アイノコトバ
今日、私達は部を引退した。
正確には二年生の時に既に引退はしているのだけれど、三年生のこの時期まで後輩指導の為に部に顔を出していたが、それも今日で終わった。
これからは次の進路に進む為の準備をしなければならない。
暗い夜道を彼に家まで送ってもらうのは今日が最後。
彼と一緒に帰るのは今日が最後。
そう、最後。
ずっと彼に伝えたい言葉がある。
その言葉を伝えたら、もしかしたら最後は最初に変換されるかもしれない。
彼の事だから完膚なきまでに終わりを突き付けてくれる可能性も限りなく孕んでいるけれど・・・。
どうせ最後ならどちらに転ぼうとたいしたことない気がする。
そんな気分になるのは夜空に浮かぶ真ん丸なお月様のお陰?
その秀麗な姿を眺めていると、お月様も私の味方をしてくれていると思える。
私は軽く息を吸い込み、ずっと彼に伝えたかった言葉を口にする。
「蛭魔君、月が綺麗ですね。」
彼は眉を微かにあげ、ちらりと目だけで私を見た後、視線を月へと向けた。
「死んでも良い」
彼の言葉に一瞬、思考が停止する。
「蛭魔君、それって…」
ようやく口からでた私の声は少し上滑っていて変だ。
そんな私の様子を別段気にする風もなく彼は月を見たまま口を開く。
「くたばってしまえ」
胸が震える。
嬉しくて涙が出そうになる。
「…蛭魔君らしい言葉をありがとう。」
「てめえこそ。ま、あんな言葉でそんな喜べるのはてめえ位だなぁ」
「うん」
ぽろりとこぼれた涙をぬぐって顔をあげると彼の顔と重なった。
しばし後、チュッと小さな音を立てて離れた唇に再び涙が溢れる。
今度はぽろぽろ溢れて止まらない。
「おい、行くぞ」
「うん」
涙の止まらないまもりの手を引いて蛭魔は歩く。
「おい、いい加減泣き止め。俺が冤罪で通報される」
「うん…」
とぼとぼ歩くが次の角を曲がればすぐにまもりの家に到着だ。
「…蛭魔君…月がとっても青いから…」
「てめえ、年齢詐称してんだろう?」
蛭魔は呆れた顔をしながらも角は曲がらずまっすぐ進む。
月のお陰で、月のせいで…。
二人は月に見守られながらしばし二人きりの時を楽しんだ。
END
さて、問題です!
「月が綺麗ですね」と「死んでもいい」は同じ英文を夏目漱石と二葉亭四迷が訳した言葉です。
では、その英文は何でしょう!?
わかりましたか?
有名だからみんな知ってますかね★
答えは「I love you」ですv
夏目漱石は生徒に「月が綺麗ですねと云えばあなたの気持ちは伝わります」と訳して教えたそうです。
ソレで伝わるのって よほどの文学者だと思うのですが・・・。
私が言われたら「あ~ そうだね~ 満月だね」で終わること間違いなしです★
二葉亭四迷の「死んでもいい」も凄い超訳ですよね!
そこまで自由に超越して自己流解釈するのも楽しいかもv
・・・で、二葉亭四迷は、家族に絶縁される時、「くたばってしまえ!」と云われ、その言葉をもじって二葉亭四迷と云うペンネームにしたのです。
まもりに対する蛭魔の返事はそこから来てます。
そして、最後の 遠回り・・・・は このお話書いてる時、頭の中でおおたか静流さんの歌がぐるぐるしてて、その曲が凄い昔の曲のカバーだと思うのですが(タイトルわからない。そのまんまの「月がとっても青いから」かな?)
月がとっても蒼いから遠回りして帰ろう♪って歌詞なので それからきています★
おおたか静流さんは NHKの「にほんごであそぼ」でよく歌われてますねv
以前、レンタルしたアルバムが素敵だったのです!
・・・タイトル忘れましたが★
古い曲のカバーが沢山入ってるアルバム、オススメです♪

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