情熱Sympathy
「えー今日の議題は泥門高校の風紀及び校則違反者に対する対応と対策、そして処罰に関してです。何か意見のある人は挙手をお願いします」
入学式から早数か月。
新入生も学園生活にすっかり馴染んだ頃、まもりも風紀委員に馴染んでいた。
泥門高校は偏差値こそそう高くないものの、学校自体は荒れことなく、どちらかと言うとローカルなのんびりとした雰囲気を醸し出していた。
そんなのどかな学園に響く銃声がここ最近の風紀委員の頭痛の種であり、本日の議題の本丸だった。
「一年の蛭魔の最近の振る舞いは目に余るものがあります!何か対策を立てるべきではないでしょうか!」
挙手した二年の風紀委員の1人が立ち上がり声を荒げた。
その言葉に賛同の野次が飛び委員会のテンションは一気に盛り上がったが、次の委員長の発言で水を打った様に静まりかえってしまった。
「では一年の蛭魔への対応を話し合いたいと思います。何か良い案のある人はいますか?」
それぞれ隣をチロチロと伺い牽制し合うだけでむなしく時間だけが過ぎる。
情けないことに文句は有るが本人に意見は怖くて出来ないと言うのが風紀委員会はじめ、泥門高校の現状だった。
「あの…」と別の二年の風紀委員がおずおずと手を挙げた。
「とりあえず 風紀を乱したってことで一週間の部活停止なんてどうでしょう?」
彼の意見に「生ぬるい!」「それでどうにかなるとは思えない」等、牽制し合っていた時とは打ってかわって活発に批判の意見が出る中、委員長はなにやらしばし考えた後、「他に意見はありませんか?無いようなので風紀委員会として今回は部活動停止の処分を蛭魔に下す為、学校に許可の申請をしたいと思います。」と宣言した。
委員長の鶴の一声で決まった議決にパチパチといくぶん納得のいっていない拍手でもって本日の委員会は解散となった。
翌日の昼休み、まもりをはじめとする一年生の風紀委員会に招集がかかった。
まもりたち一年が到着した時、部屋には風紀委員長と風紀委員担当の教師がすでに来ていた。
「昨日、提出された案件についてですが、校長をはじめ先生方全員で協議した結果、処分やむ無しと言う事になり許可が下りました。つきましては、蛭魔への部活動活動禁止の通知を君たち一年生に責任を持って行って貰いたい」
「ひっ!」
「お、俺達がですか?!」
「そ…そんな…」
まもり以外の一年生は恐怖に顔をひきつらせた。
委員長から渡された処分内容の書かれた用紙に目を通し、まもりは眉をひそめた。
「処分の期間が2週間は長くないですか?」
「停学処分なら長いかもしれないが 部活動禁止なだけだから2週間は妥当だと思いますよ」
ニコリと微笑む委員長に一抹の違和感を感じたがすでに決まった処分なので まもりにとやかく言う権限は無い。
「布施君、大丈夫かね?相手はあの蛭魔君だよ?逆恨みで風紀委員が報復とかされたら…」
それまで黙っていた先生が控え目に口を挟んだ。
「大丈夫ですよ。報復されるような事があればそれを理由に奴を退学に追い込めば良いし、アメフト部を廃部にする大義名分にもなる。かりに黙って処分を受け入れたとしても他の生徒達に示しがつく。どう転ぼうと痛手を受けるのは我々より奴ですよ」
そう言って眼鏡を指先で直しつつ嫌な笑みを浮かべる委員長を見てまもりは先程の微笑みよりこちらの笑みの方がこの人の本質に近いような気がした。
誰が猫に鈴をつけるか…
蛭魔へ処分を言い渡す責任を押し付けられた一年生達は青ざめるばかりだった。
そんな皆の姿を見兼ねたまもりが役を買って出た。
「大丈夫?」
「本当に良いの?」
「相手はあの蛭魔だよ?」
心配しつつも誰も代わりはかって出ない。
それほど蛭魔が怖いのだ。
処分の内容は些か納得が行かないけれど、皆の怯える姿を見ていると やはり一度きちんと蛭魔に考えてもらわなければと言う気持ちが強くなって来た。
こんなに皆に怖がられるなんて悲しいじゃない…。
まもりはHR終了後に申し渡す決意を固めた。
まもりのクラスのHRは大抵、学年で一番早く終わる。
今日もいつも通りアッサリ終了した。
まもりは一番に教室を飛び出すと早足で蛭魔のクラスへ向かった。
まもりが蛭魔のクラスに到着するとちょうどHRを終えて教師が出て来た所だった。
教室を覗くと蛭魔はまだいた。
愛用のパソコンを仕舞い、部活に向かおうと立ち上がり、栗田に何か話しかけている。
とても楽しそうな顔してる。
一瞬、萎えそうになった気持ちを奮い起たせまもりは教室の中へ一歩を踏み出した。
続く
こんな所で続きます。
イキナリのオリキャラ・風紀委員長の布施くん。
イメージは「ブリーチ」の愛染さんです。
あそこまで大物ではなく、布施くんはしょせん小物ですけどね★
しかし、毎回タイトルを悩みます。
どんな話だったっけ?と書いた文章を読み返してみたけど 全くタイトルが浮かばず参りました。
素敵なタイトル・・・・何かないかな~・・・。

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