re start
「お疲れ様でした―!」
「今まで有り難うございました―!!」
お祝いのケーキを感極まった栗田が一人で食べると言うハプニングがあったものの、アメフト部の部室で開催された最上級生の送別会はそれ以外、たいした混乱もなく終了した。
後片付けはやると言うセナ達の申し出を断り、いつもと同じようにまもりはみんなが帰った後の片付けをしていた。
まもりが片付けをしている後ろで悠々とブラックコーヒーを飲みながら蛭魔がパソコンをいじっているのもいつもと同じ。
しかし、このいつもと同じ光景も今日が最後だと思うと、寂しさが込み上げて来る。
心から有り難うと言う気持ちが湧いて来て、まもりはいつもより念入りに隅々まで部室を綺麗に磨きあげたので少々、帰る予定時間を過ぎてしまった。
「蛭魔君、コーヒー飲み終わった?飲み終わったなら洗うから貸して」
「おー」
残りを一気に飲み干した蛭魔はいつものようにコーヒーカップをまもりに差し出した。
そんな蛭魔のいつもと変わらない姿に本当にこれが最後だと言う思いが強くなった。
鼻の奥がつんとして、慌てて流しへと踵を返した。
「やっぱり最後だと思うとなんだか寂しくなっちゃうわね」
コーヒーカップを洗いながら、なんともないような振りをしてまもりは蛭魔に話しかけた。
「ケケケ。見上げた奴隷根性だな」
「もう、すぐ茶化す!蛭魔君だって寂しいでしょ?」
「別にぃ。いつまでも感傷に浸るほどヒマじゃねんだよ」
「素直じゃないんだから。本当に可愛くない」
「可愛くてたまるか」
「確かに」
クスクスと笑いながらまもりは全ての片付けを終えた。
「…終わっちゃった」
「お――ご苦労さん」
「過ぎてみればあっという間だったね」
「時間なんざいくらあっても足りねんだよ」
「本当にね。でも、マネージャーをやったおかげでとっても充実した時間を体験できたわ」
「そりゃあ何より」
「蛭魔君。お疲れ様」
「おー。てめえもな。今日で奴隷は解放だ。後は好きにしやがれ」
「奴隷解放?」
「おー」
「…好きにして良いの?」
「おー」
「……じゃあ……マネージャーする」
「あぁ?」
「大学でも蛭魔君の居るアメフト部でマネージャーする!」
「奴隷は解放って言ってやってんだろうが」
「そうよ?私の好きにして良いんでしょ?だから私の好きにするの。高校のマネージャーは蛭魔君って言う悪魔からセナを守る為だったけど、大学のマネージャーは自分の為にするの。良いでしょ?」
「物好き」
「…かも」
「てめえの見上げた奴隷根性に敬意を表してこれをやる」
「何?……予定表?……さっきパソコンで打ってたのこれだったの?」
「おー、俺の予定は狂った事がねえからな」
予定表と書かれた紙には これからのまもりの進路が書かれていた。
「……蛭魔君の思惑通りに動いたみたいでちょっとムカつく気もするけど……そうそう蛭魔君の思い通りには行かないんだから覚悟しといてよね!」
「おー、せいぜい頑張って下サイ」
「ムカつく~~!」
「ケケケケケケ」
姉崎まもり 希望進路は最京大学アメフト部マネージャーです――――。
END
精進します~~~~。

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