HAPPY18
11月24日―――
世間は行楽シーズン真っ只中の3連休に浮かれているが、東京大会準決勝を前日に控えた泥門アメフト部には浮かれた所など一切なかったが、今日はまもりの誕生日と言う事もあり、部員たちの希望で練習後、ささやかながらまもりのお誕生日会が開催された。
スナック菓子とケーキに、ジュースで乾杯と言う本当に簡単な会ではあったが、みんなの心遣いがまもりはとても嬉しかった。
掃除を手伝うと言う部員たちを、明日は大事な試合だからゆっくり休んでくれと送り出したまもりは、いつもより散らかった部室を、いつも以上に念入りに片付けたので少し手間取ってしまった。
「こんなもんかしら?」
ピカピカになった部室を眺めて片付け忘れはないか確認するまもりに蛭魔は呆れた声を出した。
「てめえは自分の誕生日が終わるまで片付けする気か?」
「そんなにはかかりません!」
「どうデスカネェ?」
「そんなに言うなら蛭魔君が片付けを手伝ってくれれば良いじゃない」
「ヤなこった」
「じゃあそんなに文句言わないでよ」
「待たされるこっちの身にもなりやがれ。終わったんなら帰るぞ」
三年生になった蛭魔達は受験を控えた大事な時期ではあるが、相変わらず部活に参加している。
そして、遅くなった時、蛭魔がまもりを送るのも相変わらずだ。
そう言うや、鞄を持ちさっさと帰ろうとする蛭魔をまもりはあわてて止めた。
「ちょっと待って!もう少しだけ待って?みんなからのプレゼント包み直すから」
みんなからもらった様々な誕生日プレゼントをまもりは一つ一つ丁寧に再びラッピングし始めた。
「はあ?包装紙なんざゴミだろうが。わざわざ包み直してどうすんだ?包み直したのを誰かの誕生日に回すのか?」
「そんな事しません!帰ってもう一度開ける時、ラッピングが綺麗な方が嬉しいじゃない?」
「セコい奴」
「ほっといて下さい!だいたい蛭魔君から誕生日プレゼントもらってないんですけど?」
「うわ。てめえ、プレゼントの強要か?!ある意味、恐喝よりたち悪ぃぞ」
大袈裟な身振りで驚く蛭魔にまもりは急いで反論する。
「そ、そんなつもりじゃないわよ!」
「じゃあ要らねんだ?」
「う…くれるなら欲しいけど…」
まもりは思わずどもってしまう。
「やっぱり強要じゃねえか」
「でも、でも!物じゃなくて良いの」
「はぁ?」
「誕生日プレゼントに蛭魔君の秘密を1つちょうだい」
「俺の秘密?そりゃあ大層なモン欲しがるじゃねえか」
「くれる?」
「何が知りてえ?」「蛭魔君の重要機密」
「ほお。重要機密ねぇ?ま、良いだろう。特別大サービスで教えてやる」
「えっ!教えてくれるの?」
自分から言い出しておきながら、まもりはあっさり快諾した蛭魔に驚く。
どんな秘密が聞けるのか?
固唾を飲むまもりに蛭魔が言った秘密は――――
「俺の戸籍は日本だ」
「は?それだけ?」
「それだけって、戸籍が日本ってことは俺は悪魔でなく、宇宙人でもなく、地球人、しかも日本人だってことがわかっただろうが」
「…そりゃあそうだけど……」
「なんだ?不満か?」
「もうちょっとこー…」
「人の重要機密聞いておいて図々しいな」
「だって、重要機密って言ったら誕生日とか教えてくれるのかと…」
がっかりしているのがありありとわかる様子のまもりを気にかけることなく、蛭魔はあっさりと言い放つ。
「んっなもん知る事が出来る奴は婚姻届け書く奴だけだ」
「あ、じゃあ結婚する時には教えてもらえるんだ」
「………」
「ん?何?どうしたの?」
「結婚する気か?」
「は?…え、あ!?いや!そう言うワケじゃなくて!」
「ほー、じゃあ結婚しないんデスネ?」
「いや、その、そう言う意味じゃなくて…」
「こんなに愛しているのに愛しの糞マネは薄情デスネ~」
「!!?」
「もう1つの重要機密だ。蛭魔妖一が惚れた女は姉崎まもり」
「!!」
「重要機密を知った感想はいかがデスカ?」
「う…嬉しいです」
「ってことは、めでてえな」
「えっ?」
「彼氏居ない歴17年で終わりってこった」
「!!」
ニヤニヤ笑いながら蛭魔が言った台詞にまもりは真っ赤になる。
「っつーワケで、ホラよ」
「うわ?!何?」
突然、絶妙のコントロールで投げられた箱をまもりはわたわたとなんとか受け止めた。
「首輪」
「首輪って…ネックレスって言ってよ。」
「わかってんじゃねーか」
「もらっても良いの?」
「おう。糞彼女の誕生日デスからネェ」
蛭魔の言葉にまもりはいそいそと箱を開ける。
「綺麗…。あ、ありがとう。嬉しい…」
「そりゃあ良かった」
「つけても良い?」
「ドーゾ」
まもりの手からネックレスを奪うと、蛭魔みずからがまもりの首にネックレスをつけた。
「あ、ありがとう」
「似合ってんじゃん」
「本当?嬉しい。ありがとうね蛭魔君!」
心から嬉しそうなまもりに、蛭魔も自然と優しい笑みを浮かべた、が、それはほんの一瞬で、すぐにいつもの人の悪い笑みへと変わった。
「お礼は言葉より態度で示して欲しいですネェ?」
「えっ…」
「ま、初心者マークには荷が重いか?てめえは目を瞑るだけで構わねぇぞ?」
「…!」
そう言われ戸惑いを浮かべたまもりだったが、蛭魔に言われた通り素直に瞳を閉じた。
その姿に、思わず生唾を飲み込みそうになった蛭魔だが、そこは余裕な態度を崩す事はなく、顔を傾けゆっくりと近づきキスした。
ただただカカシのように立ち尽くすまもりの手を取ると自分の首へと回させて、自身もまもりを強く抱きしめる。
熱い抱擁とキスの中、まもりは身体中に好きと言う気持ちが溢れるのを感た_____________。
帰り道、初めて手を繋いで帰った。
俗に言う恋人繋ぎと言うやつで、蛭魔が嫌がらす繋いでくれた事が意外で嬉しかった。
布団に入る前、再び蛭魔にもらったネックレスをつけて鏡を覗いてみる。
胸元で輝く誕生日石はいくら眺めていても飽きない。
ついにやけてしまう顔を抑えながら、蛭魔の誕生日を早く知りたくなったのは秘密だ。
はずしてしまうのが惜しくてまもりはネックレスをつけたまま布団に入る。
17歳の時とは激変した18歳のスタートを感じながらまもりは瞳を閉じた―――。
終わり
甘くなってましたかね?
なるべく甘く~~~と思いながら書いたのですが・・・・。
こっちも玉砕かも★

PR