向かうのは・・・ ~Stay behind~ 後編
「蛭魔君、大丈夫?」
「あ~ちょっと飲み過ぎたな…」
「うちの母さん、お酒強いから…」
まもりは少しフラつい蛭魔に肩を貸して一緒に階段を上がる。
「将来、てめえがあんなになるってんなら付き合いを考え直さなきゃならねぇなぁ?」
「なりません!だいたい私、お酒弱いし…それに将来って…」
「とりあえず大学の4年は従順に働きやがれ糞マネ」
「…また、その呼び方なんだ…」
「その後は腐れ縁だ、しょうがねぇ。てめえの好きな呼び方で呼んでやる」
「えっ!本当?!まもちゃんとか!?」
「…そんな糞気味悪りぃ呼び方が良いのか?」
蛭魔が心底嫌そうな顔をする。
「た、例えばです!あ、蛭魔君、ここが客間よ。トイレの場所とかわかる?」
「おう、実印の在処まで分かってマスヨ」
「何でそんな物の在処まで分かるのよ?!」
「サア、何ででしょうネェ?」
ニヤニヤ笑う蛭魔にまもりは小さなため息をつくと話題をかえた。
「明日…じゃない、もう今日だし、後数時間後の事なんだけどね、セナ達とうちで朝御飯を食べて、その後、一緒に初詣に行く予定だからちゃんと起きてよ?」
「はぁ?何で糞チビ共と行かなきゃなんねんだ?初詣ならもう行っただろうが。行きたきゃ一人で行きやがれ!」
「え~、お願い!ねっ?一緒に行って!ねっ?ね?」
酔いの回った頭には寝不足も手伝ってまもりの潤んだ瞳でのお願いが事の他に効く。
クラクラする位だ。
蛭魔はこの場から逃れることに気が行ってしまい「分かった、分かった、じゃあな!」と生返事をして犬を追っ払うように手を振るとさっさと部屋に入りドアを閉めて布団へと倒れ込んだ。
蛭魔は何かの気配を感じて泥のような眠りから意識が急激に浮上した。
ぱちっと音がしそうな程、勢い良く開いた蛭魔の目の前には、驚きに目を見開いたまもりのドアップが有った。
「夜這いか?」
「ちっ、チガイます!起こしに来たんです!」
「それにしては顔が近すぎませんかネエ?」
「だって…それは…その…」
まもりの目はうろうろしており、言い訳を探しているのがありありとわかる。
「今、何時だ?」
「あ、そう!」
まもりが上からよけた事で蛭魔はようやく起き上がった。
「もうすぐ9時でね、セナ達が来るの。だから眠いだろうけど起きて準備してもらえる?」
「あ~…。」
眠る直前の約束を思い出し蛭魔は頭をガリガリかいた。
「風呂入れるか?」
「うん。大丈夫よ」
「おし、じゃあ風呂入って目覚ますか」
まもりと蛭魔は連れだって廊下へ出る。
「てめえ、さっき寝込み襲ってキスしようとしただろう?」
階段を降りている途中で声をかけられ、まもりの体が一瞬、緊張する。
「だから、あれは…」
階下に降りた所で後ろを振り返ったまもりの顔の前には蛭魔のドアップがあった。
「眠り王子は姫のキスで目覚めると思ったか?」
「うっ…」
あの時、まもりは眠っている蛭魔の無防備な顔に見惚れ、唐突にキスしたい衝動にかられて顔を近づけたのだった。
あの衝動を見透かされた事が恥ずかしくてまもりの顔は真っ赤になる。
「糞姫君のキスでも目は覚めるか試してみるか?」
蛭魔の台詞にまもりは固まり動けなくなる。
それを了解と取った蛭魔の顔が近づいて来て重なる瞬間、玄関のチャイムが鳴った。
その音に我にかえったまもりが蛭魔から飛び退いた。
後少しの所を邪魔された蛭魔は「糞!」と悪態をつくと超不機嫌な顔でドアを開けたのだった。
終わり
そして「向かうのは・・・ Funky monkey baby」に続きます♪
どうにかこうにかこじつけながらつなげれました!
いかがでしたでしょうか?
これにて「向かうのは・・・」シリーズ終了です!
お付き合い有難うございましたー!!
また、懲りずに次の小説書きますので よろしくお願いしますねv

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