Syncopation Love 1
「はぁ…」
高校へ向かう道を歩きながら昨日の出来事を思い出し、まもりはもう何度目かわからないため息をついた。
私ってば……
あんな事になるなんて…
まさか私が…
あ~~恥ずかしい!
なんであんな事に…でも…昨日の蛭魔君ってなんだか…
今日からテスト週間突入で部活はない。
まもりにしては珍しくいつもよりかなり遅い登校時間の為、まもりの周りを歩く生徒はまばらだ。
なのでまもりの百面相を目撃する者は居なかった。
どっぷり自分の世界に浸かったまま校門まで到着したまもりを現実世界に引き戻したのは友人達の興奮しきった叫び声だった。
「まも まも まも!!」
「えっ?えぇ?!どうしたの?!」
いきなり飛びかかるように周りを取り囲んだ友人達にまもりは思わず身構えた。
「まも!正直に答えて!」
「あの話しは本当なの?!」
「恥ずかしがる事ないからね!まもは被害者なんだから!!」
「はぁ?一体何の事?」
友人達のただならぬ剣幕に引きながらもまもりは尋ねてみた。
「私達にはとぼけなくて良いのよ」
「隠さないで!友達じゃない」
「そうよ!いくら悪魔って言ったって酷い!酷過ぎる!」
「許せる事と許せない事があるんだから!」
「泣き寝入りなんて駄目だからね!」
「断固戦うべきよ!」
「そうよ!戦わなきゃ駄目よ!」
「私達も一緒に戦うから!」
ぐるりと自分を取り囲み、息巻く友人達を訳がわからずもまもりはなだめにかかった。
「みんな、ちょっと…ちょっと落ち着いて!ね?私、何の事か分からないんだけど説明してくれる?」
「何を言ってるんですか姉崎さん!」
「そうですよ!あの悪魔ですよ!」
「悪魔?蛭魔君の事?」
自分を取り囲んだ友人達の周りを、これまた息巻いた男子達がぐるりと大きく取り囲んでおり、その中の数人が叫びにも似た声で訴える。
「あの悪魔!絶対許せねえ!」
「俺達の姉崎さんに!!」
「クッソー!」
この騒動の原因はどうやら蛭魔にあるとは分かったが、蛭魔の何をみんなこんなに怒っているのかわからない。
原因究明の為、まもりが口を開こうとした時、その場を氷りつかせる地獄よりの声がした。
「悪魔がどうしたって?」
「あ、蛭魔君」
「朝っぱらからこの騒ぎは何ごとだ?」
まもりのまわりに出来ていた何重もの人垣が、悪魔の一言でモーゼの十戒のように一気に割れた。
蛭魔が一歩踏み出すごとに人垣もジリジリと後退して行く。
「で?悪魔がどうしたってんだ?」
ついさっきまでの威勢は何処へやら。
蛇に睨まれた蛙の如くみんな冷や汗をたらしながら黙り込むばかりで誰も返事しない。
「おい。糞マネ。なんだってんだ?」
「私も訳がわからないの」
その時、校内放送が流れた。
『3年3組 蛭魔妖一君、3組3組 姉崎まもりさん、至急、職員室に来て下さい』
「えっ?呼び出し?蛭魔君、何やったの!?」
「……心当たりはねえなぁ」
「本当に?」
疑いの視線を向けてくるまもりに、蛭魔はうんざりした顔で答えた。
「今更だろ」
確かに。
今更、蛭魔の悪事について呼び出しが有るとは思えない。
自分も一緒に呼ばれていると言う事はアメフト部についてか?
自分達は三年生で、すでに引退した身なのだからそれも今更な気がする。
何故、自分と蛭魔が連名で呼ばれたのか皆目見当がつかない。
「蛭魔君。とにかく行ってみましょう」
「てめえが何かやらかしたんじゃねえのか?」
「そんなわけないでしょ!さ、早く!」
放っておいたら間違いなく職員室には行かないであろう蛭魔の腕を取り、まもりは職員室へと向かう。
まもりが蛭魔の腕を掴んだ瞬間、二人を取り囲んだ外野がざわついた事にも気付かずに――――――。
つづく
おかしいな~?
小話のはずだったんですけどね?
短期集中って事で、なるべく早く続きUPしたいっす!!

PR