ゴールデンタイムラバー
早目に部活を切り上げたメンバーが、意気揚々と待ち合わせの時間に待ち合わせの場所の泥門駅の改札口に行くとすでにまもりは来ていた。
浴衣を着て、髪を結い上げたまもりは匂い立つような美しさで、遠巻きにいつ声をかけようかと何人もの男達が隙を狙っていたが、当の本人は全く気付いていなかったようで、セナ達に気付くと男達が嫉妬する程の艶やかな笑顔を浮かべて手を振ってきた。
遠巻きに送られて来る男達の嫉妬の視線が痛くてセナは薄笑いを浮かべるしか出来なかったが、全く空気を読まない他の泥門メンバーは男達の視線などお構い無しでズカズカとまもりに近づいて行く。
「まもりさん!す、す、す、素敵MAXですゥ――――――!!」
鼻血を吹き出しそうな真っ赤な顔でモン太がまもりを褒め称える。
「ありがとう」
モン太の勢いに圧倒されながらもお礼を言ったまもりは、一団の中に鈴音が居ない事に気付いた。
「あら?鈴音ちゃんは?」
「鈴音も用事があるとかで、今日の部活には来てなかったんだよ。だけど、お祭り行くけどどうする?ってメールしたら、速攻で『行く!』って返事が来てね。待ち合わせ場所、ここだって言ってるから、もう来るんじゃないかなぁ?」
噂をすればなんとやら。
「セナ――!みんな――!お待たせ――!!」
いつもの元気娘が改札口から飛び出して来た。
「連絡もらってから急いで来たんだけど、遅くなってゴメンね!」
「大丈夫だよ。僕達も今さっき来たところだし」
「そうなの?良かったァ。あァ!!」
「えぇ?!何?!どうしたの鈴音?」
いきなりの鈴音の大声にセナはビクッと瞬時に縮こまったが、そんなセナには全く気付くことなく、鈴音はまもりに駆け寄った。
「ヤ――!まも姐、綺麗――!素敵!!色っぽい――!なんだか大人な雰囲気―――!!」
「あ、ありがとう鈴音ちゃん。みんなが見てるから落ち着いて、ね?」
まもりの周りをキャイキャイと跳び跳ねて回る鈴音の姿を、何ごとかと行き交う通行人が見ているのに気付いたまもりは、いたたまれない気持ちになって慌て鈴音を止めた。
「私もまも姐みたいに浴衣着てくれば良かったなぁ…。前もって知ってたら着られたけど、今日は時間がなかったから駄目だったんだよね。残念~!」
しゅんとしてしまった鈴音に、今度はセナが慌てて声をかける。
「鈴音、もうお祭り始まってるよ!かき氷おごってあげるから早く行こうよ、ね?」
「かき氷!?行くー!苺ミルクが良いー!」
かき氷で一気に復活した鈴音はげんきんなもので、先頭に立ち「早く!早く!!」とメンバーを急かした。
その掛け声にみんなの足がぞろぞろと動き始めた。
鈴音の機嫌が直ったので、セナはほっと胸を撫でおろした。
と、同時に微かな疑問もわいて来た。
まもりに電話をしてからの時間を考えると、祭りの誘いを受け、支度をして、待ち合わせ場所まで来る時を計算すると、どうやっても時間が足りないように思う。
まもりに連絡した後、すぐに鈴音に連絡した。
だから大した時間の差はない。
なのにまもりは準備万端で・・・・。
すでに支度が終わっていて家を出るだけの状態でで待機していたと言うのならわかるのだが…。
支度してた?
まもりが一人でわざわざ浴衣を着て祭りに行くとは考えられない。
僕らが行くと思って?
それはないように思う。
誰かと出かける予定だった?
それを僕らが誘ったから断って来た?
先約を反古にするようなまもりではない。
じゃあ、どうしてだろう?
「セナ!かき氷!かき氷あったよ!!」
もう少しで答えにたどり着きそうだったが、鈴音の声にセナはそれ以上考えるのを放棄した。
続く
たいしたお話じゃないのにちまちまと申し訳ない。
もうちょっとお付き合い下さいねv

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