その心は?
「妖一兄、妖一兄」
「あん?」
試合終了後、ロッカーに引き上げる所をやたらコソコソした風を装った鈴音に引き留められた。
こういう時の鈴音が考えている事はろくな事じゃないと決めつけている蛭魔は微かに眉を寄せた。
「解散の後、妖一兄は部室に帰って今日の試合のデータ分析するんでしょ?」
「ああ」
「じゃあさじゃあさ、まも姐をフォローしといてあげて」
「あん?」
「だってさ、絶対ショック受けてると思うのよ」
「元気にやってんじゃねえか」
視線の先にはいつもとかわらず甲斐甲斐しく皆の世話をやくまもりの姿があった。
「今はみんながいるから何事もなかったように振る舞ってるだけかもしれないじゃん」
「そうかァ?」
「乙女心は繊細なんだからね!」
「そんなタマか?」
やっぱりろくでもない事だったと蛭魔は内心、盛大なため息をつく。
「いいから!お願いしたからね!」
「それがお願いする奴の態度か?」
言う事は言ったとばかりに一方的に会話を終えて鈴音は勝利にわいているセナ達の所へ行ってしまった。
「…ったく」
取り残された蛭魔は頭をガシガシ大袈裟にかくとさっぱりするためにシャワーへと向かった。
「はい。これ、今日の試合のデータをまとめてみたんだけど」
「おう」
解散後、くたくたの身体を引き摺るように帰って行ったメンバーをよそに、蛭魔は自分たちの試合だけでなく、今日行われた全試合の情報を収集分析し、それをまもりが細かく再分析してデータにまとめていた。
「どうかしら?」
「ん。いんじゃね?」
「そう。良かった」
「………」
「………」
「おい。糞マネ」
「いい加減その呼び方やめて欲しいんだけど」
「他に言いてえことがあんじゃねえか?」
遠慮なく核心をついてきた蛭魔の言葉にまもりの身体は一瞬びくりと揺れたが、小さく息を吐いて自身を落ち着けてから口を開いた。
「………アイシールド君の正体を何で私に隠してたのとか?」
「………」
答えない蛭魔に構うことなくまもりは言葉を続ける。
「隠してた理由なんて聞かなくたってわかるもの…」
そう言って少しうつむいたまもりの表情は前髪に隠れて見えなくなった。
「私って、セナの事を見ているようで何も見てなかったんだなって自己嫌悪はしたけど…」
「けど?」
「本当言うと、その事は私の中ではたいした事じゃなかったって言うか、私がこんなだからしょうがないんだって思えたの」
まもりの告白を蛭魔は黙って聞いた。
「それよりも私が思ったのは…」
握りしめたまもりの拳にグッと力が入ったのを見るともなく蛭魔は見ていた。
「私はもうアメフト部に必要じゃないって蛭魔君が考えたんじゃないかって事」
「あん?」
いきなり自分の名前が出て思わず蛭魔は疑問の声を発してしまったがまもりは気にせず話し続ける。
「だって、私は元々セナを守る為にアメフト部に入ったんだもの。セナが一人でしっかりやれるなら私がアメフト部にいる必要ないじゃない?
セナがアメフトするのを邪魔されては困る、けど人手はいる…だから私には正体を隠してたんでしょ?」
「…………」
「それなのにずっと隠してた正体を明かした…」
ポツリと唇からこぼれ落ちたような呟きに蛭魔が眉をわずかにすがめる。
「セナは蛭魔君に私に正体を明かしていいか相談したんでしょ?
そして蛭魔君は私に正体を明かすことを了承したんでしょ?」
「あぁ」
試合前、確かにセナは正体をばらす許可を貰いに来た。
しかし、あの時のセナの瞳の強さは許可を貰いに来たと言うよりも、正体をあかす宣言を蛭魔にしたと言う方が近かった。
だから蛭魔は許可を与えた。
「だからね。セナが私に正体を明かした瞬間、正体を隠されていたって事より、私がやめてもかまわないって蛭魔君が思ったんじゃないかって事の方が気になったの…ほんと勝手だよね。自分がそんな勝手な人間とは思わなかった」
「………」
思いもよらなかった方向に流れた話しに蛭魔は相づちを入れる事が出来なかった。
「だけど、選手紹介の文章が書き換えられててマネージャーとして私の名前がコールされたのを聞いた時、本当に嬉しかったの。私はアメフト部のマネージャーであり、アメフト部のメンバーだってちゃんと蛭魔君に認められてるって思えたから」
「……」
「あれは…そう言う事よね?」
ようやく顔を上げて自分を見つめたまもりに蛭魔は自然と笑みが浮かぶのを感じた。
「フン。あの糞チビには鼻から主務なんざ無理なんだよ」
「糞チビって言うのもいい加減やめてあげてよ」
すっかりいつもの口調でつっかかって来るまもりに蛭魔もいつもの調子で返す。
「ま、そんだけの気概があんならせいぜい気合い入れて働けよ。糞馬鹿野郎どもの面倒見られる物好きな奴はてめえくらのもんだからナァ」
「みんなのこと糞馬鹿なんて言わないで下さい!」
「何よりてめえは“使える女”だからな」
「またそんな言い方する。まったくもー。私以外蛭魔君の側でマネージャーできる子なんているわけないものね」
「ソーデスネ」
「しょうがないからマネージャー続けてあげます。絶対クリスマスボウル行こうね!」
「たりめーだ」
蛭魔は不敵な笑みを浮かべた――――。
それから数週間後――――
「…こ、これって…」
部費で購入した月刊アメフト12月号の『高校生記者が突撃取材!INTERVIEW8』の記事を部室で読んだまもりはインタビュー記事の一文に目が釘付けになった。
「まさか…まさかよね…?」
その日、本屋では帰宅途中のまもりが何故か真っ赤な顔をして月刊アメフト12月号を購入している姿が目撃された――――。
END
まもりさんがぐるぐるしちゃって・・・
わけわかりましたか?
わからなかったらゴメンナサイです★
実はこのお話、書きさしでしばらく放置してまして
部室で会話してる途中
「…!…ンッ」
・・・ってまもりさんの台詞でとまってたんです。
どう言う意図でまもりさんがこの台詞なのか全く覚えがなく・・・・。
??
もしかして・・・蛭魔さんいきなりキスかました???
・・・って自分で書いておきながらなぞでして・・・
とりあえずキスかましたって事で続きをかいてたんですが・・・↓
突然立ち上がった蛭魔に抱きしめられたと同時に抗議の声は蛭魔の唇によって塞がれた。
すぐに唇は離れたが、混乱したまもりは蛭魔を攻める言葉を見つけられずあわあわするしかない。
「な、な、な…」
「ウルセー。黙れ」
「ンッ…!」
再び蛭魔の唇によって塞がれた。
浅く深く繰り返し口付けしてくる蛭魔に頭が真っ白になったまもりはなすすべもなくされるがままだ。
頭の片隅で警報が鳴り響くが
・・・・・・まで書いてやめて、キスしたであろう場面からまるっと削除して書いたのが今回のお話★
私、一体、何考えてたんでしょうね~??
一体、どこにまもりさんのキスシーンが入ってたかわかります?

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