君の音 5
三人は音楽室へ移動した。
蛭魔は依子に渡された楽譜に本当に読んでいるのか疑いたくなる速さで目を通した。
「覚えた」と言うと、一音一音、確かめるように鍵盤を鳴らした後、おもむろに演奏を始めた。
蛭魔の演奏はとても初見で弾いているとは思えない素晴らしいものだった。
男性と女性の差なのか音に迫力があり圧倒される。
それでいながら繊細さも滑らかさも損なわれてはいない。
流れるような軽いタッチで儚い音色を紡ぎだす長い指から目が離せない。
常々、普通ではないとは思っていたけれど、本当に彼はなんて人なんだろう。
言葉が見つからない。
彼は本当に悪魔なんじゃないかと思う。
でなければここまで魅了されるハズがない。
結局、蛭魔は一度もミスすることなく一曲弾き終え、演奏を聞いた二人はしばし放心していた。
「チッ、思うほど運指が行かねえなぁ」と言いながら蛭魔は楽譜無しで別の曲を弾き始めた。
この曲はどこか聞いたことがある気がするが曲名が浮かんで来ない。
「この曲はなんて言う曲なの?」
「こんな有名な曲知らねえのか?『ゴッドファーザー』の『愛のテーマ』だ」
蛭魔がそう言うと曲は聞き覚えのあるサビの部分に入った。
「『ゴッドファーザー』好きなんですか?」
「まあな」
依子の問いに演奏しながら蛭魔は答えた。
「『マットレスで組め』名言だろ?」
「それってもしかして『You've got mail』?」
まもりの言葉に蛭魔は眉をあげると意外そうな視線をチラリと送った。
「あんな古い映画知ってんのか」
「母さんがレンタルしたのをたまたま一緒に観たのよ。蛭魔君の方が意外じゃない。あんな恋愛映画観るなんて」
「トム・ハンクスは嫌いじゃねえからな」
「そうなんだ。でも意外と言えば蛭魔君がピアノを弾けるほど意外な事はないわよね。もしかして習ってたの?」
曲がかわった。
蛭魔君が『きらきら星』弾いてる~。
に…似合わない…。
今度の曲は『きらきら星変奏曲』誰もが聞き慣れた曲だが弾くのは結構難しい。
その曲を蛭魔の長い指が憎たらしい位の余裕でさらりと弾きこなす。
「習ったって程じゃねぇが、ガキの頃 住んでた家の近所にそこらで遊んでるガキにピアノのを教えるのが趣味の糞ジジィが居たんだよ。その糞ジジィの孫ってのがお菓子作りが趣味でピアノの習いに来たガキに山盛り振る舞うから、そこらじゅうのガキ共が菓子目当てで入り浸ってたんだよ」
「蛭魔君もお菓子目当てで?」
「んっなワケねぇだろ。その糞ジジィってのが退役軍人で無類の銃器マニアだったんだよ。俺の目当てはその銃だ。教えられた通りピアノ弾いてやったらご機嫌で地下にある射撃場で実弾撃たせてもらえたんだよ」
「…蛭魔君って子供の頃どこに住んでたの?」
「アメリカ。二年程だけどな」
今の蛭魔を形成した過程の一部を解明できた気がした。
「慣らしはこれくらいで良いだろう。おい、糞テール!一回、通しで合わすぞ。間違えても最後まで弾きやがれ。ほら!行くぞ!」
「蛭魔君、私の代わりに弾いてくれるの!?」
「他に頼める奴がいるなら俺は帰りマスガネ?」
「うっ…よろしくお願いします。」
「糞テール!早くしやがれ!」
二人のやりとりをボーッと眺めていた依子は慌て弦を構えた。
続く
あ~・・・スンマセン!!
こんなんですぅ。
オリジナル設定バリバリ★
とんでもないじーさん(笑)
このじーさんの孫娘(16歳くらい?)が「君の音」での蛭魔のほのかな初恋かも~なんて思ったり★
妄想しすぎ・・・いらん設定考え過ぎ。
「you've got mail」観たことある人いますかね?
解説しますと・・・
「マットレスで組め」は「ゴッドファーザー」の中のセリフで、「you've got mail」ではメールでだけの知り合いの 悩みを抱えている彼女を その理由はしらないながらも 励ます為にトムが引用して送った言葉です。
意味合いとしては「戦え!」って事です。
蛭魔さんが この二人に贈った言葉・・・なんでしょうね?きっと。
蛭魔にピアノを弾かせるにあたり、なんで「ゴッドファーザー」の愛のテーマが出てきたのか謎。
なんだか イキナリ蛭魔が弾き出しちゃって・・・
本当はリストの「ため息」とか考えてたんですけどね?
映画の話の一連の流れは勝手に脳内会話で進んじゃって・・・
まだまだ映画の話が続きそうだったので ぶつ切りましたよ★
ますます わけの分かんない小説になってますね。

PR