ふれて未来を
「凄いねぇ!船上パーティーなんて初めて!素敵ィ!!」
アコは辺りをキョロキョロと見回して興奮しきりだ。
「本当に凄いよねぇ。関東代表になったとは言え高校生が船上パーティーって…普通、アリエナイよ」
一方、咲蘭は呆れたように苦笑いを浮かべて周りに視線を向けている。
「さすが蛭魔だよねぇ」
「やることが違うよね」
ウンウンと頷きあう二人にまもりは困ったように笑うしかない。
「ビュッフェ形式だから何か食べ物取りに行く?」
「行く行く―!」
まもりの言葉にアコも咲蘭も盛り上がり、一同はいそいそとビュッフェコーナーへ向かった。
和食、洋食、イタリアンに中華と色とりどりの様々な料理が所狭しと並ぶ。
「あ!これ食べたーい!」
「これとこれと…あ!これも取っちゃお」
「どれもこれも美味しそ~!全部食べてみたいね」
キャピキャピと一通り回ってからようやく席についた。
「「「いただきま―す!」」」
声を揃えて食事の挨拶すると、三人は同時に料理を口にした。
「「「美味しい―!」」」
見た目通りの美味しさに三人の目が輝きだす。
「何これ!本当に美味しい~!」
「味付けが絶妙だよぉ!」
「どれを食べても美味しいわね」
美味しいものを食べ、三人の顔は幸せな表情になる――――。
美味しい料理に楽しいイベントの数々。
パーティーを心行くまで堪能した三人は、今は場所をラウンジで紅茶とデザートを楽しんでいた。
「楽しかった―!」
「本当にね」
「改めて、まも、関東大会優勝おめでとう!」
「次は全国制覇だね!」
「うん。ありがとう。後1つ、頑張らなきゃね」
「そういえば蛭魔の腕は大丈夫なの?折れたんでしょ?」
「うん…」
「折れた腕でロングパスなんて普通あり得ないよね」
「さすが蛭魔と言うか悪魔と言うか、ねぇ~」
「本人は問題無いって言ってるけど…クリスマスボウルまで治るかどうかギリギリって感じかな…」
まもりの顔が少し曇った事に気付いたアコが慌てて話題をかえた。
「あ、それにしてもさ!あれだよね。こんな豪華なパーティーに出席できるなんて、本当にまもと友達で良かったー!」
「うんうん。まも様々!まもの友達って言う役得だよね」
「役得だなんて」
「だって、まもが招待客の名簿に私達の名前入れてくれたんでしょ?」
「いいえ。このパーティーは私もここに来るまで知らなかったの。だから咲蘭とアコがいてびっくりしたの」
「そうなの?」
「私はてっきりまもが出席者名簿に私達を入れてくれたんだと思ってた。だって来てるのってアメフト部ゆかりの人達じゃない?それぞれメンバーが自分の呼びたい人を呼んでるんだと思ってた」
「私は名簿作って無いから…多分、蛭魔君が一人で手配したんだと思うわ」
「そうなんだ」
「一人でこれだけの人数とか色々手配するなんてさすが蛭魔…」
「さすがって言うより、ちょっと恐怖を感じるよ…」
「どうして?」
「だって、メンバーの縁の人達とその連絡先をきっちり把握してるんだよ?どんだけみんなの情報握ってんのよって思っちゃうじゃない?!」
「あ―…確かに…」
「でも、ま、蛭魔の中じゃ私達はまもの親友って位置付けになってるんなら、やっぱ嬉しいな」
「ウンウン」
「まも…」
今までの笑顔から一転、真面目な顔になったアコに、まもりは何を言われるのか身構える。
「まも。もし、あんたがさ、蛭魔のこと好きだって言うなら、私達は反対しないよ。応援する」
「えっ?…やだぁ、咲蘭ったら突然、真面目な顔してなに言いだすのよぉ」
「前は極悪非道、残虐無悲、血も涙も無い悪魔だと思ってたけどさ、まもがアメフト部でマネージャー始めて、アメフト部とか蛭魔の事とか色々知って、そうじゃないって分かったから」
「……」
「私達が蛭魔を理解したように、蛭魔もまものこと良く理解してくれてると思うんだよね」
「どうして?」
「大食い大会の企画考えたの蛭魔?」
「えっ?うん。多分、そうだと思う」
「やっぱりね」
「何がやっぱりなの?」
「いや、ほら、普通、誰もまさか栗田君に大食いで敵う人がいるなんて思わないじゃない?」
「ウンウン思わない。王城の大田原さんや、白秋の我王君ならともかく、まさかこんな可憐な女子が…って思うよ!みんな」
「だけど、蛭魔はまもりが優勝するって分かってたんだよ」
「え~?本当に?」
「だって優勝賞品、雁屋のシュークリーム券100個分とロケットベアグッズだよ?まるっきりまもの為のような賞品じゃない。それって、まもが優勝するって思ってたからじゃない?」
「あ!確かに!白秋の我王君ならともかく、まさかこんな可憐な女子が大食い大会で優勝するなんて思わないもんね。みんなかなりびっくりしてたもんね」
「って言うか、引いてたって言うかね~」
「あの食べっぷりは半端なく壮絶だったもんね!シュークリームは飲み物です!って位の勢いだったよね」
「まるで手品?!って感じに山盛りのシュークリームがするする飲み込まれてったよね~」
「だって、あの栗田君が汗流しながら必死に食べてるんだよ?!なのにまもったら涼しい顔なんだもん」
「シュークリームマニアは伊達じゃなかったね」
「恥ずかしい~…もー、言わないで~!あぁ…恥ずかしい…どうしよう…」
「大丈夫大丈夫!まもはいつでもどんな時でも美人さんだから問題無しよ!」
「だからさァ、普通は大食い大会でまもが優勝するなんて思いもしないわけじゃない?」
「うん」
「だけど蛭魔はわかっていた・・・それって・・・」
「そっか!」
「まもの事しっかり理解してるって事だと思ったわけよ」
「成る程!」
「…そ、そうかしら?」
「うん。見た目とかうわべとかじゃなくって本当にまもの事わかってるって気がするなぁ」
「そんな事は…」
しみじみと言う咲蘭にまもりは少し動揺する。
「まもの事しっかり把握してない限りあの優勝商品は有り得ないって」
「ヒューヒュー!もしかして蛭魔ってばまもにラブ~?!あ、でも、単にまもの度を越えたシュークリームマニアっぷりを知ってただけだったりして?」
「…それも有りかも…」
アコの言葉に笑いしながら返事を返す咲蘭に「それはヤメテ~」と、まもりは心底嫌そうな顔をした。
続く
続きはちょっとあくかもです・・・・。
早くUPできるよう頑張ります!

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