sigh
「ねぇねぇ姉崎さん」
「はい?」
三年生になっても相変わらず続いている朝練を終え、教室に入り自分の席についた途端、クラスメイトの数人の女子が声をかけて来た。
「ねぇ、福山君に告白されたって本当!?」
「告白断ったって本当?!」
「なんで断ったの?!」
「福山君って言ったらミスター泥門だよ?!」
「あんな格好良い人に告白されたのに断るなんて信じられない!」
「……なんで断ったこと知ってるの?」
「やだぁ!福山君は親衛隊やファンクラブがあるくらい人気なのよ?」
「彼の一挙手一投足、鵜の目鷹の目で見てる子 多いんだからその位の情報筒抜けよぉ」
まもりは思わず絶句してしまう。
別になんて事はない、「付き合って下さい」「ごめんなさい」程度の会話だったとは言え、あの現場を誰かに覗き見されていたんだと思うとなんだか気分がゲンナリしてくる。
「ねぇねぇ、なんで断ったの?」
「もったいないよぉ~」
「ねぇー」
「私、ほら、あんまり福山君の事 知らないから…」
「えー!知らなくてもあれだけ格好良い人だったら即OKでしょう!」
「だよね~」
「私だったら即行付き合っちゃう!」
「もったいないないよ。あんなに格好良いのに」
「うんうん、姉崎さんと福山君なら美男美女で絶対お似合いだって!」
「今からでも付き合っちゃいなよ!」
「そーそー、絶対お似合いだから!」
口々に発せられる言葉に正直まもりは辟易する。
「うーん…私、本当に福山君の事よく知らないし、みんなが言う程 格好良いとも思わないの。ほら、こう言うのって好みの違いがあるじゃない?ね?」
まもりの言葉に女子達は驚きの声をあげた。
「えー!福山君を格好良いと思わないの?!」
「…整った顔だとは思うけど…」
女子達のあまりの驚きっぷりにまもりは思わず引いてしまう。
「ケケケ!こいつの美術の成績知ってんだろうが。こいつの描く似顔絵みてぇに見えてんなら大抵の奴は不細工に見えんだろ」
突然現れた蛭魔に女子達は固まり、そして思い出した。
先日の席替えでまもりの席の後が蛭魔の席になった事を…。
「ひどっ!誰もあんな風には見えてません!」
「どうだか?見えてねぇなら何であんなひでぇ絵になんだぁ?」
「絵を描くのが苦手なだけです!」
「大体、あんな糞熊と糞甘ぇもんが好きって時点でてめえのセンスは狂ってんだよ!」
「ロケットベアが好きなのも、スイーツが好きなのも女の子なら普通です!」
「てめえ、自分を普通の枠組みに入れようなんざおこがましいぞ?」
「おこがましいって何?!私は普通です!おかしくないです!」
そう言ってにらみ合いが始まったとたん
「あっ…」
まもりは何か思い当たる事があったらしく黙りこんでしまった。
「どうしたの姉崎さん?」
「大丈夫?」
「蛭魔君あんまりだよ…まもが姉崎さんが可哀想」
それまで固まっていた女子がまもりの異変に気付き声をかけた。
まもりは「大丈夫…」とだけ言って深いため息をついた。
「本当に大丈夫?」
「保健室行く?」
「少し休んだ方が良いよ?」
「有り難う。本当に大丈夫よ。ただ、ちょっと思い当たる事があってショック受けちゃったって言うか…」
「ショック?」
「うん。自分のセンスはやっぱりおかしいのかなぁって…」
「いい加減認めやがれ!てめえは変なんだよ!」
「…そうかも…」
そう言って再び深いため息をつく。
「みんなが格好良いって言う福山君はそんな格好良いって思わないのに、みんなに嫌われてる蛭魔君はたまに格好良いって思っちゃうんだもん…。やっぱりこれって、私のセンスが人と違って変だからなのよね…?変って事よね…」
盛大な溜め息を連発するまもりにかける言葉を女子達は持っていなかった。
「やっぱり私って変なんだぁ…」
ひとり落ち込むまもりに、蛭魔は「糞っ!」と悪態をついた。
END
えぇ~と いかがだったでしょうか?
私の話にしては珍しく 蛭魔さんがまもりにやられてるお話です★
ミスター泥門の福山君は 某俳優で歌手のあの方です。
友達とか妹とか 凄く格好良い!って言うけど、私は好みではないので 整った顔してるとは思うけどどうとも思わないのですよね。
まあ、そんな所からできたお話でした★
お粗末さまでした。

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