一緒じゃなきゃね★
待ち合わせは8時に泥門駅前広場。
まもりは嬉し過ぎて早朝4時に目が覚めてしまった。
昨日散々迷って決めた服を本当に似合うかどうかもう一度チェックしなおして、普段はしない化粧も薄くryiして、髪型もサイドを編み込みしてポニーテールにしてみた。
ネズミーランドについての予習復習もバッチリ!
五度目のバッグの中身のチェックも行った。
全て万端に整え、意気揚々と家を出たまもりは待ち合わせの40分前にはすでに待ち合わせ場所に立っていた。
何度も携帯で確認するが、なかなか時間が進まなくて歯がゆくなる。
こちらもすでに何度目かになるコンパクトを出してもう一度、変な所はないか確認する。
ただ待つだけなのに気分が落ち着かない。
「あ!まっもりさー―――ん!」
「えっ?」
突然名前を呼ばれ、驚いて振り返ると、そこにはこちらに向かって来るモン太とセナと鈴音と夏彦がいた。
「ま、ま、まもりさん!きょ、今日も綺麗ッス!」
「ボンジュール!マドモワゼルまもり」
「まもり姉ちゃん、早かったんだね」
「さすがまも姐!私達が待ち合わせ一番乗りだと思ってたのに」
「えっ?いや、私は…」
「クリタンとムサしゃんはまだかな?三兄弟は少し遅れるかもってメールがさっき来たよ」
「小結君は栗田さんと一緒で、雪さんは塾で来られないって」
「えっ?あの…」
「あ、来た!クリタ―ン!ムサしゃーん!こっちこっち―!」
そちらに目をやるとこちらに歩いて来る栗田と武蔵、そして栗田の後ろにチラリと小結が見えた。
どう言う事!?
まもりは訳がわからず軽く混乱した。
「ネズミーランドなんて久しぶり~」
「どれから乗る!?」
「人、多いかな~」
ガイドブックを出して何から乗るかワイワイ盛り上がっているメンバーをにこやかに眺めながら、まもりの胸中は複雑だった。
みんなで行くのが嫌なワケではない。
けれど今日はデートだったはず。
デートはやはり蛭魔と二人きりで行きたかった…それが本音だった。
「でも、急になんでネズミーランドなんだろ?」
セナがふと疑問を口にした。
「5時にいきなりメールで叩き起こされて8時に泥門駅前集合!来ない奴は処刑!だもんなぁ。ビックリしたよな。」
「私、飛び起きたもん。行き先がネズミーランドってのもビックリしたよね!」
「うん。なんでいきなりネズミーランドなんだろ?まさか東京タワーの時みたいな特訓やるとか!?」
「まさかァ…いくら蛭魔さんでも…」
「絶対無いとは言えない所が怖いよね…」
デートだったはずなのに…
セナ達の会話を聞きながら複雑な気分でまもりは蛭魔に何通かメール送ってみたが、いつものように速攻で返事が返ってくることはなかった。
「あ、クロッキー達が来たよ!」
見ればダルそうな様子で三人並んでこちらに歩いて来ている。
「はぁ…」
小さくため息をついて、まもりは携帯をバッグにしまった。
「ヤツに電話か?」
いつの間にか隣に立っていた武蔵が話しかけてきた。
「メールしてみたんだけど返事なしなの…」
「……もしかしてだが……ヤツと出かける予定だったか?」
「……うん。すっぽかすくらいなら行くなんて言って欲しくなかったな…誤魔化されたみたいで全然嬉しくないよ…」
しゅんと落ち込むまもりに武蔵はどう声をかけるべきか言葉につまった。
「なあ、姉崎…」
「まも姐ー!出発するよー!早く早く!」
武蔵の声に鈴音の呼ぶ声がかぶり、まもりは武蔵の呼びかけに気づかなかったようだ。
「武蔵君、出発みたいだよ。薄情者はほっといてみんなで楽しもうね!」
健気に微笑みを浮かべるまもりに武蔵は思わず味方したくなり、鈴音の所へと駆け出したまもりを呼び止めた。
「姉崎!」
「えっ?」
呼び止められ振り向くと、なんとも言えない顔で武蔵が立っていた。
「姉崎…アイツは、はったりやホラばかりだが一度した約束を破る奴じゃない」武蔵はきっぱりいい放った。
「わかるよな?」
「…!」
武蔵の言葉にまもりは再び駆け出した。ただし、改札に向かう鈴音の元へではなく駅とは反対の方向へ。
「まも姐ー!?どこ行くのー!?」
突然、反対方向へ駆け出したまもりに鈴音は慌てて声をかけるがまもりは振り返る事なく走って行く。
「ほら、行くぞ。電車に乗り遅れるぞ」
「あの…まもり姉ちゃんは…」
「気にするな。ネズミーランドより行かなきゃならん所があるそうだ」
心配そうに尋ねるセナに武蔵は渋い笑みで答えた。
「えー!それって、もしかしてもしかしてー!?」
何かの電波をキャッチしたのか前髪がアンテナのようにピンと立ったかと思うと、目を輝かせて鈴音が武蔵の元へと飛んで来た。
その後では、これまた何かを感じとったモン太が暗くなっている。
なぜか十文字からも暗い気配を感じるのは何故か?
二人の様子に気付いたセナは慌てて先を促した。
「鈴音!早くしないと本当に電車乗り遅れちゃうよ!早く行こう!」
セナは鈴音の手をひいて駆け出した。
一刻も早くこの雰囲気から逃れたい一心からのセナの行動だったが、手を握られた鈴音は顔を赤くしてた。
鈴音の頭の中はまもりの事どころではなくなり、結果、セナの作戦は成功となった。
武蔵に背中をバンと力強く叩かれて正気に戻ったモン太と十文字もみんなの後に続いて駆け出した。
つづく
とりあえず、次で終わる予定。

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