朗報GET!
「ねぇねぇ。妖一兄って好きな人いる?」
「あん?」
「ほら、彼女が欲しいとか誰かと付き合いたいとか思わない?」
「テスト期間中で部活の無い時に来るなんざとぼけた奴だと思ったが、骨の髓からとぼけた奴だったか」
泥門は今日からテスト期間に入ったため部活は無い。
それを知らなかった鈴音はうっかり泥門にやって来ていた。
メンバー達は部活が無いと喜び勇んですでに帰った後だった。
部活が無いのはテスト期間だからと言う事はメンバー達には全く関係ないらしい。
―――ので部室にいたのは蛭魔だけだった。
普通なら速攻踵を返す状況だが、鈴音はチャンスとばかりに蛭魔に恋話を仕掛けていた。
「だって、うちは来週の水曜日からなんだもん。泥門は今日からなんて思いもしなかったから」
「糞アゴヒゲは何も言わなかったのか?」
「あの馬鹿兄貴がテスト勉強なんてするわけないじゃん」
「糞チビ共もいねんだ。とっとと帰りやがれ」
「普段こう言う話しって妖一兄とする機会なかなかないじゃない?せっかくだから色々話し聞かせてよ」
「てめえのくだらねえおしゃべりに付き合う程ヒマじゃねんだよ」
「妖一兄だってうちの馬鹿兄貴とは違った意味でテスト勉強なんてしないじゃん。聞くだけ聞いたらすぐ帰るから。ね?」
「だいたいなんで俺には付き合ってる奴はいねえって前提の話しすんだ?」
いきなりの爆弾発言に鈴音は色めきたつ。
「えっ?え…えっ?!えっ!!えー――!?な、なに、なになに!?妖一兄ってやっぱりまも姐と付き合ってたの!?いやーん!いつの間に!?ね、ねぇ!いつから何時から!?」
「あん?なんでそこで糞マネの名前が出てくんだ?」
「えっ?だって妖一兄が付き合ってるのはまも姐なんでしょ?」
「てめえの脳味噌はどういう情報処理してやがるんだ?んっな訳ねえだろ」
あっさりまもりとの交際を否定した蛭魔に鈴音は驚愕する。
「えぇっ!?違うの」
「チガウ」
「じゃ、じゃあ誰と付き合ってるって言うのよ!?」
「てめえの知らねえ女」
「どこの馬の骨!?まも姐以上じゃないと絶対認めないんだから!どんな女なの!?」
鼻息荒くつめよってくる鈴音に蛭魔は呆れた視線を送るが鈴音は全く怯まない。
「てめえ何様だ?…ったく。そんなに聞きてえか?」
「当然!で?!いつ、何処で、誰と、どのように付き合うことになったの!?」
ひとつため息をつくと蛭魔は面倒臭そうに話し始めた。
「デスマーチでアメリカ行った時、チアガールのメンバー集めただろ?あん時だ」
「えぇっ!?付き合ってるのってチアメンバーの誰かなの!?」
「ちげーよ。そいつがチアメンバーを紹介してくれたんだよ。チアメンバーのレベルの高さ考えたらそいつがどんだけレベル高いか推して知るべしだろ?」
「チアメンバーのレベルが高いからって紹介してくれた彼女のレベルが高いとは限らないじゃん」
「しつけーな。じゃあ言うが、その女は金髪碧眼、身長170センチのモデル体型。現在19歳。カリフォルニア工科大の大学院に通ってる」
「19歳で大学院っておかしくない?」
小首を傾げる鈴音に蛭魔は面倒くさそうに理由を説明した。
「スキップしてんだよ。12歳で大学入って、カリフォルニアの他にも大学2校出てんだよ。どの大学でもミス・キャンパスに選ばれてるし、先日は書いた論文がサイエンスに載ってたな」
「……ぐうの音も出ない位スーパーな人って事だね…」
想像もつかないような彼女の経歴に鈴音は何故か敗北感がよぎった。
「まだ何か言う事あるか?」
「無い。凄過ぎてなんにも言えないけど……でも、やっぱり妖一兄にはまも姐が似合うと思う!」
「何処から来んだその根拠は」
呆れ果てた視線を鈴音に送るが鈴音は怯まない。
「絶対に絶対にそうなの!」
「あーわかったわかった。じゃあな」
話しは終わったとばかりに視線をパソコンに戻し、しっしと犬でも追い払うように手でジェスチャーする蛭魔に鈴音は頭に血が登った。
「ムム…妖一兄の馬鹿!テストで0点とっちゃえ!」
大声で捨て台詞をはいた鈴音は乱暴にカバンをひっつかむとドアを叩きつけるように閉めて脱兎の如く帰って行った。
「んっなもん天地がひっくり返ってもとるか。ったく、けたたましい奴…」
ようやく静かになった部室で蛭魔は再び作業を再開した―――。
ガラリ
「まだ何かあんのか …って糞マネか」
「何?誰だと思ったの?」
「チッ。何でもねーよ」
部室に入って来たのは鈴音ではなくまもりだったと認識した蛭魔は短く舌打ちすると再びパソコンへと視線を戻した。
「テスト期間中くらい部活から離れたら?」
「てめえこそ何しに来たんだ?授業はとっくに終わってんだろうが」
「緊急の風紀委員会があったんです。誰かさんのおかげで!」
「ほーそれはそれはご苦労なこって」
「少しは行動慎まないと愛想つかされちゃうわよ?」
「あん?誰に?」
まもりの言葉に蛭魔は珍しくきょとんとした顔をした。
「誰にって……スーパーな彼女さんに」
「風紀委員が立ち聞きデスカ?」
「失礼ね。たまたま聞こえただけです」
ロッカーの中から荷物を探すまもりの手が徐々に乱暴なものになって行く。
「じゃあ何ですぐに入って来なかった?」
「え…それは…蛭魔君、鈴音ちゃんと話してたから邪魔しちゃ悪いかと思って…」
「嘘だ」
「嘘じゃないわよ!」
「あん?なにムキになってんだ?」
「え…だって嘘だって言うから」
「は?嘘だって言ったのはてめえのことじゃねえ。糞チアに言った話しが嘘だって言ってんだ」
「…え?嘘?」
蛭魔の言葉にまもりは鳩が豆鉄砲を食らったような顔になった。
「当たり前だ。この状況で遠恋してる暇なんざねえ」
「そ…そっか。あー、嘘だったんだ。なんだ、嘘だったんだ」
「…何あからさまにほっとした顔してんだよ?」
「え?ほっとした顔なんてしてないわよ?」
「してるじゃねえか。心持ち嬉しそうな顔まで」
ニヤニヤ笑う蛭魔にまもりの顔に朱が走る。
「な、嬉しそうな顔なんてしてません!何で私がそんな顔しなきゃいけないのよ」
「俺に彼女が居なかったから」
「えっ…」
「内心、ほっとして嬉しかったんだろ?」
「そんな事…」
「違うか?じゃあ何で糞チアと話してる時、すぐに部室に入って来なかった?」
「だからそれは…」
どもるまもりに蛭魔は追い討ちをかける。
「俺に彼女が居ると聞いた時どう思った?」
「どうって…」
「あの話しは嘘だとわかった時どう感じた?」
「……」
「白状したらどうだ?てめえは、俺のことが…」
「やめて!!」
「ジョークだ。すぐムキになんなって言ってんだろ」
「……蛭魔君はいっつも人をからかってばっかり」
「あん?」
「人を馬鹿にするのがそんなに楽しい!?」
「なに興奮してんだ?」
突然、激昂しだしたまもりの思いがけない反応に蛭魔は眉を微かにすがめた。
「蛭魔君は人の気持ちとか思いとかわかってるくせに無視するのよ。無視して土足でズカズカ人の心をふみにじるのよ!」
「いきなりなに怒りだすんだ?」
「うるさい!誰のせいよ!」
「誰のせいだ?」
「もういい!馬鹿!」
「ちょっと待てよ」
「離してよ!」
「お前、泣いてんのか?」
二の腕を掴んで引き戻したまもりの目に涙が浮かんでいるのに気付き蛭魔はまじまじとまもりの顔を眺めた。
「泣いてない!」
「ちょっと見せてみろよ」
そう言うや、蛭魔は顔を隠そうとするまもりの両手を掴んで泣き顔を露にした。
「嫌ッ!やめてよ!離して!」
「うわ。涙と鼻水でヒデェ顔だな」
ゲラゲラ笑いながらも蛭魔はまもりの腕を離さない。
「見ないでよ!」
「嫌だね」
「はぁ!?何でよ!」
「面白ぇから」
「はあ!?…ンッ…ふッ…な、な、な、何したのよ!?」
「わからねえか?キスだKiss。日本語では口付けとも接吻とも言う」
「それくらいわかるわよ!何でキスなんてするのよ!?」
「思わずキスしたくなるくらいの間抜け面だったから」
「なにそれ!?」
「てめえみてえに面白え使える女は居ねえからな」
「!!」
「面白えから付き合ってみるか?」
「面白い面白いって…それで付き合うってどうなのよ」
「てめえはつまらねぇ奴と付き合いたいのか?」
「そうじゃないけど…」
「余計な事はイラネ。今は付き合うか付き合わねぇかだけだ。どうすんだ?」
「……付き合いたい…です」
ちゃらりらら~♪
「ヤー!セナ、どうしたの?
試験できた?
私は地獄の真っ最中だよ」
お互い試験期間がズレていたため暫く簡単なメルのやり取りだけで会話していなかったので久しぶりに声が聞けて鈴音は嬉しくなってあれやこれや近況をセナに話した。
そして、一通り鈴音の話しが終わった時、その電撃ニュースはもたらされた。
「えっ!?まも姐と妖一兄って付き合うことになったの!えぇ!?どうして!?妖一兄って付き合ってる人が居たんじゃないの!?えっ?嘘?はぁ!?あれって嘘だったの!?やられたー!いや、そりゃ二人が付き合うのは嬉しいけど…
ねえ、二人が付き合いだした理由は?何か聞いた?…はあ?まも姐が面白いから?美人だとか優しいからとかじゃなくて?
なにそれ。まあ、妖一兄らしいっちゃらしいけど。
試験が終わったら速攻行って根掘りはほり聞き出さなきゃ!まも姐と妖一兄によく言っといてよね!じゃあね―!」
通話を終えた鈴音は小さくため息をついて気持ちを落ち着けてみたが朗報にどうしても顔のにまにまが止まらない。
「やー――――!!ヤッター!!よーし、頑張るゾー!!」
気合いを入れると鈴音は試験明けを楽しみに机へと向かった。
END
お粗末さまでした。
ラブラブな二人の話が読みたいなぁ~・・・。

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