青春REAL 6
タイムアウトをフルに使って細かな指示を出し結束を高める蛭魔チームとは対照的に、桜田チームの士気は下がりチームメイト同士、目を合わせようともしない険悪な空気が漂っていた。
蛭魔君、なんだか楽しそう―――
コートサイドでチームメイトに作戦を伝えている蛭魔はとてもイキイキして見える。
あんな個人主義の人なのに なんであんなに団体競技ができるのかしら?
団体競技のアメフトをやる蛭魔はすでに見馴れているので違和感は感じないが、バスケをやる蛭魔を見ていると不思議な気分がする。
そう言えば、あんな派手なクセにランニングの時でも試合なんかの時でも絶対に先頭には出ないのよね…。
以前、何かのテレビで『真のリーダーは決して先頭には立たない。隊の全体が見渡せる中央、もしくは最後尾に立つのが本当のリーダーだ』と言っていたのを思い出した。
蛭魔君は真のリーダー気質ってことかしら?
単にみんなを狙撃する為だけだったりして。
そんなことを考えてついクスリと笑ってしまった。
色んな噂が流れていることは知っている。
蛭魔本人に問い質すチャンスは何度もあったが結局、聞くことはなかった。
噂は気にならないと言えば嘘になるが、嘘どうこうよりも、ただ蛭魔に負けて欲しくないと言う気持ちが強い。
負ける蛭魔君を見たくない―――
わぁー!!
突然湧いた歓声にまもりは我にかえる。
コートでは既に試合が再開されており、蛭魔チームが点を入れた所だったようだ。
攻撃に備えてチームメイトに蛭魔が指示を出している。
その背中を見つめながらまもりは声を張り上げて蛭魔に声援を送った。
「あ、笑った…」
「はぁ?セナ、なんか言ったか?」
歓声でセナの呟きを聞きとれなかったモン太が聞き返して来た。
「いや、なんでもないよ」
「そうか?」
さして気にする様子もなくモン太は再び応援に戻った。
セナはこっそり再び視線をまもりに向けた。
セナの視線の先には友人達と一緒に声援に声援を送っているまもりがいる。
体育館中に響く声援で、セナの所まで蛭魔を応援するまもりの声は聞こえない。
それでも真剣に応援しているのは見ただけでわかる。
自分の所までは聞こえないがコートに立つ蛭魔には聞こえたのだろうか?
まもりが声援を送った瞬間、その声が届いたかのように蛭魔が笑ったように見えた。
自分がフィールドに立っている時、まもりはいつもベンチから声援を送ってくれている。
まもりはいつもあんな顔で応援してくれているんだろうか?
いつもは試合に一生懸命だからまもりの顔をまじまじと見る事はない。
だから応援するまもりを見た時、そんな疑問がふと浮かんだ。
いや、違う。
まもりのあんな顔は見た事がない。
自分を心配して見守っている時の視線とは全く違う。
信じている目だと思う。
何を?
「…もしかして、まもり姉ちゃんって―――」
そして、もしかしたら蛭魔さんも?ふいに脳裏に浮かんだ言葉にセナはしばし固まった。
続く
相変わらず短くてすみません★

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