VIEW (前篇)
「ほんと、まもと一緒にぶらつくの久しぶりだよね」
「うんうん。まもってばずっと部活部活で付き合い悪かったもんねー」
「ゴメンねぇ。私も行きたいとは思ってたんだけど部活が忙しくてなかなかね…」
三年に進級した今でも相変わらずまもりはアメフト部のマネージャーをしている。
なので友人達と気軽に放課後ぶらつくと言う事が出来ない現状が続いていたが、今日は学校側の都合でグラウンドが使えない為に部活は休みとなり、チャンスとばかり強引に誘って来た友人達に付き合ってまもりは裏原宿駅前をぶらつき、今はのんびりお茶を楽しんでいた。
「しかし、まもがいきなりアメフト部のマネージャーになった時は驚いたよね」
「スッゴく驚いた!だってよりによってアメフト部だもん。」
「いくら可愛い弟の為とは言えねぇ」
しみじみと言う咲蘭に思いきりアコが同意する。
「悪いイメージが先行してるけど、みんな一生懸命な良い子達なのよ?」
そんなふたりにまもりはアメフト部メンバーを擁護した。
「みんな良い子!みんなってアメフト部には泥門の悪魔もいるんだよ?!」
「うーん。色々難はあるけど意外と蛭魔君も真面目な良い子なのよ?」
「うげっ!蛭魔が真面目な良い子!?」
「さすがまも。さすが母さん」
「そんなこと言い切れるのはまもくらいのもんだよ?」
まもりの言葉に咲蘭とアコは大袈裟に呆れた顔をする。
そんなふたりの反応に自分でもいつの間にこんな風に思うようになったんだかとまもりは微かな苦笑を浮かべた。
「あ、ねぇ!噂をすれば!」
「うん?あっ、蛭魔?」
今、まもり達がいるのは駅前のカフェの二階だ。
全面ガラス張りの窓にそって作り付けられたカウンター席に並んで腰掛けているため、眼下に広がる駅前の大通りが一望できるようになっている。
どうやら蛭魔はカフェの隣の路地から出てきたらしい。
今は大通りを渡るため信号待ちをしているようだ。
「ねぇねぇ、蛭魔ってば隣の女と腕組んでない?」
「えぇ?まさかぁ…あ、信号変わった。歩きだした」
「うわっ!何あれ!?やっぱり腕組んでるよ!!歩きだしてもべったりくっついてるよ~」
「なに?蛭魔のクセにラブラブってやつ?気持ち悪~」
「相手の女、年上っぽいよね」
「後ろ姿しか見えないのが残念だわ」
「しかし蛭魔って彼女いたんだ。なんか恋愛とか無関係なイメージだったわ」
「うん。そんな人間的な感情あったんだって感じで驚きだよね」
「えっ…あぁ!!?」
「わぁ!!」
「入ったよ!?」
「入ったよねぇ!?」
「入った入った!!女と二人でホテル!!」
横断歩道を渡り終えた蛭魔は腕を組んだ女と共に迷わず道路を挟んで向かいにあるビジネスホテルへと入って行った。
「これってマジ脅迫ネタもんじゃない!?」
「女はそうだろうけど男は自慢になるんじゃない?年上の女とホテルなんてさぁ~」
「いや~女の顔見たかったー!」
「ほんと蛭魔の彼女がどんな顔なのか見て見たかったよね~」
「後ろ姿だけだけどいかにも仕事してます。やり手のキャリアウーマンですって感じだったよね」
「あの感じは絶対美人だね!蛭魔って面食いだと思うし」
「なんで?」
「なんとなく。そんなイメージない?」
「あー、言われてみたらそうかも?馬鹿とブスは歯牙にもかけなさそー」
「でしょでしょ!?」
「歯牙にかけたとしても遊びだね。終わったらポイ捨てっぽい」
「最低ー!本気の恋愛とかしなさそうだもんね~」
「蛭魔が本気の恋愛!似合わなすぎて笑えるんですけどぉ!マジきも~!」
思いがけない場面を目撃した咲蘭とアコは興奮のあまりテンションが上がりまくりまもりの様子に全く気付いていなかった。
「ねぇ、まもは蛭魔の彼女の事なにか知らないの?」
「…知ってる…」
「えー!まも知ってんの!」
「蛭魔の彼女ってさっきの女なの!?」
「違う…と思う」
「えっ!違うの!?」
「じゃあ今のって浮気現場!?」
「マジ蛭魔の脅迫ネタもんじゃん!?」
「蛭魔の本命彼女って泥門の子?それとも他校?」
「…泥門」
「えー!?マジ!?泥門の生徒に蛭魔と付き合うような物好きがいたの!?」
「物好きって言うか勇気ある子だよね」
「何年の子なの!?」
「…三年」
「えー!?私らと同じ学年!?信じらんない」
「何組!?」
「…3組」
「…えっ?私らのクラス!?嘘でしょう!?」
「蛭魔と付き合ってるっぽい子なんて居ないよ?」
「えー誰よ?綾瀬?桃井?市川?」
「……私…のハズ」
「は?」
「え?」
「私って…」
「………」
思いがけないまもりの告白に咲蘭とアコの脳がしばしフリーズした。
「「えっええええぇぇぇー―――――――っ??!!」」
「う、嘘でしょ?!」
「変な冗談やめてよ~」
「まもったらこんな時にそんな事いうから一瞬マジかと思っちゃったじゃん」
「…本当は今日は蛭魔君と一緒に出かける予定だったの。だけど蛭魔君が急に用事が出来たって…蛭魔君は色々忙しい人だし、急用なら仕方ないって思ったのに…」
「…マジなんだ」
「まも!まもは騙されてんだよ!蛭魔の本性見たでしょ!?」
「そうよ!急用とか嘘ついて浮気するような男なんだよ!!」
「元々ろくな男じゃないんだから!」
「極悪非道の泥門の悪魔だよ!!」
「あんな男とは別れるべきよ!!」
「そうだよ!蛭魔なんかにまもはもったいないよ!」
「絶対やめなよ!あんな男は駄目だって!」
目を吊り上げて息巻く二人に気圧されながらもまもりはボソボソと蛭魔を擁護する。
「……そんな事ないのよ?蛭魔君ってああ見えて意外と優しいのよ?あの女の人だって何かの間違いかもしれないし、もしかしたらただの人違いで蛭魔君じゃなかったかもしれないし…」
「はぁ!?」
「まも、なに言ってんの!」
「金髪をあんなツンツン立てて、バッグからマシンガン覗かせてる泥門の制服の男が蛭魔以外にいると思うの!?」
「あの女だって、あんだけべったりくっついて歩いといて何の関係もないなんてわけないでしょ!?」
「大体ホテルに入ったわけはどう説明すんのよ!?」
「蛭魔は浮気してんだよ浮気!!」
「ホテルって言ってもビジネスだし…」「ビジネスだろうがなんだろうがホテルはホテルだよ!」
「女と腕組んで!!普通あり得ないでしょ!」
「…でも…」
「でも何!?」
「何か事情があるのかも…」
「事情?どんな事情が有ろうとまもって言う彼女がいるなら他の女とホテルなんて入っちゃ駄目でしょう!!」
「そうだよ!目を覚ましなよ!蛭魔は平気で嘘ついて浮気するような最低男なんだよ!!」
「絶対別れるべきだよ!」
「そうだよ!あんな男に関わるべきじゃないよ!」
「でも…」
「でもじゃない!」
「……」
しょぼんと小さくなるまもりの姿が痛々しくて咲蘭は小さくため息をつくと妥協案を提案した。
それは蛭魔をこの場に呼び出し真相を聞くと言うものだった。
「まもりだけで蛭魔と対峙したんじゃ簡単に騙されて終わりかもしれないじゃない?だから私達も一緒にいて真偽を見極める!」
「え…でも相手は蛭魔だよ?」
悪魔との対峙に少し及び腰になるアコに咲蘭はニッコリ笑顔を返した。
「まもりいわく蛭魔は良い子らしいから大丈夫よ。さぁ、まも、蛭魔に電話して」
「えっ…でももしかしたら今、用事の最中かもしれないし…」
「それを言うなら情事の最中かもよ?痛ッ!」
「アコってば下世話な事いわないの!」
さっきまでの及び腰はどこへやら調子良く茶々を入れるアコに咲蘭はげんこつを入れて黙らせた。
続く
相変わらず タイトルが思いつきません。
ほんとうに どうやったら思いつくのか・・・。
誰か考えてくだされ。

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