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未来になる
「お誕生日おめでとー!」
パーン!
パパン!
乾いたクラッカーの音が夜空に鳴り響く。
今日は栗田の誕生日、そして、七夕だ。
部活終了後、ささやかながら栗田の誕生日会を開催することになったのだが、新入部員を含めた全員で部室の中で誕生日会をやるのは到底無理だし、せっかく綺麗に晴れ渡った夜空が見えているのだからと言う事で、部室前にシートをひいたり椅子を置いたりして野外でのお誕生日会となった。
「ありがとう~嬉しいなぁ」
栗田は感激仕切りで巨大なバースデーケーキを二本のフォークで突き刺して1人でパクつき、他のメンバーも山盛り用意されたおにぎりやら惣菜やら菓子やらをそれぞれパクついていた。
たまに吹く風が気持ち良い。
栗田が裏庭にはえていたからと持って来てくれた竹には部員の短冊が沢山吊るされていて、風が吹くたび、そよいでカサカサと音をたてた。
色とりどりの短冊には『身長が伸びますように』『ボンキュッボーンのセクシーダイナマイトになれますように』『漫画家になる』『赤点とりませんように』様々な願い事が書かれている。
『絶対、ライスボウル』と書かれた栗田の短冊をまもりはぼんやりと眺めた。
―――蛭魔君、結局、短冊書かなかったな…。
短冊は一応、全員に配ったのだが、蛭魔だけは「神だのみなんざ趣味じゃねえ」と一蹴。
短冊を書くことはなかった。
一方、まもりは短冊にどんな願い事を書くか悩みに悩んだ。
色々悩んだ挙げ句、無難に『大学に合格しますように』と書いた。
そこでまもりは小さなため息をついた。
まもりの小さい頃からの夢と言ったら保育士か小学校の先生だった。
だから短冊にはいつも『保育士になれますように』『小学校の先生になれますように』のどちらかを書いていた。
今年もそう書くつもりだった。
書こうとペンを持った時、蛭魔の顔が浮かんだ。
蛭魔の進路をまもりは知らない。
大学行くのかな?
就職するのかな?
それとも専門学校?
一番、大学進学の可能性が高いと思う。
けれど、進学するのは日本の大学なのかアメリカの大学なのか可能性は五分五分でわからない。
別に付き合ってるわけでも、何か約束をしてるわけでもない。
蛭魔がどんな道に進もうと自由だし、それはまもりも同じだ。
だけど、自分の中に蛭魔と離れ難い想いがひっそりと息づいていることに気付いてしまった。
自分の夢は蛭魔との道を別つものかもしれない。
そう思ったら無邪気に夢を書けなくなった。
今まで目指していた夢なのに、こんな簡単に揺らぐなんて……。
セナを守らなければと言う思いがいとも容易く間違いだったと気付かされた時の感覚に似ていて、自分はどうすれば良いのかわからなくなった。
風にくるくると回る自分の短冊に再びまもりはため息をついた。
誕生日会は盛大な打ち上げ花火で幕を閉じた。
片付けを終え、まもりはようやく一息ついた。
最後は私一人で大丈夫だからとみんな帰した。
今、この学校にいるのはきっと、焼却炉の前で星を眺めている自分と、部室でパソコンをいじっている二人だけだ。
都心から少し離れていると言っても夜空に見える星は寂しい。
あそこならもう少しは見えるかも?
ゴミ箱をその場に残したまま、まもりは歩きだした。
重い鉄の扉を開けると、目の前には暗い水をたたえたプールがあった。
「この学校の警備ってどうなってるのかしら?」
校舎の出入り口も、プールの扉も鍵はかかっておらずすんなり侵入できた。
プールサイドに腰掛けて素足をプールへと浸す。
プールサイドは涼しく、水は冷たくて、モヤモヤした気持ちが少しずつすっきりしてくる感じがする。
しばらくまもりはぼーと夜空を眺めた。
どれくらいたったのだろう。
静寂はけたたましい犬の鳴き声で終わりを告げた。
振り返るとそこにはケルベロスと、なんだか黒いオーラをまとった蛭魔が立っていた。
「糞マネ。てめえ職場放棄して水遊びたぁ優雅ですネェ?」
口調のトゲトゲしさから、かなりの怒りを感じる。
「あっ!ごめんなさい!」
まもりは自分の失態に気付いた。
ゴミ捨てに行ったままかえらず、気になって焼却炉を見に行ったらゴミ箱だけがある……。
そりゃあ驚くし焦るよね…。
何とも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「何、悩んでんだか知らねぇが、ウジウジする位なら動きやがれ!てめえみてえなのが悩んだ所で同じ所を馬鹿の一つ覚えみてぇにぐるぐる回るのが落ちだ」
「ひどっ!断言?!」
「違うってぇのか!?」
仁王立ちでまもりを見下ろすその目には有無を言わせぬ迫力がある。
「うっ…違いません…すみません」
もう謝るしか術はない。
「で?何しょうもない事悩んでんだ?」
「悩み事までしょうもないと決めつけ…」
「違うのか?」
「うーん…しょうもないと言われればそうかもしれないけど…」
「言ってみやがれ」
「…何を?」
「糞マネ。今、なんの話しをしてたかもわからなくなった程ボケたか」
「いや、だって、蛭魔君が相談に乗ってくれるなんて天変地異が起きそうで…」
「てめえ…。気が変わった。やっぱりてめえはプールの底にでも沈んどきやがれ」
そう言うと蛭魔は踵をかえした。
「……蛭魔君って進路はどうするの?」
蛭魔の背中にまもりは静かに問いかけた。
「あん?」
まもりの問いかけに蛭魔の足が止まる。
「進学?就職?それともプー?」
「…てめえの悩みはソレか?」
「そうよ」
「くだらねぇ」
「蛭魔君にとってはくだらなくても、私にとってはくだらなくないんです」
「ああ、そうデスカ」
「そうです!で?進学?就職?」
「プー」
「えぇ?!本当に?!」
「嘘に決まってんだろバーカ」
心底馬鹿にした目で見下ろされまもりは頬を膨らませた。
「真面目に答えて」
「ライスボウルを目指すんだ 進学に決まってんだろが」
「蛭魔君もライスボウル目指すんだ」
「ムサシもな。関東、関西、社会人に別れての三國志だ」
「ちゃんと目標持ってるんだね。……って、じゃあ蛭魔君は炎魔大には行かないの?!」
「糞デブと一緒のとこ行ったんじゃ三國志になんねえだろうが」
「そうよね…。そっか、関西に行っちゃうんだ…」
「清々すんだろ?」
「……寂しいよ…」
「……糞チビの過保護卒業したら、次は俺の面倒だったもんなぁ。根っからの世話焼き根性は見上げたもんだが、ま、大学にも手のかかる男の一人や二人は居んだろ?期待しとけ」
「そんな期待いりません」
「てめえの悩みは結局なんだ?進学するか就職するかなのか?大学は何処にするかか?それとも面倒見る男が居なくなるか?」
「……二番だと思ってたけど……三番なのかも…」
「あん?」
「私の夢はずっと保育士か小学校の先生になることだったのよ」
「過去形か?」
「一応、現在進行形。だけどね、その道選んじゃったら蛭魔君とはお別れだなぁって思って…」
「てめえ馬鹿だろう?」
「うん。多分」
「一緒の大学行くっつー選択肢考えりゃ良い話しだろうが」
「…!」
「喜べ糞マネ。俺が行くのは最京大だ。てめえの進みたい学部は揃ってんぞ」
「でも関西でしょ?」
「日本だ。迷ってんなら俺が決めてやる。てめえの進路は最京大アメフト部マネージャーだ!こきつかってやるから従順に働きヤガレ!」
「マネージャーが進路なの?」
「天職だろうが」
どうだと言わんばかりの得意気な蛭魔の顔を見た瞬間、まもりの脳裏にふっと、7月7日にちなんだ7を2つ使った四字熟語が浮かんだ。
“七 縦 七擒”
まさに蛭魔の為にあるような言葉。
「うん。頑張ってみようかな」
「みようかななんざ甘っちょろいこと許すワケねぇだろ!死んでも合格しヤガレ!」
「キャー!ちょっと!何処に持ってたのよ水鉄砲なんか!!」
どこから取り出したのか蛭魔が放った水鉄砲の水でまもりは頭から水も滴る良い女になってしまった。
ぎゃあぎゃあと蛭魔とまもりの言い合う声が夜空に吸い込まれて行く。
まもりの願いは図らずも叶いそうだ。
END
・・・・・・・・頑張ったんです。
頑張るだけは頑張ったんです。
実にならねえ頑張りなんざ糞だと蛭魔さんに云われそうですが・・・・頑張ったんです~~!
もう、今の限界です。
一昨日から書き始めたけど、昨日の昼すぎになって没にして 新しいお話書き始めました。
本当に時間がなかったのです。
言い訳ですが・・・・。
女々しいな・・・。
次のカウンター19000記念小説は 少しでもしっかりしたものが書ければ良いにゃ~~~★
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