Syncopation Love 3
あの時、二人はいつも通り部活終了後、データ整理等してから帰路についていた。
校門に向かう途中、まもりは教室に忘れ物をした事に気付いた。
辺りはすっかり暗くなり、蔦が生い茂った校舎はあまりに不気味で、まもりは教室について来てくれるよう蛭魔に頼んだ。
しぶしぶながらついて来てくれた蛭魔だったが、いつもの如く「ガキだ」とまもりをからかいだした。
蛭魔のからかいなどいつもの事だが、何故かこの時は無性に腹が立った。
即座に反論し、蛭魔と言い合いに発展した。
暫し舌戦を繰り広げた後、突然、蛭魔がキスでまもりの口をふさいだ。
キスは初めてと言う訳ではないが、言い合っている最中のキスなど単に相手を黙らせる為の行為としか思えず、そう思い至った瞬間、まもりの怒りは頂点に達した。
「何するのよ!最低!!」の言葉と共に蛭魔の頬に見事な平手打ちをお見舞いして、まもりは走り去った。
あの場面だけ見られたのなら、蛭魔が無理矢理まもりにキスしたととられても仕方がない。
が、実際は続きがあった。
あの後、校門までまもりは走って逃げた。
しかし、蛭魔は追って来なかった。
追って来られても困るが、追って来られないのは悲しい。
呆れられた?
どうでも良いと思われた?
追う価値も無い?
もう終わりかも……。
そんなマイナスな事ばかり考えながら駅までの道のりをとぼとぼ歩いた。
涙でぐしゃぐしゃの顔はすっかり暮れた夜道と、うつむいた顔にかかった髪のおかげで誰にも気付かれる事はなかった。も
うすぐ駅だ。
もう泣くの止めなきゃ。
目が腫れぼったくなってる気がする。
とりあえず駅のトイレで顔を洗って……。
後少しで駅の改札口と言う所で突然、まもりは腕を掴まれた。
振り返ると、腕を掴んでいたのは蛭魔で、その蛭魔の顔を見たとたん、まもりの目には再び涙が溢れて来た。
嬉しいんだか、悲しいんだか、怒っているんだか、訳もわからず涙が溢れる。
「ひでー顔」
思い切りしかめられた顔に「誰のせいよ!?」と反論したいが、口を結んで嗚咽を堪えているまもりは「う゛ぅっ…」とくぐもった声を出すしか出来なかった。
するとまもりはおでこを何かでポコっとはたかれた。
軽くはたかれただけなので痛くはないが、泣いている彼女にこの仕打ち!?と、怒りを再燃させながら自分のおでこに当たっているものを蛭魔からひったくった。
ひったくった物を見れば、それは自分が教室に忘れた数学のノートで、取りに行く途中に喧嘩したとは言え、すっかり忘れて帰ろうとしていた自分に言葉も出ない。
あの後、蛭魔は教室にまもりの忘れ物を取りに行き、そして追いかけて来たのだ。
たいして息も上がっていない所はさすが鍛え方が違うと云う所か。
どこまでも冷静な蛭魔がなんだかしゃくで、まもりは素直にお礼の言葉が出せない。
また涙が溢れそうになり、まもりはノートをぎゅっと胸で握りしめた。
「行くゾ」
何処へ?と、思ったが、手を引いて歩きだした蛭魔にまもりは黙って従った。
続く
ええ。
本当に この話は何処へ行くのでしょうね?
どうなったら良いかしら・・・・。

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