Reckoner
クリスマスボウルで見事、優勝を果たしたセナ達デビルバッツの面々は、年末こそアメフトから離れてゆっくり羽を伸ばせれたものの、年明け早々、ワールドユース参加が決った為、メンバーの選考やら練習やらで慌ただしく過ごした。
ふと気付けば、明日から新学期だと言うのに冬休みの宿題は真っ白なままでセナ達は青ざめた。
そして、救援措置として本日は急きょ部活は休みとなり、そのかわり教室を一つ借りて宿題をするお勉強会となった。
「けっ!どいつもこいつも、やらねえなら最後までやるな!今頃んなって慌てやがって。やらねえならなら最後までやらねぇって気概見せやがれ!」
「うるさいです!宿題はちゃんとやって行かないと駄目なの!内申書に関わるんだから」
「こいつらの内申が宿題の1つ2つやらなかったからってどうにかなるような内申かよ」
「テストの点数が悪かったとしても、ちゃんと宿題を提出しておけばそれだけで幾らか点数がもらえるんだから重要でしょ?!」
「んな、セコい点数の稼ぎ方しか出来ねぇのか?救いようのねぇ糞馬鹿野郎共だなぁ」
「宿題で練習が中止になったからって邪魔しないで下さい!」
「こいつらの頭で今日1日で片付けれる量か?潔く諦めた方が良いんじゃねぇの?」
「もう!部活できないからっていらつかないで!そうでなくても時間が無いんだから邪魔しないで!そんなに暇なら蛭魔君も宿題したら?ハイ、これ」
そう言うとまもりは蛭魔の前に宿題の問題集を置いた。
「蛭魔君の宿題よ。暇なら蛭魔もやったらどう?」
「てめえ、いつの間に…」
「蛭魔君ならこれくらい1時間もあれば終わるわよね」
「チッ」
蛭魔は忌々しそうに舌打ちするとおもむろに問題集を開き解答を書き込み始めた。
それは 本当に問題を読んで解いているのか?
実は答えを知っているんじゃあ?と思わずにはいられないスピードで、その場にいた全員の目が釘付けになった。
「凄い…」
「あんな難しい問題をすらすらと…」
「やっぱ人間じゃねえ」
「人の事 見る暇があったらとっとと終わらせやがれ!」
蛭魔の怒声に一同は慌て自分の宿題に戻ったが、面白いように捲られて行くページに自然と視線が戻る。
「凄さMAX…。なんであんな速さで計算できるんだ…」
「ははは…僕達には絶対無理だね」
「アハハー!書くスピードなら負けないよ!」
「何でも書きゃ良いってモンじゃねぇぞ」
「フゴッ!」
「そうだね。僕達も頑張って宿題終わらせなきゃね!」
「まもり姉ちゃん。ここの式はこれで合ってる?」
「どこ?」
「ここなんだけど」
「うん。合ってるわよ。セナ、やれば出来るじゃない!」
「ハイ、ハイ、ハイ!まもりさん!出来ました!どうっすか?!」
「どれどれ…モン太君、計算ミスしてるみたい。もう一度計算し直してみて?」
「…はい」
「けっ!んな簡単な問題でミスるんじゃねぇよ。近頃は小学生の低学年でも10の段のかけ算位やるぞ」
「学校で習うのは9の段まででしょ。一体どこの小学生よ」
「インド」
「…ここは日本です!」
「日常生活で使うかけ算は9の段までじゃねえだろうが」
「そりゃそうだけど…」
「蛭魔さん!14×17は?」
「238」
蛭魔は事も無げに電卓よりも速く答えを出した。
「蛭魔さんはそれを覚えているから計算が速いんですか?」
「てめえらとはできが違うから速いんだ」
「でも、俺達もその式覚えれば少しは計算速くなるって事っすよね?!」
みんなにキラキラした目を向けられ、蛭魔は少々ウンザリした顔をした。
ガリガリと蛭魔は特徴的な字で黒板に数式を書く。
(10+a)×(10+b)
=10×10+10b+10a+ab
=(10+a+b)×10+ab
「これに数字を入れて計算すると…」
(14+7)×10+4×7
A.238
「簡単に答えが出るってワケだ。どうだ?猿でも分かんだろ?」
「……。」
「…俺、地道に計算しよ…」
「俺も。無理だ」
セナ達は数式を見ただけで10の段の暗算を早々に放棄した。
「てめえら!こんな簡単なのも覚えられねんなら幼稚園からやり直しヤガレ!」
蛭魔はぷりぷりと怒りながらドカリと席に座ると、つまらなそうに問題集を捲った。
みんなも自分の宿題へとしばし没頭する。
蛭魔は既に数学、英語を終え、国語も後少しとなった。
この調子なら一時間もかからず終わるのは確実だ。
まもりは蛭魔がやり終えた数学の問題集を捲ってみた。
「…蛭魔君、式が書いてないわよ。こんな問題まで暗算でしなくても…。って言うか、式も点数のうちでしょう?」
「面倒くせぇ。やってるだけ有難いと思いやがれ!文句があんならてめえが書いとけ。」
「別に文句は無いけど、私が書いたら字が違うからバレちゃうわよ。…それにしても、蛭魔君って数字に強いわよね。計算する脳って整理整頓する時に使う脳と同じだから数学が得意な人は片付け上手だって聞いたけど、蛭魔君って違うわよね。」
「何が言いてぇ?」
「蛭魔君はきっと片付け出来る子なんだからしたら?って話しです。」
「なんだ その出来る子って。片付けなんざしなくても死にゃしねえよ」
「死にはしなくても綺麗に片付いてる方が気持ち良いでしょ?」
「別にィ?そんな綺麗が良いならてめえがすりゃ良いだろ」
「私もするけど、洗い物とか生ゴミの処理とかこまめにしといてくれないとアレが出たら怖いんだもの…」
「あんなモンのどこが怖えんだ?」
「怖いものは怖いんです!アレが出たる家には行きたくないもの。ホイホイとか置いて有るお店とか二度と行かないもの!」
「…わかった。わかったからんっな興奮すんな。アレが出たら業者呼んで駆除してやる。それで良いんだろ?」
「うん。でも、ちゃんと片付けもしてね?」
「おっし、終わった。」
「あら、もう終わったの?」
「チョロいもんだ」
「すぐ終わるんだから最初からすれば良いのに」
「へーへー」
「まったくもぉ。あら、みんなどうしたの?手が止まってるわよ?」
まもりは自分達の発言が爆弾を投下した程の威力を持っている事に気付いていない。
その横の蛭魔はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべ、みんなの反応を楽しんでいるのがありありとわかり、その場にいた全員が脱力する。
「みんな、わからない所が有ったら何でも聞いてね。頑張りましょうね!」
ニコリと天使の微笑みに励まされ一同は再び宿題へと挑むのだった。
おわり
単にテレビで観た 10の段の式をメモっておきたかっただけのお話でした★
次は・・・風龍凪さんより頂いたリクエスト、『向かうのは…』のラストと番外編の間のお話を書けるかな~?
その間のネタなんて全く考えておりませんでした★
まもり母と酒飲んで終わりとしか・・・・。
ちょっと考えてみます!

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