君の音 7
依子が選んだ演奏曲は意外にも慣れ親しんだクラシックではなかった。
疑問に思ったまもりに依子は「普通の高校生ってあまりクラッシックに馴染みが無いでしょ?それどころかクラッシックって聞いただけで難しいとか苦手とか退屈って引いちゃうじゃない?この音楽祭が私が留学前に日本で弾く最後になると思う。だからみんなに楽しんで欲しいし、私の思いを感じて欲しいの。この曲はゲームだかアニメの曲らしいんだけど素敵な曲だし、クラッシックより聞きやすいだろうし、メッセージも伝わりやすいんじゃないかと思ってね。」そう言って微笑んだ。
依子がこの演奏に色んな想いを込めている事をまもりは肌で感じていた。
そんな依子と共に演奏できなかった事は残念だけど、依子にはかえってこの方が良かったのかもしれない。
依子ちゃん、頑張ってね!
まもりは心の中で声援を送った。
「プログラムNo.27、『鳥の詩』演奏は佐々木依子さんと、姉崎まもりさんに代わりまして蛭魔妖一君です。」
プログラムが読み上げられた後、演奏者の変更が伝えられた。
演奏者の変更を聞いた会場のざわめきは演奏者が位置についても一向に止む気配は無い。
それどころか 誰が言ったかバレないだろうと高をくくった愚か者が野次を飛ばし出し とても演奏を始められる状態ではなかった。
まもりは怒りのままに立ち上がり、注意しようと口を開いたとたん、壇上のピアノが凄い音を立てた。
会場が音に驚き動きを止める中、蛭魔は鮮やかにピアノを奏でる。
曲は『リスト 超絶技巧練習曲第8番八短調「狩り』
迫力な演奏に立ち上がって野次を飛ばしていた連中もおとなしく席に座る。
まさに蛭魔に狩られたようだ。
壇上の蛭魔と目があい、ニヤリと笑われたことで自分がまだ突っ立っていた事に気付きまもりは慌て着席した。
訪れた静寂の中、ついに演奏が始まった。
最初はピアノだけで始まり、途中からバイオリンが入る。
最初はどこか切なさを感じさせたメロディーが徐々に広がりを持ち、希望へと向かう。
二人の演奏の息はぴたりと合っていて とても数時間前に初めて合わせたとは思えない。
二人のレベルの高さが素人でもわかる程 本当に素晴らしい演奏だった。
会場中がコトリとも音を立てず聞き入っている。
まもりは目頭が熱くなるのを感じた。
演奏が終わった時、会場は一瞬の静寂の後、割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
演奏が終わった…。
依子は暫し放心状態になっていた。
演奏中、今までの緊張が嘘のように心は静かだった。
ただただ純粋に身体中で蛭魔の音を感じていた。
欲しい所で欲しい音が来る気持ちの良さに、見えていなくても蛭魔の指の動きがわかる気がする。
いや、指の動きだけでなく、蛭魔の想いも伝わってくる、そんな感覚を味わった。
体の奥底から歓喜が沸き上がり心が震える。
終わる。
もうすぐ演奏が終わってしまう…。
ずっとこのまま弾いていたいのに…。
喜びと切なさのこもった音色に誰もが酔いしれた。
放心状態の依子の肩を叩き、蛭魔が観客への挨拶を促す。
依子は我にかえり慌ててペコリと頭を下げた。
続く
私、アニメはあまり見ないし、ゲームもやらないんで、この「鳥の詩」がどう言う アニメ?ゲーム?作品の音楽なのか全く知りません。
知らないのに使っちゃって申し訳ない~~~。
いや、単に綺麗な曲だな~って思っちゃって・・・ははは。
依子もきっと私、レベルの認識です。
すいません。
蛭魔がピアノを演奏するシーンを書き始めて気付きました。
私は 単にピアノを弾く蛭魔さんのお話が書きたかっただけで、蛭魔がピアノ演奏するシーンを書きたいわけじゃなかったんだ!!って★
今回、書いてて切に思いました。
とっとと終わらせねばっ!!!
顔を見ずとも、言葉を交わさなくとも通じる時の あの気持ち良さ!
それが未熟者故 全然表現できずガックリ。
精進します!!

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