CLUB 9 (5)
「二階に行ってみたくない?二階は常連だけが行けるVIPルームになっているんだよ。俺、常連だから顔きくんだ」
ショウが少し得意げな表情で聞いて来た。
蛭魔がいる場所がどんなところなのか興味はあるが警戒心が働いて、まもりはあいまいに返事を濁してみるが、ショウはVIPルームについてあれこれ話しかけて来る。
ジュースを飲みながらやはり自分にはこの場所は不似合いだと思い至った。
恵里佳に断って帰ろうとジュースを飲み干し席を離れようとした瞬間、世界が回り始めた。
「大丈夫?」
ショウがよろけたまもりを慌てて支える。
まもりは礼を言おうとしたがうまく言葉に出来ない。
動悸が早くなり頭がボーっとしてくる。
最初は貧血かと思ったがどうやら違うとまもりは直感した。
脳の奥で危険信号が点滅するが身体がダルくて動いてくれない。
いともたやすくまもりはショウの腕の中に抱き込まれてしまった。
はたからみると彼氏に甘えてしなだれかかっているように見えるに違いない。
「大丈夫?酔っちゃった?二階で少しやすもうか」
周りに聞こえよがしにショウは大きめの声でまもりに話しかけてくる。
無遠慮に密着してくる身体が気持ち悪い。
なんとかショウの腕の中から逃れようと試みてみるが身体が動かずたいした抵抗も出来ない。
「大丈夫?さ、行こうか」
ガッチリと抱き込まれた体はショウの思うがままでまもりは強引に二階へと連れて行かれた。
二階はVIPルームがふた部屋在るだけらしい。
ふた部屋は並んでおり片方は使用中らしく重厚な扉についた磨りガラスの部分から薄明かりが見えた。
蛭魔はおそらくこの部屋にいる。
そしてきっと助けてくれる。
まもりはままならない身体をよじってなんとかショウの腕の中から逃げ出そうともがくがいともたやすく力強い腕に引き戻されてしまった。
「まもりちゃん。大丈夫。安心して。ほら、後少しで部屋だよ。ゆっくり横に慣れるからね」
耳元で囁かれるねちっこく熱をおびた声に嫌悪感からまもりの背筋に悪寒が走る。
ささやかな抵抗は全て封じられ、まもりは部屋の中へと引き摺りこまれた。
つづく
どないしまひょ★

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