「席が空いてて良かったねー」
生徒達でごった返す食堂にまもりと咲蘭とアコの三人はいた。
今日は咲蘭がお弁当が無いため食堂を利用すると言うので二人がそれに付き合ったのだ。
「明日、ついにプール開きだね!楽しみ~!」
席に着くなりアコが嬉々として話しだした。
そんなアコに咲蘭は少々呆れた視線を向けた。
「アコはプール好きだよね~。高校生になってそんなにプールの授業喜ぶ子、普通いないよ?」
「だってプール気持ち良いじゃない?運動場で陸上の記録測定するよりよっぽど良いじゃない!」
「それはそうだけど…」
「それにこの間買った可愛い水着を早く着てみたいんだもん!」
「あぁ、あのピンクの水玉のやつ?」
「そう!今年はセパレートだよセパレート!へそだしだよ!」
「アコってば今までスクール水着に毛がはえたようなのしか着てなかったもんね」
「失礼な!もうあれは卒業よ!今年は少し大人になった私を演出よ!」
「あはは、ワケわかんない。大人って言いたかったらビキニ着なよ。そう言えばまもは今年の水着はどんなの?」
「うーん、どうしようか迷ったけどピンと来るのがなくて…去年のを着ようと思ってる。咲蘭は?」
「ん?私も去年と一緒の。ワンピタイプのやつ」
「天気予報じゃ明日の降水確率20%だからきっと大丈夫だよね!」
「アコ、明日、絶対プール入りたいなら帰ったら忘れずにてるてる坊主作っときなよ」
「そんなもの私が作らなくても大丈夫よ」
「どうして?」
「だってクラスの男子全員絶対に雨降るなー!って祈ってると思うもの」
その瞬間、まもり達の会話に聞き耳を立てていた周りの男子達が一斉にぴくりとなった。
「どうして?」
キョトンとした顔をして尋ねるまもりに咲蘭がニヤニヤと笑みを浮かべた。
「まも~、わかりきった事じゃない」
「え?」
「クラスの男子全員まもの水着姿見たがってるからだよ!」
「はぁ…」
自分がいかに男子の注目を集めているか疎いまもりは鈍い反応しか見せないので咲蘭たちにはいまいちからかいがいがない。
「それに比べ水着姿見るの楽しみな男子っていないよね」
さして興味がなさそうな口調で咲蘭が呟いた言葉にアコが予想外に食い付いた。
「わかる~!筋肉ムキムキは嫌だけど、単に痩せてるだけってのもたるんでるのも嫌だよね。理想は細マッチョって言うか、鍛えた筋肉が綺麗についてるのが良いよね」
「うん。ガリガリとかメタボとかアリエナイあり得ない…あ、そういえば、私、水着姿見てみたい男子一人いたわ」
「えっ?誰だれ?」
サラダをモシャモシャ食べながら咲蘭はにんまりと人の悪い笑顔を浮かべると「蛭魔妖一」と言った。
つづく

PR