シバラクアオ
「お前らの噂で持ちきりだぞ」
「あん?」
武蔵の言葉に蛭魔はパソコンから視線を離した。
「姉崎の進路」
「ああ」
「ついに告ったのか?」
「誰が?」
「お前が」
「んっな訳ねーだろ」
「じゃあ姉崎か?」
「同じ大学に行く奴には告白しなきゃなんねー決まりでもあんのか?」
「なんだ、まだか」
「まだとはなんだ」
「さすがのお前も恋愛ごとは勝手が違うか」
「なにほざいてやがる」
「思いついたら即実行のお前らしくないな」
「なんの事だ?」
「お前の進学先はあの最京大だ」
「それが?」
「日本中からトップレベルの連中がわんさか集まる」
「まあな」
「こう言っちゃなんだが、お前の身体能力は並みの上だ」
「ふん」
「その中で対抗していくには姉崎の存在は身体的にも精神的にも必須だろう?」
「………」
「そんな存在をみすみす逃すお前じゃないだろ?」
「……ふん。確かにな。だがそんなもん理論上の話しであって人から強制されてやったところでそんな巧くいくもんじゃねーだろ」
「だからこその告白だろうが。俺にはお前しかいない。一緒にライスボウルを目指そう。俺について来てくれ!ってな」
「黙れ糞ジジイ。どの面下げてんっな事ほざいてやがる」
「俺じゃさまにならんが、お前なら様になるんじゃないか?相手は姉崎だしな」
「ケッ。んっなもん様になってたまるか」
「今回は姉崎が気をきかせてくれたんだろうが、いつまでも甘えているわけにはいかんぞ?女ってのはわかっていても言葉を欲しがるもんだ」
「てめえ、やっぱ年齢詐称してんじゃねえか?離婚歴でもあんじゃね?」
「茶化すな。真面目な話だ」
「余計なお世話だ。人の事なんざほっとけ」
ガラッ
噂をするとなんとやら。
部室のドアが開くとまもりが入って来た。
「蛭魔君、この書類なんだけど……どうかした?顔に何かついてる?」
無言で自分の顔を見る二人に、まもりは自分の顔に何かついてるのかと思ってしまった。
「いや姉崎、何もついていないから気にするな」
すかさずムサシがフォローした。
「おい、糞マネ」
「なに?」
「糞マネは人の秘密を暴き立てるの好きか?」
「はぁ?何それ」
「人の隠し事を暴露したいと思うか?」
「蛭魔君じゃあるまいし、そんなこと好きじゃありません!」
「だとよ」
「………」
それみろと言わんばかりの顔で勝ち誇る蛭魔に、そう言う事じゃないだろうと思いながらもムサシは黙るしかなかった。
「一体なんの事?」
「何でもねーよ」
「まさか、また何か企んでるんじゃないでしょうね?!」
「別に何でもねーって言ってんだろ」
「本当に?何か隠してんじゃないでしょうね?!」
「てめえ、たった今、人の隠し事暴く趣味はねえってぼざいたばっかだろうが!」
「それとこれは違います!蛭魔君の悪事は全力でとめないと!」
「人のやる事、勝手に悪事と決めんな」
「日頃の行いのせいでしょ」
いつものごとく言い合いを始めた二人に、ムサシはため息をつきつつも蛭魔の想いもわかるような気がした。
男女の関係になるのは簡単だが、今はまだ曖昧な関係でいたい……
物事なんでも即白黒つける蛭魔にとって、こんな状態を容認することは初めてに違いない。
とぼける蛭魔と天然な姉崎。
この二人が進展するのはまだ先らしい。
ムサシは大きく背伸びした。
終わり
本当にタイトルが思いつかなくて・・・
無題ってワエにはイカンよね・・・。
相変わらずなお話でした★

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