CLUB9 (7)
「うっ……ひくっ…」
ショウが居なくなりホッとしたまもりは安堵のあまり涙が溢れて来た。
どうなってしまうのか本当に怖かった。
「泣くな糞マネ。未遂だったんだから良いだろ」
「だ…だって…だって…ひっく、うぅ…こ、怖かったん…うっ…」
「わかったわかった、わかったから泣く前にスカート下げろ。上がりっぱなしでスパッツ丸見えだぞ」
「うっ…スパッツじゃない…もん、レギンス…」
まもりは寝転がったままでスカートのずれを直した。
そんなまもりに蛭魔はため息をつき、起きて座るよう促した。
「いい加減起き上がりやがれ。ほら」
なかなか起き上がらないまもりの腕を取り蛭魔は引き起こした。
「…ブラウスのボタン止めろ」
いくつかボタンが外れて胸元がはだけている。
まもりは一生懸命ボタンを止めようとするが、指に力が入らない上に震えているのでボタンを止める事が出来ない。
「うぅ…」
また涙が溢れて来る。
「チッ」
蛭魔の小さな舌打ちが聞こえたかと思うと、腕が伸びて来た。
驚いて蛭魔を見ると、蛭魔はこちらを見てはいなかった。
顔を横に向け感覚だけであっという間にすべてのボタンを止めてしまった。
蛭魔の手が離れて行く。
「あ?」
ソファーに座ったまもりから離れるため立ち上がろうとした時、服に何かが引っ掛かった。
「何してんデスカネェ?糞マネ」
蛭魔のシャツはしっかりとまもりに掴まれていた。
「…うぅっ…クスン」
うつむいたまま何も答えないまもりに蛭魔は盛大なため息をつくと膝を折り視線の高さをまもりと合わせた。
「ひでえ顔が余計ひでえ顔になってんぞ」
蛭魔の言葉に一旦は泣き止んだまもりだったが、蛭魔の顔を見ていると再び涙が溢れて来た。
「うぅっ…怖かったァ…」
そう言うやまもりは蛭魔の首にしがみつき声を殺して再び泣き出してしまった。
首を思い切りホールドされては動くこともままならず、しがみついて泣き続けるまもりの背中をなだめる様に優しく撫でる。
「…本当に怖かった…」
「ああ」
「気持ち悪かった…」
「ああ」
背中を撫でてくれている蛭魔の手が優しくて気持ちが落ち着いていくのが自分でもわかる。
「きっと蛭魔君が助けてくれるって思ってた…」
「ああ」
「蛭魔君…」
顔をあげたまもりと蛭魔の視線が絡み合う。
「あー…、お水を持って来たんだけど…どうもお邪魔だったみたいだねぇ」
突然の声にまもりは我にかえりそちらに顔を向けると、そこには弱り顔のキッドが水の入ったグラスを持って立っていた。
「え…キッドさん?」
思いがけない人の登場にまもりの脳は一瞬フリーズしたが、その後は急速に冷静さを取り戻した。
「きゃあ!ごめんなさいっ!」
蛭魔に抱きついている自分に気付き、まもりは蛭魔から離れるついでに無意識に蛭魔を突き飛ばしていた。
「いってぇ」
膝立ちでしゃがむと言う不安定な体勢だった蛭魔は突然の事に反応しきれずしりもちをつくはめになった。
「あ!ごめんなさい蛭魔君!大丈夫!?」
自分のしたことに慌てて蛭魔に駆け寄る為に立ち上がったがまだふらつきが残っていてまもりは足がもつれてしまい勢い良く蛭魔の上に倒れ込んでしまった。
「アホか糞マネ!俺にとどめでもさす気か!?てめえはじっとしときやがれ!」
「うっ…ごめんなさい」
「取り込み中のところ悪いんだけど、帰るよ」
折り重なって倒れている二人を見下ろしながら静かにグラスをテーブルに置きながら言った。
「どうもねぇ、商談するような状態じゃないでしょう?」
「あー…まあな」
鍛えた腹筋を使ってまもりごと起き上がり蛭魔が答える。
「この状態じゃあな」
まもりは話しの内容はわからないが、流れからどうやら何かの話し合いをしている蛭魔とキッドの邪魔をしてしまっている事はわかった。
「キッドさん、ごめんなさい。私、もう帰るから。続きして」
「アホ糞マネ!てめえ、そんな状態で一人で帰れるワケねーだろうが」
「姉崎さん、気にしないで良いから、って言うか今日は来た時から蛭魔氏はフロアばかり気にしててね、どうしたのかと思ってたんだよ。まさかこんな事になるとはね。蛭魔氏が気もそぞろになるワケだねぇ」
「え…」
「糞ゲジ眉毛、帰るならとっとと帰りヤガレ!」
「はいはい。それじゃあ、また」
「おい」
「うん?」
片手をあげて部屋を出て行こうとするキッドを蛭魔が呼び止めた。
「例の件は了解した。事業計画書とおおまかな見積り用意しとけ、細かい事は弁護士と話せ」
「了解。助かるよ。じゃ」
キッドが出て行き、部屋は二人きりとなった。
「いつまで人に乗ってんデスかねえ?アネザキサン、いい加減重いんデスが?
「えっ?あ、あぁっ!ごめんなさい!」
まもりは這いつくばって慌てて蛭魔の上からどけた。
「ったく。おら」
立ち上がった蛭魔が手を差しのべてくれたので、まもりもおずおずと蛭魔の手を借りてなんとか立ち上がった。
「あっち行くぞ」
「えっ?どこ?」
「隣。俺が借りてんのはあっちなんだよ。いつまでもこっちにいるわけにはいかねんだよ」
「あ、そっか」
まだ足元の覚束ないまもりは蛭魔の手を借りて隣の部屋へと移動した。
続く
だから?って所でまた終わる・・・。
おもいのほかダラダラと続いちゃって・・・。
次回くらいで追われると良いな~~~。

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