VIEW (中編)
「あ、蛭魔君?えっと…今、大丈夫?あー、えっと、ちょっと話出来ないかなぁと思って…」
息を潜めて自分を見つめている二人にチラチラと視線を向けながらまもりは携帯で話していた。
「え?良い?大丈夫?それが…あの…悪いんだけど…直接会って話せないかな」携帯越しなので自分がどんな顔をしているかなんてバレっこないのに、まもりはあくまで低姿勢で声音同様、からだ全体で申し訳ないと言う雰囲気を醸し出している。
まもと言う素敵な彼女が在りながら年増女と浮気など断じて許せない!蛭魔のクセに!!と憤慨している咲蘭たちにとってそんなまもりの控え目な態度は余計蛭魔への怒りに油を注ぐものでしかなかった。
「蛭魔!あんたが今、何処で誰といるかなんてこっちはお見通しなんですからね!観念してとっとと来なさい!あんたの対応如何によってはまもはもう返さないからね!あんたの居るホテルのまん前のカフェ二階に今すぐ来なさい!猶予は無いからね!!」
咲蘭はいきなりまもりの手から携帯を奪うや一気に捲し立てて一方的に電話を切った。
机の上に鼻息荒く携帯を置いた咲蘭を唖然とした顔でまもりとアコが見つめる。
その視線に気付いた咲蘭は少しばつの悪い顔をしながら「バカな男にはこれくらい言わなきゃわかんないのよ」とうそぶいた。
「で?」
数分後、逃げも隠れも慌てもせずに蛭魔は1人でまもり達の前に現れた。
窓ガラスのカウンター席からまもり達は6人がけの一番店の奥の席へと移動していた。
もちろん、まもりを真ん中に咲蘭とアコが座り蛭魔は三人がけのソファーに悠々と座っている。
その態度はいたって普通で浮気がバレた焦りも邪魔された怒りも全く感じられない。
糾弾するはずの自分達の方が居心地の悪さを感じてソワソワしていて少々情けなくなってきた。
なんと言って切り出せば良いのかわからずお互いチラチラと視線をやり取りしてみるがらちがあかない。
そんななんとも言えない状態が暫く続いた後、沈黙に耐えきれずアコが口を開いた。
「私達あそこの窓のカウンターに座ってたの、そしたら女の人と腕くんだあんたがそのままホテルに入ってくのを目撃しちゃったってわけよ」
「で?」
「でって、まもりってもんがありながら女と腕くんでホテルに入るなんてあり得ないでしょう!?浮気なんてサイテー!」
「そもそも本当にまもりと付き合ってるの!?マジで信じられないんだけど」
いきり立つ二人に蛭魔はうんざりした視線を向けてコーヒーを飲むと口を開いた。
「腕なんざ組んでねえし、浮気もしてねー。だいたいあんなババアと付き合ってたまるか。糞マネと付き合ってるかどうかはノーコメント」
「はぁ?何ソレ」
「私達はあんたが女の人と腕組んでホテル入ったの見たんだからね!」
「まもりと付き合ってるかどうかノーコメントって何よ!はっきり言えないやましいことでもあるわけ!?」
「ウルセー。ぎゃあぎゃあでけえ声出さなくても聞こえてるっつーの。アレは腕組んでたんじゃねえ。連行されてたんだ。逃げねえように掴まれてたんだよ」
「はぁ?」
「ホテル入ったってもビジネスホテルだろうが。あのババアと気色悪りぃ想像されるなんざまっぴらだ。付き合ってるかどうかノーコメントってのは相手が『恥ずかしいから秘密にして』とかアホな事ほざいたからだ。わかったか?」
きっぱり言い切った蛭魔にそういえば自分たちはついさっきまでまもりが蛭魔と付き合っている事を全く知らなかった事に気付いた。
「まもり…本当?」
「ゴメンね!蛭魔君と付き合ってるってなんか今さらで恥ずかしくて二人に言い出せなかったの…」
心底申し訳ないと言う顔で謝るまもりに二人はため息をつくとしょうがないと許した。
確かにいきなり『蛭魔と付き合いだした』なんて言われたら自分たちはパニックになっていたかもしれないし、学校もただでは済まないだろう事は火を見るよりあきらかだ。
自分たちだけにはと思う半面、相手が相手なだけに徹底的に秘密にしておくのが得策に思えた。
すっかり大人しくなったアコ達に蛭魔はみえみえの演技で「彼女にみんなに紹介するのが恥ずかしいって言われるなんてぼかぁ悲しいナァ」と嘆いて見せた。
事実なので反論のしようもないが、言わせてもらうなら元々は蛭魔の日頃の行いのせいじゃないかと三人は腹の底でブーイングした。
「こんな可愛い子達はべらせて妖一ったらすみに置けないわネェ~」
突如かけられた声に蛭魔は苦虫を噛み潰した様ななんとも言えない嫌な顔をした。
声の主はそんな蛭魔には一切頓着せず、蛭魔の隣にさっさと腰を下ろしたかと思うと尻をぶつけて蛭魔を端へと追いやった。
「で?」
「えっ?」
いきなり妖艶な微笑みを向けられてまもり達はどぎまぎしてしまい何が何やらわからない。
「どの子が妖一の彼女か当ててみましょうか?」
ニッコリ微笑みながら三人の顔を見比べると「この子でしょ!」と見事まもりが彼女だと言い当てた。
何が何やらわからず目を丸くしているまもり達をよそに謎の女性は上機嫌だ。
「正解でしょう! ?絶対に妖一の好みだと思ったのよね!」
嫌がる蛭魔に身体を密着させて「このこのぉ」とツンツンと蛭魔をつつきながら冷やかしている姿はイチャイチャいちゃつくカップルのように見えて自然とまもりの眉間にシワが浮かんで来た。
「失礼ですけど蛭魔君とはどのような関係なんですか?」
なるべく気持ちを抑えた声にしたつもりだったが完璧に感情を隠す事には失敗していたし、いつもは天使の微笑みと言われる笑顔も額に青筋が浮かんでいては台無しだった。
そんなまもりの様子に蛭魔は辟易とした顔を更に強めた。
目の片隅に入る蛭魔のそんな態度がまもりの感情に拍車をかける。
ジロリと一瞥すると蛭魔はしらじらしく視線をそらした。
「私と妖一の関係?気になる?うふふ、どう言う関係だと思う?実はねぇ…」
女はそこで言葉を止めると辺りをキョロキョロ警戒してから身を乗り出し衝撃の告白をした。
「愛人関係ってやつ?マダムと若いツバメって関係」
「「「?!」」」
三人がショックのあまり固まっているのを蛭魔は呆れた顔で眺めると「アホなこと言うな。寝言は寝て言え。馬鹿が信じてんだろうが」と注意したが女性は一向に悪びれた様子も無い。
「ごめんなさい。本当は親子なの。実は義理のね。妖一は旦那の連れ子でね、私たちは道ならぬ不倫関係ってやつでね…」
しんみりと話す女性に今度はまもり達の顔面は蒼白となった。
「糞ババア!気色悪い嘘は大概にしヤガレ!てめえらもいちいち信じんな!」
蛭魔の嘘だと言う言葉にまもり達は没頭した顔になった。
「もぉー、そんなマジに怒らないでよぉ。そんなにカノジョに誤解されたくないってワケ?んっもぅ、カノジョにゾッコンなんだからぁ」
「てめえ、言葉に気をつけた方が良いぞ。今時ゾッコンなんて年がバレんぞ」
「本当に可愛くないんだから!」
「ケッ、可愛くてたまるか」
「はい。じゃあ真面目に自己紹介します。
私は蛭魔妖一の母親なの。義理とかじゃないから。よろしくね」
ニコニコ笑顔で真面目に自己紹介と言われてもにわかには信じられない。
まもり達は真偽のほどが掴めず、しばしどう反応を返したら良いか悩んだが、蛭魔の鋭いツッコミが入らない所をみると、この女性が蛭魔の母親と言うのは本当の事なんだと言う結論に至り、固まってしまった。
つづく
ありがち~~~~★
おほほほほ。
後編はそんなに間を開けずupできると思います。
多分・・・。
年賀状も作らなきゃな~・・・・。
ぽちぽち 拍手ありがとうございます。
更新の遅いサイトにお越しいただきありがたいです。
ぼちぼち ゆっくりですが がんばって更新していきたいと思います。
龍也様
コメントありがとうございましたv
年表がお役に立ったようでうれしいですvv
やった~♪
久しぶりに年表みたら 自分の集中した時の仕事っぷりに呆れました★
でも、まだ最後アップしてなかったですね・・・。
すっかり忘れてました★
そ・・・そのうち・・・・
もうデータはまとめてるんですけどね・・・・。
集中力の切れた時の私の仕事っぷりはさんざんたるものですから・・・。
通りすがり様
コメントありがとうございましたv
また通りすがることがありましたら、ぜいのぞいてみてくださいねv
なかなか更新されてないかもしれませんが・・・がんばりますので!

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