SweetsSweet
「ねぇねぇ、まも。部活に休みってないの?」
「えっ?」
「咲蘭と話してたんだけどね。良い店色々見付けたからみんなで行こうって」
「まもはいつだったら都合良い?」
「まもの都合に合わせるから一緒に行こうよぉ~」
「うーん、当分休みは無いかなァ…」
行きたいのは山々だが、部活の日程を考えると結論は『無理』の二文字しかない。
「まもが絶対気に入るお店だから!」
「部活に燃える青春も良いけど、少しは他の楽しみがあっても良いんじゃない?」
「そうそう!ムサイ男連中とばっかりじゃなく、たまには乙女モード全開で楽しまなきゃ!ね?」
そう言ってアコがまもりの机に置いた雑誌は都内の有名店から最近オープンしたお店まで、とにかくオススメのカフェやスイーツ専門店を紹介したもので、チェックを入れまくったらしく、色とりどりの付箋がいくつも貼られていた。
アコに見せられるまでもなく、実はまもりも同じ雑誌を持っていたりする。
「行こうよ~、ね?」
「ここ、ここ!裏原宿の『マイマイ』ってお店!3ヶ月位前にオープンしたお店なんだけど、このお店のスペシャルパフェがね」
「あ、そこ、オープンしてすぐ位に行ったの…。確かにパフェは見た目も可愛いし美味しいし言う事なしだったな」
「あ、行った事あるんだ。じゃあ、同じ裏原宿の『ノエル』は?ここはチョコレートの専門店で、お店でのみ食べられるチョコレートアイスクリームのセットが」
「行った行った!本当にチョコレートが濃厚で、口の中が幸せ~ってなったわ」
「あ、ここも行った事あるんだ…。じゃあ、泥門駅前商店街に最近オープンした『モーツァルト』ってお店は?ケーキの種類が半端なくて、タルトスタンドで出てくるミニケーキのアフタヌーンティーセットが大評判!みんなで行けば全種類網羅できるかもって」
「ごめん。ここも二回行ったの」
「え、ここも行ってるの?じゃあじゃあ…ここは? 雨太市の『ランパル』!」
「あ、そこは今度、偵察の帰りに行ってみようと思ってて…」
「偵察?」
「うん。あ、このお店はここで紹介されてるケーキより、チーズケーキがオススメで、こっちのお店は季節のフルーツタルトが絶品なの!あと、こことここのお店はとっても雰囲気が良くて紅茶の種類も豊富で凄くくつろげるわよ。こっちのカフェのマスターはとっても素敵でね、色んな事に精通してて話術も巧みでいくらでも話していたいくらいで、コーヒー、紅茶以外に中国茶も扱ってて色々教えてもらえて楽しかったわ。あ、そう!ここ、このページのこのお店!本当に凄いから!ここの果物のジェラートってね、外身は本物で、中身はそれのジェラートなの!ほとんど混ぜ物なしで大人の味って感じなの!」
だんだん気分が乗ってきたまもりの話しは止まらない。
って言うか、ハードな練習をこなしながらいつの間にそんなにお店を回ったのんだ!?と、聞いてる咲蘭とアコはツッコミたくなった。
「ねえ、まも。そのお店、全部一人で回ったんじゃない…よね?」
「え?一人で行くわけないじゃない。偵察の帰りとか、買い出しのついでとかで行っただけなのよ。蛭魔君と」
爆弾投下。
「ひ、蛭魔と?!」
「あ、ちがうのよ?蛭魔君は甘い物は苦手だから食べないの。食べるのは私だけなのよ」
まもりはアコと咲蘭が、蛭魔って甘い物を食べるの?!と驚いていると勘違いして慌てて弁明したが、アコ達が驚いた理由は勿論チガウ。
蛭魔とまもりが二人で色々なお店に行っていると言う事に驚いたのだ。
それって……偵察や買い出しにかこつけたデートじゃないの?
その疑問をぶつけると、まもりは頬をほんのり染めて
「全然そんなんじゃないのよ?だってあの人ってば甘臭いって文句ばっかり言ってるんだから」
『あの人』出ましたー!
何?!
その面映ゆい笑顔!
「あ、ここも行ってみたいなァ…」
雑誌を見ながら小さく呟くまもりの顔は本当に綺麗で、青春してますって感じで……。
アコと咲蘭は顔を見合わせた後、一言「「ご馳走様でした!」」と退散した のだった★
終わり
実は十分、乙女で青春してた姉崎さんだったのでしたv

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