RINGRING
「わぁ!凄い!」
「かけてるー!」
「金環まで後、ちょっとだな」
「スゲー!」
校庭のど真ん中でアメフト部員達は色々な日食観察眼鏡をかけてひたすら太陽にみいっていた。
だんだん金環を描き始めた太陽に、みなのテンションは最高潮に上がって行く。
そんな部員達から少し離れた後方で、蛭魔とまもりは太陽と一緒に部員達の喜ぶ姿を見ていた。
「太陽がかけるなんて不思議よね」
「単に直線上に並んだだけだろうが。源平合戦の時代でもあるまいに、不思議も糞もねえだろ」
「理論上はそうだし、わかってもいるけど、実際に見るとやっぱり不思議だなって思っちゃうじゃない?」
「能率の悪い頭なこった」
「うるさいです」
しばし二人は黙って空を見上げる。
「あ、だいぶ環になって来たね」
「7時34分30秒が食の最大だ。後少しだな」
部員達は相変わらず興奮気味に盛り上がっている。
「綺麗ねぇ」
まもりも思わず感嘆の声をあげる。
「蛭魔君知ってる?金環日食に願い事をすると願いが叶うんですって」
太陽を見つめたまま、呟くようにまもりが言った。
「流れ星じゃあるまいし、人間ってのはなんにでも願掛けしなきゃ気が済まねえのか?」
「それが人情よ」
「ケッ。てめえで叶える気概を見せろってんだ」
「保険って言うか、願い事をするのって『願い事を叶えるぞ』って自分に対して宣言することだったり、発破をかける為でもあるんじゃないかしら?」
「ま、それなら有りだな。で?てめえは何か願掛けしたのか?」
「うん。また蛭魔君と一緒に見れますようにって言うのはどうかな?」
「次の日食は18年後だぞ?」
「駄目かしら?」
「36歳か……ババアだな」
「蛭魔君だって36歳のオジサンよ」
「まあ、しゃーねえか。おら」
「え?」
蛭魔にいきなり左手を取られ、まもりは思わず日食観察眼鏡を外して自分の手を見た。
薬指に輝く微かな輝きに目を見張る。
「手にも環が…」
手を空にかざして、まもりはうっとりと眺めた。
「蛭魔君。有り難うね」
感激で思わず涙ぐんだまもりに蛭魔は軽い口付けをした。
「ひ、蛭魔君!こんな所で…!」
顔を真っ赤にして、口を押さえながら小声で抗議するまもりに蛭魔はニヤニヤと笑みを浮かべる。
「どうせ糞ガキ共は日食見てんだろ」
蛭魔にそう言われて、まもりは前方の部員達に視線を向けた。
するとそこには、固まったまま、こちらをガン見している部員達がいた。
「蛭魔君!見られてるじゃない!!」
「おー。7時34分20秒!後10秒で食の最大だぞ」
「「「えっ!」」」
全員が慌てて眼鏡をかけ直して空を見上げる。
そこに現れたのは美しく金環―――――。
まもりは美しく太陽のリングを見つめながら、そっと蛭魔と手を繋いだ………。
END
1日遅れのネタ★
甘かったですかね?
とりあえず、高校3年生な蛭魔達です。
途中まで書いて辞めたネタは大学4年生でした。
そっちの方がプロポーズにはしっくりくるんだけど・・・・ね~。

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