星に願いを
「お疲れ様でしたー」
「お先に~」
「気を付けて帰ってね。さようなら。あ、みんな、明日、忘れずにお願い事を書いて持って来てねー!」
蛭魔とまもり以外のメンバーは全員帰路につき、部室に残るのは二人だけとなった。
「はい。蛭魔君もどうぞ」
パソコンを操作している蛭魔に、まもりが何やら差し出した。
反射的に受け取った蛭魔は渡された物を見て疑問を口にした。
「なんだこりゃ?」
「見てわからない?短冊よ」
「あん?」
「明日は七夕でしょ。だから」
「幼稚園でもあるまいに、七夕に短冊なんて有り得ねえだろうが」
「だって、明日、栗田君が家から笹を持って来てくれるって言うんだもん。せっかくだからみんなで願い事書こうと思って」
「アホらし」
「栗田君の誕生日会兼ねて七夕するんだから、蛭魔君も文句言わずに書いて下さい」
蛭魔が机の上に放り投げた短冊を、まもりはズイッと再び蛭魔に差し出した。
「面倒クセー」
「そう言わずに、ハイ」
無理やり渡された蛭魔は心底嫌そうな顔をした。
「こんなモンで願いを叶えてもらおうなんざ図々し過ぎねえか?」
「もしかしたら叶うかもしれないじゃない?“信じる者は救われる”よ」
「そりゃ、信じる奴しか救わなねえって事だろうが。その上、神様って奴は信じる奴みんな救う程ヒマじゃねんだよ」
「もー、ひねくれたこと言わないの!黙って書く!鰯の頭も信心からよ」
「神様がついには鰯か。そりゃあご利益が有りそうなこって」
「短冊一枚書くだけで何でそんなに口が減らないのよ」
馬鹿にしきった蛭魔にまもりは呆れてため息をついた。
「無駄な事はしたくないだけデスヨ」
「そんなこと言ってる間にささっと書けるじゃない。大体、無駄かどうかなんてわからないじゃない?可能性は0じゃないんだから」
「ふん」
「そんな大袈裟に考えなくて良いのよ?お遊びなんだから」
「そのお遊びをしつこく強要してんのは何処のどいつだ?」
「良いから!気軽にささやかな可愛いお願いを書けば良いのよ」
「ささやかな可愛いお願いだぁ?」
「……蛭魔君には気持ち悪いくらい似合わない言葉だったわね…」
なんとも言えない顔をしたまもりに蛭魔は些か気分を害した。
「……書かねぇ」
「叶います!叶います!叶うから何でもとりあえず書いてみて」
「ほぉ?叶うんだな?」
何を思い付いたのか突然、ニヤニヤしだした蛭魔にまもりは嫌な予感を覚えた。
「えっ?…いや、ほら、あくまでお遊びだから…」
「いやぁ~楽しみだなぁ」
あれだけごねていたのが嘘のようにサラサラと短冊に願い事を書き始めた蛭魔にまもりの嫌な予感はますます強くなる。
「ねぇ…なんて書いたの?」
「ささやかな可愛いことデスヨ」
「ちょっと見せて」
頭の上にかがげてピラピラと振られている短冊を引ったくるように蛭魔から取って、まもりは短冊に書かれている文字を読んだ。
その姿をみながらなおも蛭魔はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。
「叶いますかねェ?」
「……なっ、何これ!?」
「“ささやかな”可愛いお願いデスヨ?」
「だからって…」
「いやぁ、叶うかなぁ?楽しみだなぁ」
「………」
さて、蛭は短冊になんと書いたのか?
蛭魔の願いをお星様は叶えてくれるのか?
まもりさんの運命や如何に!?
終わり
さて、問題です!
蛭魔は短冊になんと書いたでしょうか?

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