SUITE 後編
「あら?何処に行ってるの?家と方向が違うけど?」
「あん?家だ。こっちで良いんだよ。」
しばらく車で走り到着したのは閑静な住宅街だった。
その中の一軒の駐車場に車を停めると蛭魔はさっさと家の方へ歩いて行く。
ガーデニングが素敵な広い庭の有る家だ。
まもりはキョロキョロしながら蛭魔を追った。
「おい、こっちだ!」
蛭魔が呼ぶ方へ向かうと蛭魔の横に背の高い女性が立っていた。
茶髪をベリーショートにした髪型は蛭魔とたいして背のかわらないスレンダーな女性によく似合っている。
「初めまして。ブレンダです。」
ニコリと笑う笑顔は知性を感じさせた。
「じゃあ、簡単に部屋の説明をさせて貰うわね。」
そう言うやいなやブレンダはモデルのようなウォーキングで部屋の説明をして回った。
「ねぇ、妖一、どう言う事?」
「今日から住むって話しだ」
「はぁ?!」
「ジェフが言わなかったか?部屋引き払うって?」
「言ったけどあれは別居とか離婚の話しじゃなかった?!」
「ま、住むか住まねぇかはてめえ次第だ」
「…。」
それだけ言うと蛭魔はブレンダと細かい打ち合わせを始めたのでまもりは窓から庭をぼんやりと眺めた。
窓が大きく明るく開放的な室内に手入れの行き届いた綺麗で広い庭。
芝生の上に寝転んでティータイムなんてやってみたいと憧れていた生活そのものでちょっとときめいてしまう。
ブレンダさんは不動産屋の人だったのね・・・。
ブレンダから鍵を受け取る蛭魔を眺めていると、あんなに激昂して疑っていた自分が恥ずかしくなってきた。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
まだ住んでもいない家に誰が?と疑問に思っていると、応対にでた蛭魔が女性を連れて戻って来た。
「初めまして奥様。ロザンナです。よろしくお願いします。料理でも掃除でも何でもお任せ下さいまし!」
屈託の無い笑顔でロザンナは丸太のような腕を出し握手を求めた。
「まもりです。よろしくお願いします。」
訳がわからないまままもりは握手をかわした。
「ロザンナは家政婦だ。家の事はロザンナに任せててめえはとりあえず安静にしときやがれ!」
「…はい。」
まもりは素直に頷くしかなかった。
「さすがだね!妖一兄!」
興奮気味に弾む声は電話の向こうで目をキラキラさせながら飛び跳ねる鈴音の姿を容易く想像させた。
「そう言う事だったの。私の勘違いで迷惑かけちゃってごめんなさいね」
「ううん!久しぶりにまも姐に会えて嬉しかったよ!またいつでも来てね!私も新居絶対遊びに行くから!」
「うん。ぜひ来てね。それじゃあ、またね。お休みなさい。」
静かに受話器を置くと小さなため息をついた。
部屋の中を見回す。
つい先日まで暮らしていた部屋とは全く違うが、ずっと暮らしていたようにしっくり来る。
蛭魔が自分の事を考えて用意してくれたんだと肌で感じる。
部屋と同様、自分も先日までとは違う。
でも、自然なことと感じれる。
「電話終わったのか?」
「うん。」
「ったく。だったら早く寝やがれ」
「うふふ」
「気が触れたか?気持ち悪い笑いしやがって」
「ん?いや、愛されてるなぁって思って」
「今頃気付きやがったか糞嫁」
蛭魔がニヤリと笑う。
「はい、気付きました。」
まもりはニコリと笑い返す。
「これからもよろしくね!」
「おう、せいぜい従順に働きやがれ」
「うん。」
「おら、寝るぞ」
「うん。…ねぇ、もしかして赤ちゃん、男の子か女の子かわかってる?」
「あん?んっなもんわかるか」
「楽しみだね」
「おう」
目まぐるしい1日が静かに幕を降ろす。
もう大丈夫。
不安な日は終わりを告げた。
新しい明日はすぐそこまで来ている。
まもりは幸せを噛みしめて蛭魔の隣で眠りについた。
END
ようやくENDマークつけれました!
眠いので寝ます!
私もゆっくり眠りにつきます。
隣に蛭魔はいませんが★←いたら怖いです。
もう少し内容のあるお話が書けたらな~・・・。
次回こそ!!
おやすみなさい~~~。

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