CLUB9(3)
金曜日PM18:40
約束通りまもりは裏原駅西口の駅前広場で美咲を待っていた。
約束の時間は7時なのでまだ間がある。
まもりはどこを見るともなくぼんやりと周りの景色を眺めていた。
もしかしたら店に向かう蛭魔が通るかも?なんて考えてしまうが、美咲の情報によると大抵蛭魔が店に現れるのは8時過ぎとの事だったのでそれはきっとないのだろう。
時間を確認しようとバッグから携帯を取り出そうとしたとたんに携帯が鳴り出したのでまもりは慌てて携帯を手に取った。
相手は美咲だった。
『ゴメン!姉崎さん!行けなくなった!』
「えっ?」
『誘っておきながら本当にゴメン!!出かけようとしたら田舎のひい祖母さんが死んだって電話かかってきて今バタバタしてて…今日、行けそうにないんだ。なんせひい祖母さん家ってすっごい田舎で交通の便が少なくてさ、これから夜行バス飛び乗って行かなきゃならなくて…本当ゴメンね!』
「それは仕方ないわ。私は構わないから気にしないで」
『姉崎さんの事は友達に頼んでおいたから』
「えっ?」
『学校は違うけど私の友人で店の常連だから一緒に行けば大丈夫だから」
「そんな…悪いわ」
『大丈夫大丈夫。気さくな子だから気にしないで』
「でも…」
『ロングで茶髪のカラコン入れた子で名前は恵里佳っての。恵里佳にも姉崎さんのこと伝えてるからきっと向こうから声かけてくると思う。だからそこで待ってて。それじゃあゴメンね!』
電話は一方的に切られてしまった。
こうなったら行くにしろ断るにしろその恵里佳と言う子が来るまで待つしかなくなってしまった。
次々来るナンパをどにかこうにか断りながら待つこと30分、待ち合わせ時間を20分過ぎた所でまったく悪びれた様子も見せず恵里佳はやって来た。
「姉崎さん?うわ!美咲が言ってた通りの美少女ー!私、北村恵里佳でーす!よろしくね。じゃ、遅くなっちゃったし行こうか。こっちこっちー」
唖然とするまもりの様子に気付く事もなく恵里佳はさっさと歩きす。
「いや~ん、まもりちゃん美人さんだから今日はナンパの嵐かもぉ~vモデルとか芸能人とか結構いるし、男子のレベル高いから狙い目だよ~。まもりちゃんとなら逆ナンもアリかもぉ~。まもりちゃんはどんなタイプが好み?」
「えっ…私?私はクラブとか初めてで…よくわからなくて」
「あ、そっか!まもりちゃんは真面目な学級委員だって美咲が言ってた。変なこと教えるなよーって。変な事って何よね?美咲のやつ私の事なんだと思ってんのよって話しよね~?失礼しちゃうったら」
表情をくるくるかえる恵里佳は屈託なくて可愛いい。
たあいもない会話をしながら歩くこと数分。
大通りから少し入った所にその店はあった。
店内は想像していたよりも広く、ごった返す程ではないが大勢の客がいた。
「カウンター…は いっぱいか~。まもりちゃん、テーブルでも良い?」
恵里佳は慣れた様子でさっさと空いているテーブルについた。テーブルと言っても椅子があるわけではなく、初めてのまもりはどぎまぎしてつい周りをキョロキョロと見回してしまう。
「まもりちゃん、ほら見て。カウンターの一番左のバーテン。メンズのファッション誌のモデルなんだよ。まだ駆け出しだけどさ。彼目当てで通う子も多いんだよ」
言われた方を見ると確かにスタイルの良いイケメンがいた。すずなりな女の子達ににこやかに笑顔を振り撒きながら注文をこなしている。
訳もわからずまもりは感心してしまう。
「今日のDJは私のイチオシなんだ。凄く格好良いから!楽しみ~♪8時からだから後少しだね」
ウキウキと恵里佳は店についての情報を色々話してくれるがまもりの関心は蛭魔がこの店を訪れるか否か、訪れるならそれはいつなのかだけだった。
つづく
短くて申し訳ない。
たいした話じゃないのにタラタラと続きます~~。
続きはなるべく早くアップするゾ!
…別にお呼びでないか★

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