにしときやがれ!Ya-Ha-!」
蛭魔はそう叫ぶながらおもいっきりマシンガンをぶっぱなした。
「ひ、蛭魔君 やめなさい!!」
蛭魔の登場からこっち、唖然と見ているだけだったまもりが誰よりも早く正気に戻り暴走を止める為、蛭魔の前に立ちふさがった。
「糞風紀 てめぇにも世話になったからお礼しなくちゃなあ」
そう言うと制服のうちポケットから何かを取り出し「そらよ!受け取りやがれ!」と天井に向かい投げた。
投げられたものは何枚もの写真でハラハラと部屋中に降り注ぐ。
「まさかアノ写真?!」
慌て拾い集めようとしたが、大量な上に他の風紀委員の頭やら手やらに直接落ちた物もあり、もはや誰の目にも触れず回収することは不可能だった。
「酷い…」
まもりはその場に立ち尽くし涙が溢れて来た。
そんなまもりの姿に気づいた男子達が慌てて声をかける。
「酷くなんてないですよ!」
「十分可愛いっす!」
「この写真もらえます?」
??
まもりは皆の言っている意味がわからず落ちている写真を拾って見た。
そこに映っていたのはしかめっ面した自分のアップだった。
いつの?
…!
蛭魔がくれたブラックコーヒーを飲んだ時だ!
いつの間に?!
アノ写真ではなかったので一瞬ほっとしたものの、こんな写真をばら蒔かれるのもアリエナイ!
「蛭魔ー!!」
怒りが頂点に達したまもりが振り返った時、悪魔はすでに煙のように消えていた。
あけっぱなしのドアの向こうから 遠ざかっていく悪魔独特の高笑いが聞こえてきてまもりは怒りで震えた。
蛭魔に対し怒りを新たにしたまもりはその後も蛭魔との対決姿勢を強めて行ったが、風紀委員一同は触らぬ悪魔に祟り無しと及び腰になった。
ここからまもりの孤軍奮闘の悪魔退治が幕を開けたのだった。
終わり
いかがでしたでしょう?
ひっぱといてコレ?って思われたかしら~。
二人が・・・少なくともまもりが蛭魔を認めるのってマネージャーになってからだと思うので
3歩進んで2歩下がるって感じを目指しました。
(蛭魔は結構早くからまもりの事は有能と認めてそうだけど)
原作で 部活停止なんて措置はとらないとまもりは言ったけど、それが悪魔を封じる有効手段なら他の風紀委員が放っておかないんじゃないの?と思って書き始めたお話でした。
色々予定外な設定が出てきて 長くなっちゃいましたがいかがでしたでしょうか?
島買った理由なんて考えてもなかったのに 蛭魔が勝手にしゃべりだしちゃいましたヨ★
蛭魔所有の獄門島・・・・怖いですね。
これまた何故か出てきたんですよね。
本当は蛭魔なら買った島は海外かも?
横溝正史なら私は「女王蜂」が好きです。
でも、この主人公は十文字が似合いそう★