光の射す方へ
「やー!まも姐、何読んでるの?」
まもりが真剣な顔で何を見ているのか気になり、鈴音はまもりの手元を覗きこんだ。
「アンケート結果?何のアンケート?」
興味深々で覗きこんでくる鈴音にまもりは見ていた冊子を渡した。
「あぁ、この間の王城戦の会場で月刊アメフト主宰でやってたアンケートの結果が出たんだ。色んなアンケート取ってたんだね~。なになに…」
真剣な表情で鈴音はアンケート結果に目を通して行く。
「“どっちが勝つと思う!?”王城59%かぁ。まあ、しょうがないよね。まさかアノ王城に泥門が勝つなんて!って、驚いた人多かっただろうね」
ニンマリと鈴音が笑みを浮かべる。
「“今日のMVPを予想して!”は良いとこついてるよね!次は…“泥門に弱点があるとすれば、どこ?”………弱点……。『馬鹿が多すぎる』と『瀧が馬鹿すぎる』の馬鹿って理由で42%占めてるってどうよ……。馬鹿兄貴が馬鹿なのがみんなに知れ渡ってるってことじゃない!恥ずかしいー!!」
「まあまあ、落ち着いて。ね?」
なだめるまもりに鈴音は深いため息をつく。
「まあ、泥門は頭良い組と馬鹿組がはっきり別れすぎだよね…。妖一兄も「馬鹿多すぎ」って言ってたしね。しょうがないけど…それにしても『瀧が馬鹿すぎる』が21%って…」
本当に嫌そうな顔をしてアンケートを見ていた鈴音だが、ある事に気付き一気に復活した。
「ヤー!まも姐まも姐!『姉崎さんもチアをやるべきだ8%だってー!」
先程までの落ち込みは何処へやらキャイキャイと盛り上がる。
「まも姐がチアやったら観客増えるんじゃないかなぁ~。モン太なんて鼻血出しながら頑張るかも~!」
「いや、鈴音ちゃん?私は試合中、サインとか出さなきゃいけないから…ね?」
一人、妄想の世界に入っている鈴音をなんとか連れ戻そうと声をかけてみるが、鈴音は悦に入ってなかなか戻って来てはくれない。
「そうなんだよね~。絶対、盛り上がるのに!ファン増えるのに!妖一兄が許してくれないよねぇ…」
「そんなファンとか出来ないから…鈴音ちゃん?」
「まもりは俺だけを見てれば良いんだ!とか妖一兄ってば思ってたりしてぇ~!?ヤー!!」
「…鈴音ちゃん、アリエナイから…」
一人芝居で盛り上がる鈴音にまもりはついて行けずただ見守るしかなかった。
暫く一人芝居を楽しんだ鈴音は興奮冷めやらぬ様子で次の質問に目をやった。
「ヤー!“彼氏にするならどの選手?”やっぱり桜庭さんはさすがダントツだね!これはしょうがないよね。あっ!二位は文字しゃんなんだぁ。スッゴク意外なような納得なような。でも、文字しゃん格好良いからやっぱ納得だね!ねぇ、このアンケートに答えてるサンゾーってアノ神龍寺のだよね?桜庭ファンクラブ席に座ってたから桜庭しゃんのファンなんだろうと思ってたんだけど、文字しゃんも好みだったんだ~」
「えっ?いたの?」
「うん。居たよ~。応援旗振ってる桜庭しゃんのマネージャーさんの後ろ辺りに座ってたよ」
「そうなんだ…」
「うん。途中から雲水しゃんのとこに行ったけど。それにしても、文字しゃんはこっち方面の人にもモテるんだ~。ウププ…あぁっ!?まも姐まも姐!!妖一兄が5位でランクインしてるよっ!!」
「そうなのよ。驚きでしょ?!」
このアンケート結果に驚いていたまもりが話しに乗って来た。
「本当に、蛭魔君に入れた恐ろしい人は誰かしら…」
「ヤー!気になる?気になるゥ?」
「鈴音ちゃん……何で頭のアンテナ立ってるの…?」
目を輝かせて身を乗り出して来る鈴音にまもりは思わず引いてしまう。
「ヤー!妖一兄やるじゃん!高見しゃんには負けちゃってるけど健闘だよね!」
「本当、意外としか言えないわよね」
「えー、妖一兄格好良いよ~。試合中、どんな状況でも冷静に分析してみんなをしっかり引っ張ってるとことか本当に格好良いモン」
「試合中はでしょ?蛭魔君の本性知らないから蛭魔君なんかに投票したのよ」
「そんな事ないよー。妖一兄、背もそれなりに高いし、スタイル良いし、顔だってふざけてなきゃ凄い整ってると思うよ」
「まあ、見た目はねぇ…」
「妖一兄は見た目だけの男じゃないよ!口先だけじゃない、行動力だってあるし、悪魔とか言われて恐れられてるけど本当はとっても優しいよ!みんなそれが分かってるんだよ。じゃないとこんな厳しい練習について行くはずないもん!」
「でも、アノ蛭魔君よ?普通は投票しないんじゃないかしら」
「そんな事ないよ!妖一兄に投票するなんて男見る目がある人だよ!」
「鈴音ちゃん…」
さっきまでの盛り上がりとは打ってかわって鈴音の顔は泣き出しそうなくらい真剣だ。
「…まも姐は本当に妖一兄の事……ひどい人だと思ってるの?」
鈴音の真剣な眼差しに言葉が詰まる。
「それは……私は…」
「いつまでサボるつもりだ糞マネ!練習は再開してんだ、とっとと準備しやがれ!」
部室のドアを蹴破る勢いで開けた蛭魔が二人の様子になどお構い無しで怒鳴りつける。
「そんな怒鳴らないでよ!もう。鈴音ちゃんごめんね。練習だから…」
「ううん。私こそ勝手に盛り上がっちゃってごめんね。まも姐」
「糞マネ!とっととしやがれ!」
「ハイハイ!分かってます!」
「ハイは一回だろうが!」
「もう、うるさいんだから!あの投票は絶対勘違いよ!」
「あん?」
グラウンドへ走って行くまもりを蛭魔は何の事だかわからないと言った顔で見送る。
残っている鈴音に目をやると肩を竦めて苦笑いしていた。
片付けを終えて部室に戻ると、既にみんな帰った後で、部室には蛭魔しか残っていなかった。
その蛭魔は珍しくパソコンをいじっておらず、何かを読んでいるようだった。
蛭魔の手元を確認したまもりは「あっ」と声を出してしまった。
蛭魔が読んでいたのが例のアンケート結果が載っている冊子だったからだ。
「なんだ、テメーのか」
つまらなそうに蛭魔は冊子をまもりへと放り投げて返して来た。
「読んだ?」
「わざわざアンケート取るほどのモンじゃねぇな」
興味なさそうな顔で答えた蛭魔はいつものようにパソコン画面を開いた。
「糞チアともめてたのはソレか」
「別にもめてた訳じゃないわ」
「ほー。ま、そんなモン、もめる価値もねえからな」
「……ねぇ」
冊子に視線を落としたまもりが話しかけてきた。
「あん?」
「嬉しい?」
「何が?」
「3%の女の子が蛭魔君を選んでたでしょ」
蛭魔はまもりが何を言いたいのか計りかね、パソコンから視線をまもりへと移したが、当のまもりは冊子に視線を落としたままで、その表情を伺うことは出来ない。
「ソレがどうした?」
「バレンタインのチョコでも何十個も貰うより、3個位の方が本命っぽいじゃない?」
「なんだァ?その理論は」
突拍子もないまもりの理論に蛭魔は呆れた顔をした。
「この子達って蛭魔君が本命だったらどうする?」
「あァ?そんなモン、どうもしねー」
「スッゴク可愛い子だったらどうするの?」
「あん?労働力として使えねえ女に用はねえ」
きっぱりと言い切った蛭魔に、まもりは思わず顔を上げて視線を向けた。
「……蛭魔君って、本当に掛け値なしのアメフト馬鹿よね」
呆れたようにも、感心している様にも見える顔をしてまもりは呟いた。
「今、必要なのはクリスマスボウル目指す奴だけなんだよ」
言い切った蛭魔の視線の輝きは強い。
それが蛭魔の本心なんだと素直に思える。
「そうよね。今は何よりもクリスマスボウルよね」
「当たり前だ。分かったらとっとと働きヤガレ!」
「うん」
なんでかはわからないが、モヤモヤした霧が一気に晴れたような気がする。
「うん。そうよね!頑張らないとね!」
いきなり元気になったまもりに蛭魔は訳がわからないと呆れた目を向けるが、まもりはお構いなしだ。
「絶対、クリスマスボウル行かなきゃね!」
「当たり前だ」
まもりの言葉に蛭魔もニヤリと笑う。
あのアンケートを読んでから、ずっと付きまとっていたモヤモヤが消えた。
その理由はまだ朧気でよくわからないけれど、今はそれで良いんだと思える。
絶対クリスマスボウル!
まずはその約束を果たして、全てはそれから―――――。
END
・・・・・ははははは・・・・・ 乾いた笑いがでますね。
いや~、私のお話ってなんでこう・・・・。
あ、でも、今回のお話は原作に沿ったものにしたら 絶対、付き合ってないであろう時だから どうしてもこんな感じになっちゃいますよね。←言い訳!!
なんか色々言い訳した方が良いのかもしれないけど・・・
まあ、やめときます。
悪あがきな気がするから★
鈴音がみんなの事をどう呼ぶかわからなかったので 呼び方はテキトーになっちゃってます。
ちゃんと確認すれば良いんだけど・・・時間がないので~~~。
間違いに気づいたら おいおい直しますね。
ちなみに
桜庭のマネージャーさんが応援旗振ってる後ろのファンクラブ席に座ってるの サンゾーですよね?
女の子の中に一人 丸ハゲ★
おひまでしたら 単行本で探してみてくださいv
・・・って、そんな事 みんな気付いてるか★

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