Bottoms up! 5
藤間は気遣いも会話もスマートで、お酒も勧め上手だった。
まもりは勧められるままシャンパン・カクテルに続いてリキュールベースのゴールデン・キャデラックと、口当たりの良いラムベースのスコーピオンと、三杯のカクテルを飲み干した。
「姉崎さんってお酒強いんだね」
「そんな事ないの。あんまり強くないから普段は飲まないようにしているのよ」
「いやいや、その飲みっぷりは飲める人の飲み方だよ」
「そんな事ないって」
すっかりほろ酔いで気分がハイになっているまもりは藤間に心を許し、うちとけていた。
「藤間君って楽しい~!」
些細なことでも笑うまもりは紛れもない笑い上戸だった。
「みんなが王子様とか言うから勝手なイメージでもっと物静かな人だと思ってたわ」
「どんなイメージ持たれてるんだろ?怖いなぁ。」
「大丈夫!なんたって王子様だもの!」
「だからそれが怖いんだって」
藤間は少し苦笑いを浮かべる。
「姉崎さんも僕と同じじゃない?勝手なイメージつけられるタイプ」
「…。」
「見た目だけで人の事ろくに知りもしないで勝手なイメージ押し付けて、イメージと違うと「そんな人だと思わなかった」なんて好きな事言うんだよね。」
「…。」
まもりは空のグラスについた水滴が流れるのを見つめる。
「私は…私自身が固定概念に捕らわれてた…。」
まもりの脳裏に浮かぶのは、やはり蛭魔だった。
蛭魔と言う男は何に対しても容赦がない。
口から出る言葉と言えば出任せと張ったりばかりで信用できない。
でも、その瞳が、背中が、汗が、痛い程真実を語る。
そして、突き付ける。
本当の自分を…。
誰も誤魔化す事は許されない。
気がついた時には自分と言う存在を思い知らされて、痛い。
でも、だから彼は誰よりもあるがままのどんな自分をも受け入れてくれると言う確信があった。
そのおかげで自分は自由になれたと思う。
これからも蛭魔の傍らに居れるものだと疑いもしなかったのに…。
しんみりしてしまったまもりに藤間は明るい声をかけた。
「酔っぱらって言わせて貰うと、最京大学の学生は緊急事態の場合を除いては酔っぱらわせて女の子をどうこうしようなんて事は絶対しないんだ。だけど姉崎さん、君は緊急事態なんだ」
「えっ?」
「蛭魔と何かあったの?」
「えっ…、なんで?」
「表情が暗くなる度に思い浮かべてるのは蛭魔の事でしょ?」
「そ…そんな事は…」
図星をさされ頬に朱が走る。
「そんな事ない?」
「うっ…。」
咄嗟に言葉に詰まった。
「でも、もう本当に関係無いの。だって、私、フラれちゃったんだもの…」
「別れたの?」
下を向いたまま、まもりはコクリと頷いた。
続く
藤間くん 頑張ってくれ!
もうチョット続きます。

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