DENPAJAC
4時間目終了を知らせるチャイムに、静寂に包まれていた学校は喧騒を取り戻した。
ようやく訪れたお楽しみの時間を泥門生達はいつものように思い思いの場所で昼食をとり始める。
スピーカーからはこれまたいつもと同じ昼食の時間に花を添えるお昼の放送の始まりを告げる音楽が流れて来た。
ただ、いつもと違ったのは、始まりの音楽が終わった瞬間、耳をつんざく雄叫びがスピーカーから学校中に響き渡ったこと…。
「YA―――HA――――!男ならアメフト部に入りヤガレ!!」
「もう!蛭魔君!勝手に騒いじゃダメでしょ!?全く~。おとなしく座っといて下さい!すみません。始めて下さい」
「あぁ、はい、ありがとうございます。えーあー…今日も始まりました『お昼の音楽の時間』!本日はゲストをお二方お招きしております。年末に行われた高校アメフトリーグ決勝の“クリスマスボウル”にて見事全国優勝を果たしたアメフト部キャプテンの蛭魔妖一君と、マネージャー兼主務の姉崎まもりさんです!」
「よろしくお願いします」
「全国優勝おめでとうございます。クリスマスボウルの劇的な勝利、感動しました。創部二年目で全国優勝は凄いですね」
「ありがとうございます。先生方や泥門のみんなの応援のおかげです。暖かい声援のおかげで最後まで頑張ることが出来ました」
「ケッ。糞優等生の模範回答してんじゃねえよ。誰のおかげでもねえ、優勝掴んだのは自分の力でだ」
「もう!蛭魔君は黙っといて下さい!」
「えっと―…次のコーナーに進んでも良いでしょうか…?」
おずおずとDJ役の放送部員が聞いてきた。
「あ、すみません。どうぞ」
「えっと、では、お二人が出演して下さるにあたって生徒の皆さんに募集したお二人への質問に答えていただく質問コーナーに移らせて頂きます」
蛭魔を気にしていあるのがありありとわかるDJの声に、聞いている泥門生は同情を禁じえない。
「では…『アーハー!デビルバッツで一番格好良かったのはジェントルマン瀧でしょう!』」
「どこが質問だ?」
「……えっと~タイトエンドで瀧君は大活躍してくれて…」
「単なる馬鹿。馬鹿とアゴヒゲは使いようだ」
「そんなヒド…」
「では次の質問。『あの時の写真、ばら蒔かないですよね?』『些細な過ちをいつまでも苛めるのはカンベンして下さい』『奴隷作りますから許してください』……同様の意見、多数です…」
「せいぜい従順に働きヤガレ!ケーッケッケ!」
「………。」
「蛭魔君は本当にもう黙っといて」
「えーと、では次の質問に行かせていただきます。姉崎さんに来ている質問をまとめてぶつけたいと思います!まず、ズバリ好みのタイプは!?好きな人はいますか!?付き合ってる人はいますか!?付き合ってくれませんか!?スリーサイズ教えて!!以上、同意見多数。いかがでしょう?姉崎さん」
「えっ?えっ?えー…ねぇ、ちょっと、蛭魔くん」
「しゃべるなつったのはどこのどなた様でしたかネェ?」
「だって…」
「しょうがねぇナァ。代わりに質問に答えてやる。まず好みのタイプは世話の焼ける糞野郎だ」
「そんなわけないでしょ!誠実な人です!」
「好きな野郎は不明だが、付き合ってる奴はいねえ。男日照り17年の筋金入りだ」
「筋金入りって何!?変なこと言わないでよ!」
「違うのか?」
「うっ…」
「最新のスリーサイズはバスト…」
「キャーキャーキャー!なんで蛭魔くんが知ってんのよ!?」
「さぁ、なんででしょうネェ?」
「言わないで!絶対言っちゃダメ―!!」
「あーわかったわかったわかったから引っ付くな」
「絶対言っちゃ駄目だからね!」
「わかったって言ってるだろうが」
「もう!どこからそんな情報仕入れるのよ…」
「で?どうすんだ?」
「え?何が?」
「姉崎」
「!? えぇ!?ど、ど、ど、どうしたの!?えっ!?何事!?」
「姉崎」
「ちょ、ちょっと蛭魔君、ふざけないでよ」
「姉崎」
「何なの!?やめてってば!何でそんな真剣な顔してんの!?ちょっと本当にやめてよ…」
「姉崎、俺は真剣だ」
「蛭魔君が真剣なんて何か有りそうで怖いんだけど!?」
「姉崎、俺の話しを聞け!」
「…な、なに?」
「一度しか言わねえ。ちゃんと聞けよ」
「…うん」
「姉崎、お前が好きだ」
「は?え?…えぇーっ!?」
「一年の時から好きだった。俺と付き合ってくれ」
「……本気…なの?」
「あぁ」
「だって…突然そんなこと言われても私…」
「返事は?」
「でも…」
「俺はお前の事が好きだ。お前は?」
「え…だって…」
「答えてくれ」
「………好き…よ」
「っつ―訳で、『好きな人はいますか?』の答えは俺でしたー!」
「はいぃ!?ひ、ひ、蛭魔君!?冗談だったの!?」
「あん?」
「今までの全部冗談だったの!?」
「本気にした私が馬鹿みたい…」
「え、えーと…あのぉ…放送中なんですが…」
「訂正だ。姉崎まもりの好きな男は蛭魔妖一。付き合ってる男も蛭魔妖一だ!!っつー訳で、姉崎に横恋慕してる奴は潔く諦めヤガレ!!YA――――HA―――――!!」
校内じゅうに蛭魔の高笑いが響きわたる。
あまりの衝撃の大きさにその日の泥門は午後、授業にならなかったと言う――――。
終わり
毎度のことながらタイトルを考えてなくて・・・
本当に思いつかない!

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