St.Valentine'sDay
世界でいちばん君が好き
そんなチープな言葉と糞甘いにおいが立ち込めるこの季節
何よりも腹立たしいのは俺の糞嫁がこの季節が大好きな事
今日も今日とて甘いにおいが立ち込める我が家
あぁ…
ナンテスバラシイ
「おい…」
「なぁに?」
「いつ終わるんだ」
「う~ん…明日作れば終わりかな?」
「かれこれ3日も作り続けてるじゃねえか」
「だって~…」
だってもへったくれもない
総合すると5日間ずっと作り続けている
いちいち包装をきれいにしようとするから時間がかかるんだ
買え!
この匂いを我が家に入れないならばいくら金を出そうと惜しまない
大体、これだけつくりゃ原材料買う方が高くつく
俺は財布の中身を心配するようなことはしねえが、さすがに毎年これをされるとなると
心配せざるを得ない状況に陥るかもしれない
それだけは勘弁してほしい
〝 俺の糞嫁がチョコレート菓子を作るために原材料がいるんだ。
でも俺はもう金がない。頼む、貸してくれないか? 〟
こんなセリフを言う時が来るくらいなら、先に投身自殺して死んでやる
死んだってお断りだ
相変わらず何が楽しいのか…ひたすら何かの曲のメロディーを口ずさみながら手を
動かしている糞嫁
その顔は至福にあふれている
そんなに楽しいか
俺以外の男にやるチョコレート菓子を作るのが、
そんなにも楽しいか
俺は嫉妬に狂いそうだ
お前は俺に何をくれる?
「…なに拗ねてるのよ」
「拗ねてねぇ」
「拗ねてるじゃない」
「うざってぇぞ」
「もう…」
リビングにあるソファに深く身を沈め、テレビの電源を入れる
映し出されるのは糞チビの所属するチームとパンサーが所属するチームの試合
トップスピードで駆け抜ける野郎共
試合は拮抗しており、なかなか綺麗には進まない
これこそがアメフトの試合だ
熱くなって、相手の作戦の裏をかき、仲間と戦ってぶちのめす
「あ、セナたちの試合じゃない」
いつの間にか横に立っている糞嫁
手にはあの甘いゲテモノが入ったボウル
かき混ぜ続けなければいけない筈の手はいつの間にかお留守になっている
後で泣きを見るに違いない
「手、止マッテマスガ?」
「きゃっ!」
「やれやれ…」
「どう?セナたち勝ちそう?」
「さぁな。最後までわかんねえだろ」
「それもそうね」
パタパタと手にしていたボウルをキッチンにおいて、俺の横に身を沈める
俺はこいつの手を握り、久しく呼んでいない愛しい名を囁く
視線は絡み、心拍数が上がる
顔の距離が縮まる
いつもならそこで重なる筈が、そうはならなかった
「…おい」
「ねぇ妖一、賭けをしよう」
「賭け…?」
「うん。この試合、セナが勝ったら蛭魔君の勝ち、パンサー君が負けたら私の勝ちね」
「…で、何を賭けるんだ?」
「それぞれの体と心はどう?」
「いいだろう」
お前は本当に馬鹿だな
こんなお遊びが好きなのか?
俺は嫌いじゃないぜ
試合の結果は糞チビのチームの負け
「この賭け、どっちが勝ったでしょうか」
「さぁ…頭の悪い俺には見当もつかない難問だな」
「いけない子ね。補習をしなくちゃ」
「最後まできっちり教えてくれ、まもり先生さんよ」
「妖一君が落第しないようにきっちり教えてあげるわ」
簡単な言葉遊び
甘い一刻
ああ…
俺へ贈られたものはとてつもなく大きなチョコレートだな
ホワイトデーには何を与えてやろうか
こんなSt. Valentine's Dayならば
毎年でもきていいぜ
END
Happy St. Valentine's Day!
いけない子ねって!
いけない子ねってー!!
うきゃー!
なんでしょう!?
このそこはかとなく漂う色気!!
さすがです!
私のノー天気なバレンタイン小説とはえらい違いです★
このようなサプライズはいつでも大歓迎です!
またよろしくお願いしますね~~~vv
風龍凪さま 本当に有難うございました!!

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