その心は? ~リコの記者魂~
RRRRRR……
ガチャッ
「はい。熊袋です…あ、パパ!
そっちの取材は順調?
いいなーアメリカ取材なんて。
私も行ってみたいなぁ。
あ、でもね!
なんと今日の神龍寺vs泥門の放送の解説者としてパパの代理で私が出たんだよ!
ばんがってこれまでの泥門の対戦成績のフリップ作ったりしてさ。
え?
“がんばって”だろ?
いや、そうなんだけど、緊張し過ぎで放送の時『ばんがります!』って言っちゃって、そしたら真田さんも気に入ったみたいでその後『ばんがってる』って使って、で、真田さんと私で今『ばんがってる』ってのがブームなの。
…って、そんな事はどうでも良くて!
ネットニュースで試合結果見た?
まだ?
あ、じゃあ、じゃあね、クイズ!
神龍寺と泥門どっちが勝ったでしょーか!?
えっ?
そんな興奮してたらバレバレ?
あー、バレバレかぁ~。
正解!
なんと超番狂わせで泥門が勝ったんだよ!
ビックリでしょ!?
まさかあの神龍寺に泥門が勝つなんて思わないよね!?
最後まで手に汗握る凄い試合だったよ!
泥門びいきのパパがこの試合見逃すなんて痛恨だよ!
マジ凄かったんだって!
だってね、あの金剛阿含がフル出場したんだよ!?
最初から最後まで飛ばしまくり!
だけど勝ったのは泥門!
それだけでどんだけ凄い試合だったかわかるでしょ!?
本当に本当に凄かったんだから!!
えっ?
興奮し過ぎ?
だって~思い出しても興奮するくらい凄い試合だったんだもん!
前に雑誌のインタビューした時、蛭魔さんと阿含さんって中学時代に知り合いだったらしいって話したじゃない?
あの時もかなり因縁を感じたけど今日の試合では蛭魔さんより阿含さんの方が意識してるって感じでずっと火花散らして迫力あったんだよ~。
もー怖い怖い!
って言うか、そんな阿含さんをさらに蛭魔さんが煽って火を大きくしてたってのが正解かな?
ウンウン、そうなのよ!
さすが蛭魔さん、泥門の悪魔は伊達じゃないよね!
途中から雪光さんを“光化学兵器”なんて言って投入して挑発したりね。
泥門のチームワークと蛭魔さんの作戦勝ちって感じ。
本当に凄かったんだって!
なんの打ち合わせもなくいきなりオンサイドキックだよ!?
凄くない?
普通、サイン一切無しであんなに綺麗にオンサイドキック決まらないって!
泥門の時々見せるあのチームワークの凄さってなんなんだろ ?
神憑り的だよね!
マネージャーの姉崎さんもね、こまめに蛭魔さんにサインで情報送っててね、本当にツーカーで凄いの!
あっ!
そう言えば!!
インタビューで蛭魔さん、好きな女の子のタイプは『使える女』って答えたからあの時、私てっきり王城の進さんと一緒でマネージャーの条件を言ってるって思ったんだけど…違うよね?!
あれって確信犯的に言ってたのよね!?
だってアノ蛭魔さんだもん!
好みは『使える女』=『マネージャー』=『姉崎さん』って三段論法だったって事よね?!
そうよね?!
ね?!
ね!
嫌~ん!
気になる~!!
真相が知りたい~!
今度インタビューする時に絶対聞こ!!
えっ?
芸能リポーターじゃないんだからそんなの聞かなくていい?
関係無い事だから止めとけ?
えー、そう言われても気になるものは気になるし…。
相手は泥門の悪魔だぞって…でも同じ高校生だし…甘い?
でもレポーターとしての飽くなき探求心は止められないよ~。
下世話?
うーん…そうなんだけどぉ…
でも気になるんだよね…。
はいはい、分かりました。
聞きません。
そんな下世話なインタビューはしません。
これで良いんでしょ?
大丈夫だって。
そんな心配しないでよ。
はいはい。
わかった、分かりました。
あ、ママにかわるね。
じゃあねー!」
旗色が悪くなったリコはさっさと母親に電話を押し付けると自分の部屋へと逃げ帰った。
自分のインタビュー記事の載っている『月刊アメフト12月号』を出すと蛭魔の記事を読み返した。
ひとつこうなんじゃないかと気付いてしまうと、今までなんとも思わなかったインタビューの言葉ひとつひとつに裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。
やはり気になるものは気になる。
もし、泥門がクリスマスボウルで優勝したら…
蛭魔もご機嫌でリップサービスのひとつでもしてくれるかもしれない。
罷り間違って仮に気分を害したとしても、いつもよりは仕返しが恩赦で手ぬるく済むかもしれない。
この問題の真相を究明するチャンスは考えれば考える程 クリスマスボウルの直後しかないように思えて来る。
「……よし!」
リコは気合いを入れて自分を奮い立たせると、クリスマスボウルの後のインタビューの草案を書き始めた―――――。
終わり
単にリコちゃんもあのインタビューの答えについて「もしや!?」って思ったんじゃないかと思いまして★
そんだけでした。
お粗末!

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