SUITE 前編
試合を終え、疲れきった身体を引き摺って家に帰った。
今日の試合はハードだった。
息もつかせぬシーソーゲームで観客共は盛り上がった事この上無いが、やっている当人達は2試合した程の疲弊を感じた。
ドサリと玄関に荷物を放り投げリビングへと向かう。
そこで蛭魔は違和感を感じた。
おかしい…。
気配がしねえ。
家の中は静まりかえり全く人がいる感じがしない。
今日、アイツが出かける予定は有ったか?
いや。
今日はこれと言ってなかったはずだ。
急に出かける用事ができたと連絡が有ったか?
今日、アイツからは電話もメールも一度も来なかった。
リビングに入るが、やはり誰も居ない。
リビングと一間続きになっているダイニングとキッチンを見回しても誰も居ない。
廊下に出て寝室とゲストルームを覗いてみたがやはり誰も居なかった。
居ないとわかりきっているが自分の書斎も覗いてはみたがやはり居なかった。
晩御飯の材料の買い忘れ等のちょっとした用事で出かける時はキッチンの冷蔵庫の扉に掲示板よろしく走り書きのメモがマグネットで止めてあったりするがそれもない。
どう言う事だ?
嫌な感じがしやがる…。
とりあえず、考えるのは風呂に入ってからだ。
スタジアムでざっとシャワーは浴びたものの、やはりゆっくり浸からなければ疲れが取れる気がしない。
蛭魔はバスルームへと向かった。
脱衣場で服を脱ぎかけた手が止まる。
「…糞嫁、実は年齢誤魔化してんじゃねぇのか?」
思わず呟く。
バスルームに有ったのはルージュの伝言だった。
三年連続ライスボウル優勝&MVP、そしてワールドユースでの実績を買われて蛭魔は大学卒業と同時に海を渡った。
所詮、アメフト後進国の日本。
日本での活躍が華々しかろうとも本場アメリカでの評価は低いものだった。
蛭魔が入団したチームも万年下位をうろうろしているチームだった。
それをなんとか上位に食い込むまでのチームに三年かけて育てた。
地区優勝は無理だろうが、ワイルドカードでのプレイオフ進出はかなり期待できる。
例え第6シードでプレイオフ進出だろうとスーパーボウルで優勝したと云うチームはないわけではない。
今年はそんな大事なシーズンだ。
しかも今は上位チームと試合が続く是が非でも敗けが許されない時期。
それが分からねぇ奴じゃねぇだろう?
一体、何年一緒に居るんだ?
…いや、わかった上での行動か。
糞!
面倒くせぇ…。
蛭魔は並々と湯をはった湯船に浸かると全身の力を抜いて目を閉じた。
アメリカに渡る直前、蛭魔とまもりは結婚した。
蛭魔は、せっかく小さい頃から夢だった教員免許がとれたのだから日本で数年 働き、気が向いた時にアメリカに来て一緒に暮らすなり結婚するなりすれば良いと言ったが、まもりはついて行くの一点張りで半ばまもりに押しきられる感じで二人は結婚と同時に渡米の運びとなった。
アメリカに来てからまもりは大学に編入し、今はスポーツ医学について学んでいる。
学業の傍ら、家の事、蛭魔の事、手を抜かずこなすまもりは今や蛭魔にとってなくてはならない、居るのが当然の存在になっていた。
何の不満が有ったんだ?
色々思い当たることはなきにしもあらずだ。
深いため息をつくと蛭魔は湯船から出て行動を開始した。
翌日
呼鈴の音にセナは玄関へと向かった。
玄関を開けるとそこにはいかにもインテリと言った感じの背広を着た男が立っていた。
「はじめまして。わたくしジェフリーと申します。蛭魔妖一様の弁護士をしております。今回は蛭魔様の依頼で代理人として此方にお邪魔させて頂きました。」
「蛭魔さんの代理人?」
「はい。こちらにいらっしゃる蛭魔様の奥様のまもり様に蛭魔様よりの伝言を伝える為に参上した次第です。まもり様はご在宅でしょうか?」
慇懃無礼に男は尋ねた。
セナも蛭魔同様、大学卒業と同時に渡米し、アメリカでの二年目を迎えた今年、シーズンが始まる前に大学時代から付き合っていた鈴音と結婚した。
セナが住む街は蛭魔の住む街とは離れており、所属チームもリーグが違うのでチャンピオンを決めるファイナルに進むまでは対戦することも無い為、アメリカで顔を合わすことはなかった。
「さすが蛭魔さん。こんな早くまも姉ちゃんの行き先割り出すなんてね…」
「あの代理人、妖兄の伝言預かって来たって言ってたけど伝言って何なんだろう?なんで妖兄が迎えに来ないのかなぁ?」
キッチンで紅茶の準備をしつつも、セナと鈴音はリビングにいるまもりと代理人と名乗る男の会話が気になって仕方ない。
紅茶の準備ができると鈴音は何食わぬ顔でリビングまで紅茶を運んだ。
対峙するようにソファーに座ったまもりと代理人の間に置かれたテーブルの上には様々な書類と小切手が置かれており、チラリと見ただけで鈴音は小切手に書かれた額に驚いた。
「すごっ!これって何!?」
「手切れ金ですって」
まもりが固い声で答える。
「手切れ金等とは聞こえが悪い。これは慰謝料の一部です。こちらが、まもり様と結婚してから蛭魔様が稼がれた資産の半額。そしてこちらが結婚してからまもり様が蛭魔様に尽くされた労働への対価。そしてこちらが当面の生活費、養育費、そしてこちらの書類が自宅マンションの名義変更の書類です。そしてこちらが…離婚届けです。既に署名捺印は済んでいます。まもり様の提出したい時に提出して構わないとの事です。」
一気に話した代理人の言葉に鈴音は驚いて言葉も出ない。
「あの人は他に何か言ってましたか?」
「自宅の方は本日中に引き払うのでいつ帰っても構わないとの事です。」
それだけ聞くとまもりはおもむろに立ち上がり部屋を出て行ってしまった。
「ま、まも姉?!」
まもりの尋常ではない様子に鈴音が慌てて後を追う。
まもりは自分に宛がわれた部屋に駆け込むと財布の入ったバッグを掴み家を飛び出した。
続く
久しぶりに未来のお話です♪
あ~・・・・・暗。
誰もこんな話読みたくないだろうに・・・・。
甘いの書くと言いながら こんなの書いてちゃ駄目じゃん★
書きたいことはわかってるんだけど、うまく表現する言葉がわからなくてもどかしい。
なんとかひねり出さねば!
いや~、でも 蛭魔さんのNFLで活躍する姿観た~い!!
私服姿も格好良いけど、やっぱユニフォーム姿が一番格好良いと思う!!
そして 試合してる時が一番格好良い!!
たまらんです~vv

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