HappyHalloween
「もう予定日、5日も過ぎちゃったのにな…」
カレンダーの花丸を見ながらまもりは小さくため息をついた。
「しょうがねえだろ」
新聞に目を通しながらまもりのいれたコーヒーを飲む蛭魔が興味無さげな相づちを入れる。
「それはそうなんだけど…」
「そん時になったら嫌でも出てくんだろ」
「この間の健診で3900か、下手したら4000有るかもって言われたのよ?臨月って加速度的に大きくなるのよ?
このままのんびり居座られたら…産む時、一体何千グラムになっちゃうか不安じゃない」
「こないだのNSTで『この子はまだ全く産まれる気が無いですね』って言われたんだろ?」
「そうなのよ!起こされてもすぐにグーグー寝ちゃうから三回もやり直ししたのよ!一体、誰に似たんだか…」
「てめえだろ?甘いもん貪り食った後のてめえにそっくりだ」
「一度寝ると決めたらテコでも起きない貴方に似たんじゃない?じらせて人を困らせる所なんてそっくり」
「俺はそんなに寝汚くねえ」
「はいはい。明日から11月かぁ…。10月産まれだと思ってたけど11月産まれになりそうね」
「どっちでも構わねえだろ」
「そうなのよね。どっちにしても蠍座なのよね。あ、でも、11月で良かったかもね?」
「何が?」
「だって、明日産まれたら11月1日産まれよ?ゾロ目だし、妖一の背番号で素敵じゃない?」
「それだったら11月11日目指したらどうだ?ポッキーの日なんててめえにピッタリで笑えんぞ?」
「笑いなんていりません!それに11日まで持たせるなんて無理です!」
「気合いだ気合い」
「予定日過ぎたら胎盤の機能が落ちてくるのよ?だから予定日大幅オーバーは赤ちゃんにとって危険なのよ。赤ちゃんが大きくなるから母体も大変になるし」
「じゃあ、もう今日産め。試合休みで都合が良い」
「弱い痛みはあるけど、陣痛って感じじゃないのよね。今日は無理かも」
「菓子を強奪し放題な日だぞって言やあ出て来んじゃねえか?てめえの子だけに」
「そうね。大手をふってイタズラ出来る日よって言えば飛びだして来るかもね?貴方の子だけに」
「全く、いつの間にこんなに減らず口が叩けるようになったんだか」
「高校の時からずっと隣に強烈なお手本がいましたからね」
「産まれそうにねえのか?」
「うーん。さっきより痛みが強くなった気がするけど…我慢できないって程の痛みじゃないから、まだみたい」
「んじゃ、ジム行って来る。何かあったら電話しろよ」
「うん。行ってらっしゃい」
玄関で蛭魔を見送ったまもりは、朝食の後片付けをする為にダイニングキッチンへと廊下を歩いて戻る。
臨月のお腹はぽっこり膨れているが、妊婦特有のペンギンのような歩き方をする事はなく、後ろ姿だけ見たら妊婦とはわからないくらいだ。
ダイニングキッチンへ向かう途中、バスルームの前でふと、洗濯物を干さなきゃねぇと思った瞬間、はたと思い出した。
そう言えば、昨日、蛭魔のバックから洗い物を出す時に、ジムの会員証を出した事を!
後で戻そうと思っていたのだが、そのまますっかり忘れてしまっていた。
バスルームの棚に置きっぱなしになっていたジムの会員証を掴むと慌てまもりは玄関を飛びだした。
そこにはまさにジムに向かう為に車を発信させようとしてる蛭魔の姿が!
会員証を掲げて思い切り大きな声でまもりは叫んだ。
「妖一!!…あ?…あァ?!」
パシャン
「どうした!?」
「………叫んだら破水しちゃった……」
「はぁ!?」
「びょ…病院行かなきゃ…」
「てめえはそこで待ってろ!」
そう言うや、蛭魔は病院に連絡し、まもりが前もってまとめていた入院の荷物と大量のバスタオルを持って帰って来た。
「車に乗れ!」
手早く後部座席にバスタオルを引きまもりを押し込んだ。
「洗濯物と洗い物が…」
「んっなもんやってる時じねえだろ!」
やって来た陣痛に苦しみながらもまもりは洗濯物と朝食の洗い物を気にしている。
まったくもってまもりらしい。
しかし、破水した場合、胎児が感染症にかかる場合があるので早く処置しなければならない上に急速にお産が進むので最悪、車内で出産なんて事になりかねない。
そうはわかっているが、気になるものは気になる。
本人も気付いていなかったが、実はまもりはまもりなりに突然やって来た破水と陣痛に軽くパニックになっていたのだ。
幸い、道も混んでおらず車はスムーズに病院へと到着することができた。
連絡していたおかげでまもりは即行で分娩室へと通される。
助産婦たちがあわただしく行きかう中、処置と出産準備の間、蛭魔は廊下へと出さされた。
助産婦達も全員、分娩室へと入り、蛭魔一人となった廊下は静まりかえっている。
分娩室のドアの横のソファーにどかりと腰をおろし、蛭魔は天井を見上げて大きなため息をついた。
なんだか一試合終えた気分だが、実際の闘いはここからだ。
とりあえず、廊下の隅の自販機でコーヒーでも買うかと立ち上がった時、自分の足元に気付いた。
ジムに行く為に着たスポーツウェアに革靴。
あまりにも間抜けだ。
落ち着いていたつもりだったが、どうやら自分も軽くパニくっていたらしい。
俺をパニくらせるとは、やってくれる。
間違いなく俺とアイツのガキだな。
蛭魔はふっと笑みを浮かべると、コーヒーを買う為に自販機へと向かった。
HappyEnd
結婚した後、まもりが蛭魔の事をどう呼ぶのかイマイチ考えが定まりません。
妖ちゃんとか?
うう~ん 思い描けない★
パパと呼ばせるのか?
お父さん?
父ちゃん?
お父様?
ダディ?
ダッド?
父上・・・・・
どう呼ばせると思います?
ハロウィンネタを考えた時、今回は何故か未来の結婚後のお話になりました★
そう言えば、去年は まもりさんが蛭魔さんと結婚する話だったからちょうど良かったかも?
楽しいハロウィンを!

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