Sweet Winter Last
手際良く材料を切り、まもりはあっと言う間に鍋の準備を終わらせた。
テーブルの上にコンロをセットして鍋を火にかける。
二人分だけの鍋はすぐにコトコトと音をたて始めた。
すると、蛭魔がバックの中から何やら取り出した。
器の準備をしながら、まもりは蛭魔が何を取り出したのかチラリと横目で確認した瞬間、まもりの動きが止まった。
「蛭魔君!そんな怪し気な調味料お鍋に入れないでよ!?」
蛭魔の手元には見るからに怪しい存在感を放ついくつもの調味料が置かれていた。
中にはドクロマークが描かれている物まである。
死ぬ程辛いと言う事かしら?
どちらかと言うと辛い物が苦手なまもりは、それらの調味料を見ただけで口の中が辛くなった感じがした。
「キムチ鍋ったら辛いモンだろ。てめえ、まさかキムチ鍋にまで砂糖ぶっかけねえだろうなぁ?」
「そんな事しません!とにかく、ドクロマークのついているような調味料は自分の取り皿に入れて食べて下さい!」
「まったく糞生ぬるいモンばっか食ってるから、考えもいつまでたっても生っちょれんだよ」
蛭魔は数種類の激辛調味料をブレンドした調味料に具材を入れて、平気な顔でパクつく。
「そ、そのくらい私だって!」
蛭魔の言葉にカチンと来たまもりは、蛭魔の取り皿を奪うと一気に具材を口に頬張った。
「!☆£$*★¢!!」
とたんに口の中に広がる激痛!
熱さと容赦ない辛さに思わず涙が溢れる。
ムガムガと格闘した挙げ句、ようやく飲み込むことは出来たが喉がヒリヒリする。
「馬鹿がいる 馬鹿が!ケケケ」とこれまた容赦なく蛭魔はまもりをからかった。
しかし、手元のお茶を一気に飲み干し、うつむいたまま、まもりは反応を返さない。
「おい、言葉も出ねぇくらいヤラれやがったか?」
「………蛭魔君は…」
「あん?」
「蛭魔君は凄いわよね」
「はぁ?」
「何でも知ってて、何でも出来て、高校の時なんてたった三人からスタートした部を全国優勝まで導いたものね。そんな蛭魔君から見たら私なんて本当に糞マネ程度の存在でしょうね。蛭魔君には怖い物なんてないから私の気持ちなんてわからないのよ」
「てめえ、まだ酔ってんのか?それとも茶でも酔える特異体質か?」
「酔ってなんかいません!」
「酔っぱらいはそう言うんだよ」
「酔っぱらいじゃないもん!」
「てめえは十分酔っぱらいだ!下らねえ自分の考えにどっぷり酔ってんだよ!」
「!」
「寝言の次はよ迷い事か?腹減ってるからんっなつまんねぇ事グダグダ考えんだよ!食え!兎に角食え!文句が有るなら食ってからにしやがれ!おら」
山盛りにつがれた取り皿を受け取り、箸をつける。
キムチの効いた温かい具材が五臓六腑に染み渡り、いかに自分が空腹だったかを認識した。
その後は二人無言で鍋をつついた。
こんなハズじゃなかったのに…。
後片付けの洗い物をしながらまもりは小さくため息をつく。
洗い物が終わるのを見計らったように蛭魔が「帰る」と一言いうとさっさと玄関へ行ってしまった。
なんと声をかければ良いのか、言葉を見つけられないまま、蛭魔の後を追って玄関へと向かった。
「おい」
靴をはきおえた蛭魔がまもりに背を向けたまま声をかける。
「確かに全国優勝したが、それは俺、1人の力じゃねえ。糞デブや糞チビ、糞野郎共やてめえがいたからだ。怖いものがねえ?そんな人間は居ねえよ。怖かろうが辛かろうが立ち止まってる暇なんざねんだよ。てっぺん目指すからには有るモン抱えて突っ走るだけだ。おんなじ場所目指して一緒に走る奴がいるから強くなれる。打たれようが叩かれようが立ち上がれんだよ。泣くな!悩むな!立ち止まんな!欲しいモンが有るなら叫べ!掴み取れ!」
蛭魔の言葉にまもりは立ち尽くす。
「立ち止まった奴に用はねえ。俺は後ろは振り向かない。捨ててくだけだ。」
それだけ言うと蛭魔はドアの向こうへと消えた。
しばし立ち尽くしていたまもりはツッカケを履くと廊下へと飛び出し蛭魔を追いかけた。
「蛭魔君!」
エレベーターに乗り込んだ蛭魔の背中が見えて、まもりは無我夢中で閉まりかけのエレベーターに滑りこんだ。
少々驚いた表情の蛭魔を見たらなんだか肩の力が抜けた気がした。
ひとつ、大きく息を吐くとまもりは蛭魔の目をしっかり見つめて口を開いた。
「蛭魔君が好き!絶対、ライスボウル行こうね!」
とびきりの笑顔のまもりに一瞬、呆けたように見惚れた蛭魔は、すぐにいつもの自信に満ちた笑みを浮かべる。
「今年は絶対、優勝だ!」
「うん」
蛭魔はまもりをぎゅっと抱き寄せる。
「今はライスボウル優勝しか目に入らねぇ」
「うん」
「てめえにかまってる暇はねえ」
「うん」
「だが、ライスボウルで優勝したら…」
「うん」
「覚悟しとけよ」
「えっ」
蛭魔の胸に顔を埋め、大人しく抱きしめられていたまもりは、蛭魔の言葉に思わず顔を上げたその瞬間、唇が軽く重なった。
同時にエレベーターのドアが開き蛭魔が滑るように外へと降り立った。
「じゃあな」
それだけ言うとドアが閉まり、エレベーターは上昇を始めた。
降りる直前、素早く蛭魔がボタンを押していたからだ。
部屋の有る階に到着するやいなや廊下から道路を見下ろすが、そこにはやはり蛭魔の姿を見つけることは出来なかった。
とても蛭魔らしいと感じて胸の奥が暖かくなる。
「絶対優勝しようね」
そう呟くとまもりは軽い足取りで部屋へと帰って行った。
END
はい。
終わりました。
終わりです。
終わりなんです~。
締めを任されたので締めてみましたが・・・いかがでしたでしょうか?
なんだか ぬるいと云うか、無理やりと云うか・・・精進せねばです★
ウチの蛭魔は容赦がないです。
甘やかせてくれません。
ホラー映画の中のキャーキャー言うだけの女なんざ速攻で切り捨てるタイプです。
女の子的には ちょっと遠慮したいタイプよね・・・。
あ~、でも、私自身、単に優しい甘い男はウザイと感じるタイプなので どうしてもこんな蛭魔になっちゃの★
まもり・・・ごめんね~。
とりあえず、謝ってみよう★
そう云えば 23日はまもりの誕生日ですね!
お誕生日小説がまだ書きあげれてない~!
ヤバイっすね・・・。
しかし、体調が悪くて・・・・本日お休み★
家族の風邪がうつってしまったらしい・・・。
おなか調子が本当にヤバイっす。
布団にもぐってぽちぽち頑張ります~。