また逢いましょう 2
わけがわからず暫くの間、呆然としていたまもりだったが、いつまでもこのままではいけないと行動を開始した。
同じなはずなのにどこか雰囲気の違う校内を歩いてわかったことがある。
信じがたい事だが、今、まもりがいるのは8年も前の時代だと言う事だ。
何が原因でこんな事になってしまったのかさっぱりわからない。
誰かに聞きたいが知り合いもいなければ、この状態を説明できるだけの情報もない。
ありのままを話したところで「頭のおかしな人」と思われるのがおちだろう。
まもりは急激に心細さに襲われた。
すれ違う生徒すれ違う生徒みんながまもりを見たとたん、初めて見たような奇異な視線を向けてくるような気がする。
自分が異質な存在だと言う事がバレたような気持ちにいたたまれず足早に泥門を後にした。
ただ単に泥門の制服を着た見たこともない美しい生徒に、もしかしたらハーフの留学生かも?と、見とれていただけなのだが、そんな視線も今のまもりには好意的に受けとる事は出来なかった……。
行く宛もなくとぼとぼと歩く。
8年前って事は…この時代の私は小学四年生ね。
どこか行ける場所はないかとあれこれ考えてみるものの、高校生の自分を知るものがいないここでは、家に帰ったところで変質者と思われて警察に通報されるかもしれない。
どこにも行けない……。
歩き疲れたまもりはふらふらと公園のベンチに座った。
これからどうすれば良いのか、どこへ行けば良いのか、全くわからない。
どうしてこんな事になったんだろうと、答えの出る事のない自問自答が頭の中でぐるぐると渦巻く。
「…蛭魔君…」
どうしたら…どうすれば良いのかわからない。
助けて欲しい。
「うぅっ……」
どうしようもない不安から涙が溢れてきた。
「蛭魔君の馬鹿―――!!助けてよ!!悪魔でしょ!?」
「なんだよ」
「!?」
思いがけず返ってきた返事にまもりは声がした方を反射的に振り向いた。
そこに立っていたのはまもりの望んだ蛭魔ではなく、ランドセルを背負った小学生の男の子だった。
「おい、初対面の人間つかまえて馬鹿だとか悪魔だとか失礼だろうが。俺はお前にそんなこと言われるいわれはねえからな」
「えっ?えっと…ごめんなさい。ボクに言ったんじゃないのよ?蛭魔君ってお姉さんの知り合いに…」
「だから俺が蛭魔だ」
「あ、同じ名字だったんだ。ごめんね。蛭魔は蛭魔でも蛭魔妖一君って言う…」
「だから俺が蛭魔妖一だ。ほら」
そう言ってまもりの目の前に差し出したリコーダーには確かに『蛭魔妖一』とマジックでしっかり記名されていた。
まじまじと目の前に立つ男の子を見つめる。
ボサボサの黒髪から少し尖った耳が覗いている。
目は少しつり目だが年齢のせいかまだくるりと大きい。
牙のような犬歯は……大きく膨らませたチューインガムに隠れて口元は見えなかったが、この目付き、この面構え、この態度にこの雰囲気、どれをとっても蛭魔妖一その人に違いないとまもりは確信した。
「えー!蛭魔君!?蛭魔君なの!?」
金髪でもなければピアスもしていない、ランドセルを背負い慎重はまもりの胸ほどの蛭魔。
「きゃー!可愛いぃ!蛭魔君可愛いー!」
「うわっ!?何すんだ!おいっ!む…胸が…うっ」
可愛さのあまりつい思い切り抱き締めたまもりは胸に顔を押し付けられてわたわたと暴れる蛭魔に我に返った。
「あ、ゴメンね蛭魔君」
慌てて解放した蛭魔の顔は真っ赤で、いつもの蛭魔ではお目にかかれないうぶな反応にまもりの胸はキュンキュンしっぱなしだった。
「おまえ痴女か!?」
「痴…どこでそんな言葉覚えるのよ…やっぱり蛭魔君は小さい時も可愛くない…」
ガックリするまもりに蛭魔はふんと鼻を鳴らすとさっさと踵を返した。
「あ、蛭魔君どこ行くの?」
「帰るんだよ。変な人には近づくなって学校で言われてんだよ」
「ははは…変な人って」
将来の彼女に向かって失礼な…と思わなくもないが、確かに見ず知らずの女に抱きつかれたら変な女と思われても仕方ないと納得もする。
「じゃあね。気をつけて帰ってね」
立ち去る蛭魔に手をふって見送る。
蛭魔は一度振り向いたがさっさと公園から出て行って見えなくなった。
つづく
次は・・・早く書かなきゃね・・・。
でも、それよりもチョコ作りが先だー!!
手作りでも 材料費だラッピングだとお金かかるよね・・・。

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