春になったら
短い秋が過ぎさり、すっかり冬の気配が深って寒い日が続くようになったが、今日は寒さの中休みの様な暖かい陽射しが泥門高校の屋上に降り注いでいた。
「蛭魔君。起きて!こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
「別に寝てねぇよ」
「いくら今日は暖かいって言ってももう冬よ?屋上で日向ぼっこしながらお昼寝は風邪ひく元よ」
「だから寝てねぇ」
返事は返すが、蛭魔は起き上がることもなければ目を開けることすらせずに寝転がったままだ。
「どっちにしても屋上でごろ寝なんてしちゃ駄目よ」
「余計なお世話だ。それに、んっなヤワじゃねえよ」
「まだなんだって?」
「あん?」
いきなり変わった話題に意味がわからず蛭魔は片目だけ開けてまもりを見た。
「進路希望書の提出」
「………」
「先生に頼まれちゃった。『蛭魔から進路希望書を取って来てくれ』って」
「フン」
興味を無くしたように蛭魔は再び目をつむってしまった。
「もう書けた?」
「いや…」
「もしかして、まだ進路決めて無いの?」
「………」
「珍しいね」
「あん?」
「蛭魔君が進路決めて無いなんて。いつでも ずっと未来まで決めてそうなのに」
「……ケッ」
「武蔵君。進学せずにお家の跡継ぐんだってね」
「……糞ジジイにはお似合いだろ」
「栗田君は炎魔大に決めたって言ってた」
「あの糞デブは決めたんじゃなくて、そこしか行けねえの間違いだろ」
「蛭魔君は?アメフト続けるんでしょ?」
「たりめーだ」
「炎魔大に行くの?」
「行かねー」
「えっ、蛭魔君は炎魔大じゃないの?」
いつの間にか目を開けて空を眺めていた蛭魔の顔を、まもりは驚きのあまりまじまじと見つめてしまった。
「糞デブが言ったんだよ武蔵を置いて自分達だけが同じ大学には行けない。それなら三國志が良いってな」
「そっか…。優しい栗田君らしいね」
「………」
「…で?」
「あん?」
まだ何かあるのかと言うような面倒くさそうな視線をむけたがまもりは全く気にしない。
「蛭魔君はセンチメンタルになっていつもの無駄なくらい回転の速い頭脳が冴えずに考えあぐねてるの?」
「…バーカ」
「ずっと着いて来てた子が居なくなるって寂しいよね…」
しみじみと呟くまもりに、蛭魔は心底嫌そうな顔をする。
「糞過保護のテメエと一緒にすんな」
「寂しいクセに」
「うるせー。テメエ、用がねえならあっち行きやがれ」
「用は有るわ。進路希望書もらわないと。先生に頼まれたんだもの。とっくに提出期限過ぎてるんだから。願書出せなくて浪人になっちゃうよ?」
「チッ」
「はい。用紙とボールペン。どうぞ」
「……」
しぶしぶ起き上がると蛭魔はまもりから用紙とペンを受け取り名前を書き始めた。
「ねぇ」
「あん?」
「一緒の大学行ってあげようか?」
「あァ?」
「そしたら寂しくないでしょ?」
「別に寂しくねえつってんだろうが」
「だって……私が寂しいし」
「……」
「ね?一緒の大学に行きましょ」
にこやかに《姉崎まもり》と、名前しか書かれていない進路希望用紙をかざして驚きの提案をするまもりに蛭魔は言葉が出ない。
「大学でもマネージャーやってあげるから。ね?」
「…吠え面かくなよ?」
「何それ。大丈夫!私は使える女なんでしょ?蛭魔君が大学でもレギュラー取れるようサポートしてあげるから安心して」
「フン」
蛭魔は自分の進路希望用紙にさっさと記入を済ませると、まもりの進路希望用紙もひったくり、勝手になにやら書き込んだ。
あまりの早業にまもりは蛭魔がなんと書いたのか読む事が出来ない。
「あ、蛭魔君!勝手に私の進路希望書かかないでよ!」
「ケケケ、これで一蓮托生だ。馬車馬の如く働けよ!」
「あ、ちょっと蛭魔君!大学どこって書いたの!?教えてよ!」
晴天の空に悪魔の笑い声が響き、天使の怒った声がこだまする。
この関係は大学に進んでもかわりそうにない――――――。
終わり
うう~ん どうも文章がまとめられない★
いや、まあ、いつもなんだけど・・・・。
まもりは今まで背あしていた対象がセナから蛭魔になり
蛭魔は今まで一緒にいたのが栗田&武蔵から まもりになり・・・。
しみじみと良いラストでしたよね~v
原作はやっぱ良いよねvv
やっぱりタイトルが思いつかず、とりあえず『春』って使いたかったので もうこれでいいや~~って・・・・。
素敵なタイトルを考えたいものです。

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