一緒じゃなきゃね★
ふいに意識が浮上して目が覚めた。
身体中がダルくて、横になっていてもしんどい。
急激に喉の渇きを感じてサイドボードに手を伸ばし、どうにか掴んだペットボトルの中身は後一口で終わりと言う情けないものだった。
力のはいらない指でキャップをはずしなけなしの一口を飲み干せば、余計に喉の渇きを感じてしまった。
喉は乾いているが冷蔵庫までの距離を考えるとダルい身体に鞭うつ気にはなれず、ペットボトルを床に放り捨てた。
ふと、今が何時なのか気になり枕元に置いた携帯を見た。
待ち合わせ時間はとうに過ぎている。
まもりからの着信がいくつかあるのを確認して、蛭魔はもう一度眠りにつくことにした――――――。
今月のお小遣いをはたいて買った品々の入った袋をいったん床に置き、まもりはドキドキしながらそーっと鍵穴に合鍵を差し込んだ。
何度か来た事はあるが合鍵を使うのは初めてで緊張してしまう。
さいわいチェーンはされておらず、すんなり部屋に入る事ができた。
「お邪魔しまーす」
ささやくような小さな声で挨拶をして、物音をたてないよう、細心の注意を払ってまもりは廊下を進んだ。
リビングはカーテンが閉められたままで薄暗く人の気配はない。部屋の中央にドンと置かれた座り心地の良い革張りのソファーのまわりにはメモ用紙が数枚散らかっていた。
机の上に愛用のパソコンが置いてある所から、何か情報収集をしていた事が伺えた。
仕入れた情報は並外れた記憶力を誇る脳にインプットするのですぐに書きなぐったメモは要らなくなり散らかす。
今まで何度もやめるよう注意したが治らない癖の一つだ。
まもりは小さくため息をつき、とりあえずささっと拾い集めてようとしたその時、メモに書かれた文字が目に入った。
他のメモにも慌てて目を通し、まもりは心が温かくなった。
「あ、こんなことしてる場所じゃなかった」
ほのぼのしてる場合じゃなかった!
まもりは慌ててこの部屋の主がいるであろう寝室へと向かった。
そーっとドアを開けると、リビング同様に寝室は遮光カーテンのおかげで今が朝とは思えないくらい真っ暗だった。
目をこらし、ようやくベッドの上にふくらみを見つけた。
足音をころしてベッドまで近づいてみるが、ベッドの中の住人は身動ぎ一つしない。
生きてるよね?
有り得ないと思いながらも、いつもどんな耳してるの!?と驚くほど人の気配を察知するのに、ぴくりとも反応しない事に不安を感じてしまう。
顔を近づけると、ベッドの中の蛭魔は眉ねを寄せて、浅い呼吸を繰り返し、かなり苦しそうな様子が見てとれた。
そっと額に触れると思った通り熱くて、まもりは急いで冷えピタと氷枕を用意した。
体調が悪いせいか、蛭魔はめったに見ることのない夢を見ていた。
内容はあって無いような、視点も場面もころころかわる支離滅裂なものでわけがわからない。
ただ、どの場面でも自分ひとりで、困惑と孤独に満ちていた。
頭では夢だとわかっているのだが、どの場面でも自分が不利な状況に流れていき、思うように軌道修正ができない。
疲れと苛立ちがピークに達したその時、額にひんやりとしたものがあてられ、身体が一気に楽になり、意識が浮上するのを感じた。
「あ、起こしちゃった?」
冷えピタを貼っているとさすがに蛭魔が目を開けた。
「…行かなかったのか?」
水分を取っていないその声は小さくかすれていた。
「こんな病人ほっといて遊びに行けるわけないでしょ」
まもりは買い物袋の中からスポーツドリンクのペットボトルを取り出すとキャップを開けてストローをさし、寝たままの蛭魔が飲みやすい位置で差し出した。
そんなまもりに蛭魔は苦笑を浮かべる。
「どんだけ病人扱いなんだよ」
「はい、熱を計って」
「…いらね」
「いらなくないです!」
「温度知ったら余計しんどくなりそうだろうが」
「そんな事ありません!データは大事なんだから!はい、早く計って」
まもりの勢いに気圧され、蛭魔はしぶしぶ熱を計った。
「38度8分!?大変!病院行く!?」「いらね。こんくらい寝ときゃ治んだろ」
「でも…」
「動く方がしんどいんだよ」
「…お薬はいつ飲んだの?」
「ゆうべ」
「ゆうべ?じゃあお薬飲まないと。あ、でもその前に何か食べなきゃね。おかゆ食べられる?」
「…あぁ」
「急いで用意してくるね!」
パタパタと小走りでキッチンへと向かうまもりを見送り蛭魔は瞳を閉じた。
あれだけ行きたがっていたネズミランド。
自分がいなくても行けるよう熱でぐらぐらしながらも色々手を回したと言うのに…馬鹿な女。
そう思うと同時に、安心感やら愛しさやら、今まであまり馴染みのない気持ちもが胸の奥に広がるのを感じた。
「蛭魔君がどんな状態かわからないからとりあえずレトルトのお粥買って来たんだけど良いかな?嫌なら作るけど…」
あまり時間をおかず、あたたかな湯気の立ち上るお粥をトレイに乗せてまもりが帰って来た。
「構わねぇ」
「トッピングは何にする?ごま塩?ゴマ昆布?岩海苔?梅干し?鮭フレークもあるよ?」
何杯おかわりさせるつもりだ!?と言いたくなる勢いでまもりが色んな種類のトッピングを取り出した。
こんなまもりを見ると、セナがくしゃみした瞬間に大量の風邪薬を持って心配していた頃のまもりを思い出す。
今でも過保護と言いたくなる時はあるものの、あの頃から比べるとかなり子離れしたように思う。
その分こちらに心配性が向けられてる気がしないでもないが、不思議な事にそれは全く嫌な事ではない。
どちらかと言うと喜びを感じている自分が居たりして、今までなら考えられない事だと自分の変化に苦笑することもしばしばだが、そんな自分も悪くないと思う。
「ごま塩」
「はい」
ささっとごま塩を振りかけて笑顔でお粥の入ったお椀を差し出すまもりを素直に可愛いと思ってしう自分はかなり熱で脳が湯だっていると自覚する。
どうせ湯だってんなら湯だちついでに――――
「有難うな」
「えっ?」
初めての言葉にまもりの目が真ん丸になる。
そんな顔も愛しくて、思わず笑みが浮かぶ。
ホカホカと湯気のたつお粥は、飲み込むと身体の中に入って行く道筋がはっきりとわかるように五臓六腑に染み渡った。
「今日の礼はきっちりお返ししてやる。倍返し楽しみにしときやがれ」
ニヤリといつもの笑顔で笑って見せる。
「その言い方じゃなんだか御礼参りされそうなんですけど?楽しみにしとくから早く良くなってね」
先ほどの数々のメモに書かれたネズミーランドの情報を思い出し、心から嬉しそうにまもりも笑みを返した。
「ごちそうさん。寝る」
「あ、薬!薬飲んでから寝て!」
グイグイと押し付けられた薬を飲み横になる。
やはり体力が落ちているらしく横になった瞬間、意識が落ちて行くのを感じた。
相変わらず身体はしんどいが、きっともう孤独な夢を見る事はない。
そう確信して蛭魔は安らかな眠りについた。
終わり
ナンジャコリャ★
ま、こんなもんっすよ。
では、またー!
ネズミーランドには何度か行ったけど、1番の思い出は覚えているようでほぼ記憶にない、ネズミーランド大好き友人Mに連れて行かれた時…。
あの時は前日の夜、糞寒い中、やはりMの大好きなバンドのコンサートだと武道館に連れてかれ(曲もロクに知らんのに★)、ヘロヘロになり、翌日、目覚めたら大風邪でヨロヨロで出かけるどころじゃなかったのに無理矢理引っ張って行かれたんだよね…。
行く途中、風邪薬とユンケル飲め!そしたら治るvって買わされたっけ…。
ユンケルとかって〆切前の漫画家さんが飲むものだと思ってたなぁ…。
本当にヨロヨロで、乗り物がトンネルに入る度に意識飛んで…。
そんな状態の私をパレードにまで参加させたM…。
あまりのハードさに意識飛ばしながら踊りましたよ。
この話をしたら別の友人にはアホだ!ちゃんと断れ!と言われたけど、せっかくMが楽しんでるのに悪いじゃんねー。
・・・って、この友人もチケット取れたからって名古屋まで私を全く興味のないジャニーズのコンサートに引っ張ってってくれたよ★
この時は夏だったので浴衣持参を命令されて…。
帯を着付け教室で習ったばっかのひまわりの形にしたりして楽しかったけどね★
……そう言えば行ったコンサートって、友人の付き添いや、余ったチケット譲られて…とかばっかだな★

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