月
「あ、蛭魔君見て!」
「あん?」
朝練が終わり、片付けをしていた蛭魔はまもりの声に一旦手をとめて顔を上げた。
まもりの白く細い指がさした先には青空に浮かぶ月があった。
「お月様。明るいのに月が見えるのって不思議よね。見えると良い事がありそうだよね」
「…別に、朝でも月が見えるのは太陽と月の位置と月齢によってだろ。不思議なことなんざひとつもねえ」
「それを言ったらもともこもないじゃない」
「当たり前の事を有り難がるお手軽さが信じられねえ」
「お手軽だろうと、当たり前の事だろうと、誰かと一緒に見るから特別に感じることってあるでしょ?私にとっては蛭魔君と一緒に見る事が何でも特別なの。蛭魔君はそう言う事…ない?」
少し悲し気な瞳で小首をかしげて聞かれたら、さしもの蛭魔も答えは同意するしかないわけで……。
「…糞。夜の月を楽しみにしときヤガレ」
「え?えっ?えー?!何ソレ!?闇討ちにあいそうで怖いんですけど!?」
慌てるまもりに頓着することなく蛭魔はケケケと高笑いしながらさっさと部室へ消えて行った。
「もー!なんなのよ、まったく!」
ふんと鼻でから息を吐き肩の力を抜いたまもりは再び月を見た。
空に浮かんだ月はいつの間にか今にも消えてしまいそうなほど微かに見える程度になっていた。
「夜の月…」
夜の月を見た時、何が起こるのか……
その時を想像したまもりは顔を赤くして月から視線をそらした。
終わり
お粗末様★
何が起こるでしょう…やっぱナニか…。

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