Sweet Winter 4
居酒屋に近づくにつれ、嫌な予感に、蛭魔の足取りは鈍くなる。
「蛭魔君!早く!部の一大事でしょ!」
持ち前の世話焼きモード全開状態のまもりに余計に足取りは鈍る。
ため息をつく蛭魔を急かしつつ居酒屋のドアをまもりがくぐった瞬間、幾つものクラッカーが鳴り響いた。
「姉崎さん お誕生日おめでとー!!」
思いがけない大合唱に迎えられて、まもりは目を丸くした。
「フー。騙してすまない。こうでも言わないと蛭魔は来ないと思ってね」
赤羽がたいして悪いと思っている風もなく謝って来た。
「まさか誕生日会をしてもらえるなんて思ってなかったからびっくりしたけど嬉しいわ。…でも、忙しい時期に気を使わせちゃってごめんなさい」
「姉崎さんの誕生日前後は試合やら何やらでお祝いやる余裕なかったからちょっと遅くなってしまったけどね」
謝るまもりにこちらこそ申し訳ないと大和がすまなそうに言う。
「19日に甲子園ボウル、それに勝ったら新年早々のライスボウルがあるからね。それが終わるまでもうゆっくり出来る時間なんて無いから。姉崎さんの誕生日会をダシにした息抜きの飲み会なんだよ。だから気にしなくて良いよ」
タカがすかさずフォローした。
12月5日の全日本大学選手権・西日本代表校決定戦で見事に勝利を決め、今は19日に開催される甲子園ボウルに向けて調整しているところだ。
甲子園ボウルでも見事勝利し、来年、1月3日に開催されるライスボウルへ出場する!
そして、優勝する!!
皆の思いは一丸となっていたが、そんな時でもひと時の休養は必要だ。
今回、参加しているメンバーは高校からの気心の知れた顔触れに10人ばかりのレギュラーを含めた大学からのチームメイトとマネージャー達だった。
次々に入れ替わり立ち替わりまもりに話しかけて来る奴等を横目に蛭魔はつまらなそうにつまみをつついていた。
「 糞。なんでこんなモンにまで胡瓜が入ってやがるんだ」
イライラしつつ箸で胡瓜を摘まむと器用に正面に座るまもりの取り皿へと投げ入れた。
「相変わらず胡瓜食えねえ偏食か」
蛭魔の隣の席に座っていた先輩を押し退けて、空いた席にドカリと阿含が腰をおろした。
「あん?キリギリスじゃあるまいし、胡瓜なんざ食わなくても死にゃしねぇ。それよりてめえがこんなチンケな飲み会に出るたぁどう言う風のふきまわしだ?」
「あの女はてめえ見てえなカスにはもったいねえから、悪魔にタブらかされる前に俺が助けてやろうと思ってな」
「ケッ、てめえはナンパ橋にでも立っとけ。似合いの女が釣れるぞ」
「カスが」
少しキレかけた阿含が自分の取り皿から椎茸を摘まみ蛭魔の取り皿へと投げると、すかさず蛭魔は箸で投げ返した。
「カスが何すんだ!」
「こっちの台詞だ糞ドレッド!そんな小せぇ椎茸くらい食いやがれ!」
「てめえだって胡瓜捨ててるじゃねぇか!」
周りは気が気ではない言い合いでも、本人達は結構楽しんでいる様だ。
まもりはそんな二人を目のはしに捉え、蛭魔が放り込んだ小さな胡瓜をしょうがないんだからと呆れつつ食べた。
to be Continued....
ハイ、こんだけです★
ふがいなくてスミマセン。
何故か蛭魔は胡瓜、阿含は椎茸が嫌いって設定になっちゃいました・・・。
蛭魔の学年はタカとかがいるので2年か3年かな?
時期としては勝手に12月5日の全日本大学選手権 西日本代表校決定戦が終わったくらいを設定しました。
19日の甲子園ボウルまでの短い期間の息抜きって事で★
日程は一応、今年と来年の実際の試合日程を使わせて頂きました。
蛭魔が4年だったら1月8日のえびすボウルもあるけど、番場がいるから違うものね。
こんなお話ですが 風龍凪さん よろしくお願いします~!