Syncopation Love last
蛭魔の熱い息遣い、情欲を孕んだ瞳、優いけれど力強い手、様々な昨夜の記憶が鮮やかに蘇る。
昨夜のまもりは初めての体験にただただ翻弄されるだけだった。
昨夜の事を思い出した事で、まもりは一気に体温が上がるのを感じた。
わ、私ったら~~!恥ずかしい~…。
いやいや、今は思い出して照れてる場合じゃないわ。
まもりはキッと気持ちを引き締めた。
蛭魔が反論しない事を良いことに、非難の声は徐々に大勢のものになって来ている。
責められている蛭魔を助けるには、自分は蛭魔と付き合っていると先生に打ち明けるのが一番だ。
だが、今、恋人宣言をしたら……そんな事はないのだが、昨夜の二人の秘密も全てバレてしまいそうな気がしてなかなか言葉が出てこない。
しかし、このままにしておくわけにもいかない。
一瞬の葛藤の後、まもりは蛭魔と付き合っていると打ち明ける決意をした。
「あの…」
意を決して口を開いたのだが、いかんせん声が小さ過ぎて誰もまもりの発言に気付いてくれない。
戸惑ったまもりはチラリと蛭魔に視線を向けるた。
すると、まもりの思いを理解したのか、蛭魔はニヤリといつもの凶悪な笑顔を浮かべた。
その笑顔に職員室は一気に水を打ったように静まりかえる。
まもりも、なんとも嫌な予感を覚え、蛭魔を止めようとしたが、それよりも早く蛭魔が口を開いた。
「同意があれば、こりゃあセクハラでも暴行でもないわなぁ?」
「何ィ?」
蛭魔の言葉に皆が身構える。
ニヤリとつい見惚れてしまうような笑みを浮かべて蛭魔は言葉を放った。
「自分の彼女とキスするのも暴行にはならないわなァ」
蛭魔の言葉に職員室が凍りつく。
なんとか古屋が声をはっしたが、衝撃のあまり呂律が回っていない。
「ひ…蛭魔君……。君、まさか……」
「3年3組、出席番号2番、風紀委員でアメフト部マネージャーの姉崎まもりは蛭魔妖一と付き合ってるんデスヨ」
蛭魔の言葉に卒倒しかけた古屋を慌てて体育教師が支えた。職
員室はますますパニックに陥って行く。
こんな時なのだが、蛭魔がはっきりと自分と付き合っていると宣言してくれた事がまもりはたまらなく嬉しかった。
今まで『恥ずかしい』とか思っていた自分は確かに居たのに――――。
喧嘩の原因のキスも小森を牽制する為と、つい思わずしたくなっかからなんて言われたらやはり悪い気はしない。
と言うより面映ゆいが、愛されてると感じて胸がキュンとする。
人間って現金よね……。
少々反省中のまもりに音楽教師が尋ねてきた。
「姉崎さん。どう言う事なの……?」
皆、固唾を飲んでまもりの返事を待った。
「……えっと……あの……はい。その……蛭魔君とお付き合いしています」
その場にいた者すべてに再び衝撃が駆け抜ける。
にわかには信じがたい話しだが、まもりの口から直接語られただけに信じないわけにはいかない。
告げられた衝撃の大きさに、パニックになる者、ショックでへたりこむ者、放心する者、反応は様々だが、思いは一緒だ。
泥門の悪魔と天使が付き合うなんて有り得ない――――――!!
阿鼻叫喚、混乱する連中を人の悪い笑顔で眺めた後、蛭魔は高らかに宣言した。
「Ya――――Ha――――――!!そう言うワケだ!てめえら、よ―――く肝に命じときヤガレ!ケケケケケ―――!」
悪魔が満面の笑みを浮かべて勝ち誇る中、1時限を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「お、チャイムか。それじゃ先生、授業に遅れるんでこれで失礼シマス」
あっさりこの場に幕をおろした蛭魔に誰もが唖然とするが、蛭魔はそんな事はお構い無しで教師に背を向けた。
「ひ…蛭魔君…」
なんとか復活した古屋が蛭魔を呼び止めた。
「あ―…その、君達はまだ高校生だ。だから、その、あの…高校生として節度あるお付き合いを出来れば、その、して頂ければと……その、お願いしたく…」
あくまで低姿勢に、ようやく聞きとれるかとれないかの小声で話す古屋に蛭魔は立ち止まると肩越しに振り返り笑顔で返答した。
「安心して下サイ。僕達、まだコーコーセーですカラ。避妊はキッチリやりますヨ」
トドメの台詞に古屋をはじめとして何人もの生徒がぶっ倒れ、職員室は大パニックとなった。
そんな騒ぎの中を素知らぬ顔で蛭魔はまもりの手を引き職員室を後にした。
「蛭魔君!みんなの前でなんてこと言うのよ!?」
「あん?」
「恥ずか過ぎるじゃない!!」
「良い害虫駆除になっただろ?」
「害虫駆除って…」
「ま、これで下らねえ告白だの、後つける奴だの居なくなんだろ」
「だからって……ねぇ、蛭魔君。もしかしてそう言うの嫌だった?だから、あの時のキスも害虫駆除って…」
「さあね」
「さあねって、蛭魔君の事でしょう!」
「ま、とりあえず、これで悪い虫も良い虫もつかなくなった事は確実ダナァ。諦めて従順に働けよ」
「まったく!素直じゃないんだから!可愛くないッたら」
「可愛くてたまるか!それとも、またてめえが飛びついて来たくなるように可愛くしてやろうか?」
ニヤニヤ人の悪い笑みを浮かべる蛭魔にまもりは「うっ」っと言葉につまる。
あの時、この蛭魔を可愛いいと思い、飛びついたのは確かに自分だ。
「ご期待にそいたいのは山々デスが、僕は真面目なんで授業に遅れたくないんデスヨ。また次回のお楽しみと言う事で」
チュッと軽く触れるだけのキスをされ、まもりは瞬間、真っ赤になる。
「ごちそーさま。ケケケケケ――――」
笑いながら走り去る蛭魔にますます顔を赤くしたまもりが叫んだ。
「蛭魔君――――!!」
センセーショナルな悪魔と天使の交際宣言は光速で泥門を駆け巡った。
まだまだ騒ぎは収まりそうにない――――。
END
終わりです。
なんじゃこの話~~~!!って 期待してた物と違ったら申し訳なかです。
逃げます~~~~。

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