青春REAL Last
体育館が割れんばかりの大歓声に包まれる中、逆転の3ポイントを決められた桜田がその場に崩れ落ちるようにへたりこんだその瞬間、試合終了のブザーが鳴った。
他のメンバーも呆然と勝利を喜ぶ蛭魔チームを眺めて立ち尽くしている。
へたりこんだまま立ち上がらない桜田の前に蛭魔が立った。
その顔は意地の悪い笑みを浮かべている。
「俺が負けたらどうするんでしたかねぇ?」
「……。」
思いもしなかった敗北に桜田は言葉が出ない。
「俺が勝ったらどうするかそう言えば決めてなかったなぁ」
自分を見下ろし顎に手を当てニヤニヤ笑う蛭魔に桜田は心底、血の気が引く。
「俺は今、すこぶる機嫌が良い。この俺に楯突いた勇気を称えて、てめえの願いを叶えてやろうじゃねぇか」
試合中の喧騒は何処へやら。
蛭魔が何を言うのか皆が固唾を飲んで見守っている体育館は静まりかえり蛭魔の声がよく通る。
「おい、糞マネ!」
突然呼ばれて驚いたが、慣れたものですぐにまもりは返事をかえした。
「こんな所でそんな呼び方しないで下さい!」
「てめえはクビだ」
「えっ?」
「アメフト部マネージャーはクビだ。糞風紀委員でも頑張りやがれ」
蛭魔の突然の言葉にまもりは動揺した。
「何言い出すのよ?!」
「もう糞チビの子守りは必要ねぇ。アメフト部に居る意味はねぇだろう」
確かに自分は蛭魔からセナを守る為にアメフト部のマネージャーになった。
最初はそうだったけれど…。
マネージャーとしてアメフト部や蛭魔と関わるうちにいつの間にか別の思いが自分の中に根付いていた事にあの時気付いた。
だから私は…。
「マネージャーもアメフト部の一員だって言ったのは蛭魔君でしょ! 磐戸戦でのあの選手紹介はそう言う事でしょ!」
「…だから?」
「私もアメフト部の一員です!みんなと一緒にクリスマスボウル目指すの!だから絶対マネージャーは辞めません!!」
蛭魔を挑むように見つめてまもりはきっぱりと言い切った。
「だ、そうだ」
呆然としたままの桜田に再び視線を戻して蛭魔は桜田にとどめをさす。
「糞姫は自ら奴隷志願だ。残念だったなぁ糞勇者」
「あぅあぅ…」
言葉も出ない桜田の姿は哀れを通り越して滑稽だ。
「余興は終わりだ!糞チビ、糞猿!ボケた面せずさっさと部活の準備しやがれ!」
「「はっ、はいぃっ!」」
蛭魔の怒声にセナとモン太は一目散に体育館を後にした。
「糞野郎ども!」
センターコートに仁王立ちした蛭魔は体育館にいる観客に向けて叫ぶ。
「てめえら全員、関東大会で泥門デビルバッツを会場に来て応援しやがれ!バスケ部!てめえらは部をあげてだ!わかったか!?」
「ははぁ~!」
桜田をはじめとするバスケ部の面々は印籠をかざされた悪代官のように一斉に床に伏せた。
「おい、糞マネ!てめえボケてねぇでさっさとしやがれ!」
「だからこんな所でその呼び名はやめてって言ってるでしょ!」
まもりの反論など一切無視で蛭魔はさっさと体育館から出て行ってしまった。
「も~、まったく!人の話全然聞かないんだからぁ!」
怒りながらもまもりの顔はどこか嬉しそうに見える。
「桜田君!あんな人の言う事なんて気にしなくて良いからね!」
まだコートにうずくまる桜田に声をかけると、クラスメイト達に断りを入れて体育館を後にした。
「まもってば嬉しそう…」
「桜田みじめ~」
「関東大会…応援行ってみようかな」
「なんか面白そうだよね」
観客の間から関東大会に興味を持った声があちらこちらで聞こえてくる。
その声は徐々に広がって行った。
「蛭魔君!」
先を歩いていた蛭魔に追い付いたまもりが声をかけるが、少しも歩調を緩めることなく蛭魔は歩き続ける。
「もう!本当に勝手なんだから」
「タラタラしてる時間なんざねんだよ」
「うん。絶対クリスマスボウル!だもんね」
「おう!無駄な事考えずにチャキチャキ働きやがれ」
「うん。じゃあ部室までダッシュね!」
言うやいなや走り出したまもりを、蛭魔は一瞬、笑みを浮かべると追いかけた。
END
え~っと・・・・
単にスリーポイントを決める蛭魔が観たいだけで書きだしたお話が 何故か磐戸戦でセナの正体にショックを受けたまもりのお話になっちゃった・・。
どこでこうなったんだか??
ウチの蛭魔が勝手に動き出すといつもこうだ・・・・。
今回も 出番少ないクセに予定外な台詞を色々吐いてくれました★
お風呂でぼ~~っとしてると頭の中で勝手に話が進んじゃって、「そんな台詞言うの?どうする気??」って 頭の中の蛭魔さんに質問しちゃいます。
無視されるけど・・・・。
・・・・・アホですね★
ここまでたらたらとしたお話にお付き合い有難うございましたー!

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