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向かうのは・・・ Funky monkey baby
「やー 本当に正月早々こんな早くに押し掛けちゃって良かったのかなぁ?」
セナの家からまもりの家に向かう道中、鈴音が不安をもらした。
慣れない振り袖を着た鈴音の足取りがちょっとおかしくて思わず笑いそうになりながらセナは鈴音に説明した。
「うちの母さん、大晦日は夜更かしして元日は寝坊ってのが毎年の事でね、いつの頃からか元日の朝御飯はまもり姉ちゃん家でお雑煮を食べるってのが恒例になったんだ。今年は鈴音やモン太と元日に初詣に出かけるって言ったら、良かったら二人も一緒にって、まもり姉ちゃんが言ったんだし、まもり姉ちゃんも一緒に初詣に出かけるんだから大丈夫だよ」
「まもりさんの家でまもりさんの作った雑煮!新年から幸せ超MAXだぜー!俺はまもりさんの作った雑煮なら5個…いや、10個は軽いぜ!」
興奮し過ぎ気味のモン太の大声に苦笑いしているうちに三人はまもりの家に到着した。
ピンポーン
チャイムを鳴らした瞬間に勢い良くドアが開いて三人は驚いた。
「うるせーぞ糞ガキ共!」
見るからに寝起きで不機嫌丸出しのパジャマ姿の蛭魔がそこに立っていた。
思いもよらぬ人の思いもよらぬ登場に三人は固まる。
その時、奥からパタパタとスリッパの音が聞こえてまもりが姿を現した。
「あ、みんな。いらっしゃい!明けましておめでとう。」
何事もなかったようなまもりの対応に三人の呪縛がようやく解ける。
「あ…明けましておめでとう。まもり姉ちゃん」
「まも姐、今年もよろしくね!」
「ま、まもりさん!こ、こ、今年もよろしくMAXですー!」
「こちらこそ今年もよろしくね!」
にこやかなまもりの笑顔にモン太は腰砕け寸前になるが、なんとかギリギリのところで踏みとどまった。
それと言うのもまもりの視線がすぐに自分からはずれ蛭魔に向けられたからだ。
「蛭魔君おはよう。はい、これ着替えね。」
「おう。風呂借りるぞ」
「ご飯の用意できてるから早くね。さぁ、みんな上がって上がって」
「お邪魔しまーす」
三人は勝手知ったる様子でバスルームへ向かう蛭魔をつい目で追ってしまう。
セナは驚いた、鈴音は興味津々な、モン太は絶望的な、それぞれ三者三様な目で蛭魔を見送ってから靴を脱いだ。
「やー!まも姉 まも姉!妖兄お泊まりしたの!?」
リビングに入るなり鈴音はまもりに詰め寄った。
その目は爛々と輝いていて妙な迫力が有りまもりは少々引いてしまう。
「ええ。除夜の鐘聞いてから二人で初詣に出かけたんだけど帰ったら1時過ぎててね、今から帰るのも大変だろうから泊まりなさいって母さんが言ってね」
ほんのり赤くなりながら話すまもりとは対照的にモン太はどんより青くなっていく。
「まもりさんのお母様公認…お母様公認…」
まもりと蛭魔が付き合っていることは周知の事実だったが、普段の二人と来たら付き合う前と付き合い出した後と全く違いが感じれなかったので、もしかしたら付き合っていると言うのは間違いで、本当は付き合っていないのでは?そんな藁にすがるような淡い期待が粉々に打ち砕かれてしまったモン太は呆然自失でぶつぶつと自分の世界へと旅立ってしまった。
呆然自失のモン太を微塵も気にする事なく鈴音はますますテンションを高くして行く。
「やー!初詣にお泊まり!ラブラブー!」
セナは二人に挟まれ、もう笑っているしかない。
「ま、まあ、ちょっと落ち着いて。ね?鈴音ちゃん。えっと、そう、お雑煮にお餅は何個入れる?セナはいつも通り2個?」
「えっと、今年は3個で…」
「3個も大丈夫?鈴音ちゃんは?」
「私は2個でお願いしまーす!」
「了解。えっと、モン太君は…」
ちょっとやそっと呼んだくらいではこちらに帰って来そうにないモン太にまもりは困惑する。
「あ、モン太はさっき、まも姐の作ったお雑煮なら5個でも10個でも食べれるって言ってたよ」
「そうなの?じゃあとりあえず7個位入れておけば良いかしら?」
鈴音の追及から逃げるべく、まもりはそそくさとキッチンへ向かった。
「はーい、おまちどおさま~。我が家特製のお雑煮を召し上がれ!」
美味しそうな匂いと共にまもりの母がリビングに入ってきた。
手に持ったトレイから温かい湯気のたつ器をそれぞれの前に置いて行く。
「やー!美味しそ~」
「良い匂いだ」
はしゃぐ二人の後にモン太の前に器が置かれる。
お餅が7個入った巨大などんぶりのその存在感に三人は言葉を無くした。
「あ、蛭魔君。ちょうど良かった。今、蛭魔君のお雑煮持って来るね!」
着替えを済ませてリビングに入ってきた蛭魔はモン太のどんぶりを見て眉を微かにしかめる。
「…大食い選手権みてぇな馬鹿でけえのはいらねぇからな」
「セナと一緒の3個入れとくわね!」
ふぅ、とため息をついて蛭魔はあいている場所に腰をおろした。
「蛭魔君、おまちどうさま!どうぞ」
「おう」
皆の雑煮の準備が整い、揃って暫し無言で雑煮に挑んむが、具材がてんこ盛りで食べても食べても肝心の餅が出て来ない。
「まも姐ん家のお雑煮って豪華で具沢山だね~!」
「うん。だからいつもはようよう2個しか食べれないんだけど今年は3個食べれるかもって思ってチャレンジしたんだ。なんとか食べれそうで良かった」
姉崎家の雑煮は本当に具沢山だった。
大根、人参、ホウレン草、鶏肉、蒲鉾、塩鰤、蛤に最後は鰹節と海苔がトッピングされており、普通でもかなり胃に来るボリュームなので、巨大どんぶりのモン太は食べも食べても無くならない具材に言葉も出ない。
「妖兄のお家のお雑煮って具は何が入ってるの?」
「あん?何も」
「えっ?何も入ってないの?!素雑煮?」
「生まれてこのかた雑煮なんざ食ったの初めてなんだよ」
「えっ…」
蛭魔は平然と雑煮を食べ続けているが微妙な気まずい雰囲気が室内に流れた。
「蛭魔君、大丈夫よ。これからは毎年、うちでお雑煮食べれば良いんだから!」
「で、毎年、朝3時までのあの宴会に付き合わされるってか?」
「大丈夫よ!蛭魔君、お酒強いから」
「いえいえ、お母様程ではございまセンヨ。それに残念ですが来年から向こう4年はライスボウルで正月は無いデス。いやぁ~残念だナァ」
「蛭魔さん、口調が全然残念そうじゃないですよ…」
「大丈夫よ!まもりと結婚したら蛭魔君、うちの子だもん」
「ちょっと母さん何言うの!」
「やー!お母様公認!」
にこやかなまもり母の発言にまもりは赤くなり、鈴音は色めきたち、モン太は餅を喉につめ大騒ぎとなった。
朝から次々と不幸にみまわれたモン太の足取りは雑煮を食べ過ぎただけでなく重いものだった。
周りにどんよりと暗い物が覆って見える程で、初詣の人混みの中にあってもモン太の周りだけはすいていた。
お参り後、「やー!絵馬書こうよ!」と言う鈴音の提案で一行は絵馬を奉納することにした。
「やっぱりセナは泥門の連覇でしょ?」
「うん。鈴音は?」
「うーん、やっぱり身長が伸びますようにかな~?最低後5cmは伸びて欲しいんだよね~」
仲良くキャイキャイと絵馬を書くセナと鈴音の横ではまもりが絵馬を書いていた。
「蛭魔君は書かないの?」
「悪魔は神なんぞには祈らねえ。願いは自分で叶える。それにどうせ俺の願いはてめえが書くだろ?」
「…自意識過剰ね」
「あん?死ぬ程シュークリームを食えますようにとでも書くのか?」
「書きません!受験生なんだから合格しますようにとか書くって思わない?」
「けっ、糞食らえだな」
クスッと笑ってまもりは絵馬を書き始めた。
「文末はできますようにとさせて下さいとか書くなよ。やる!っとかの断言にしとけよ。」
「なんで?」
「脳の問題だ。断言する方が叶えようって脳が働くんだよ。」
「そうなんだ。じゃあ…」
さらさらと綺麗な文字が絵馬の上に書かれて行く。
「これでどう?」
絵馬をかざすまもりに蛭魔はニヤリと笑みを返す。
「ひねりがねえ、が、悪かねえ」
「じゃあ、ここに名前書いて」
「あん?」
ハイとマジックを渡された蛭魔は嫌がる風もなく綺麗な字で『絶対、ライスボウル!』と書かれた下にさらさらと名前を書いた。
まもりは蛭魔の名前の下に自分の名前を書き込むと手に持ち蛭魔に向けると微笑んだ。
セナと鈴音が絵馬を並べて奉納する姿は見ていて微笑ましいし、頬を染めて絵馬を奉納するまもりと横に立つ蛭魔の姿は絵になる。
そんな二組のカップルに当てられっぱなしのモン太はマジックの先を潰す程、力をこめて絵馬に『キャッチMAX!』と書き込む。
その姿は燃えている。
果たして皆の願いは叶うのか?
それは神のみぞ知る。
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