BE MY BABY (1)
うちの娘は自慢の娘だ。
決して親の贔屓目でなく、世間一般の基準から見ても素晴らしく良く出来た娘だ!
優しく、美しく、頭も良い。
非の打ち所が全く無い。
そんな素晴らしい娘にどうやら悪い虫がたかろうとしているらしい…。
悪い虫がつかないよう、中学は女子校に通わせたがそれでも登下校中に恋慕してラブレターを渡す輩は結構いた。
それなのに高校は何を迷ったか共学、しかもよりによって泥門なんぞという偏差値の低い学校に行くと言い出した…。
勿論、私は反対した。
根気強く説得を試みた。
せっかくエスカレーターな学校に通っているのだからそのまま進級すれば良いと。
しかし、娘の意思は固かった…。
なおも説得しようとする私を妻は「娘を信じて彼女の意思を尊重してあげなさい!」と一喝し、私は黙って従うしかなくなった…。
落ち込んだ私は自分の書斎にこもっては娘の小さい頃のアルバムを眺める日々が暫く続いたものだ。
高校に入っても娘は変わらずモテてはいたが、悪い虫がつく事もなく平和だった。
それが……二年生になった頃から雲行きが怪しくなり始めた。
突然、アメフト部のマネージャーになり、帰りの遅い日が増えた。
土日も部活だ試合だと、朝から晩遅くまで外出する。
心配で気が気ではない私を尻目に妻は「血かしら?まもりも4分の1はアメリカ人の血が流れているものねぇ」なんてアメフトにハマッた事を気楽に微笑んでいた。
何をのんきな事を!?と内心、イライラしていた私の悪い予感は的中する事となる…。
先週の事だ。
夕食後、妻がやけに嬉しそうにリビングで寛いでいる私の元にやって来た。
どんなに嬉しいことがあったのか尋ねた私に妻は死の宣告に等しい言葉を無邪気に告げた。
「まもりにね、どうも彼氏が出来たみたいなの~」
ショックだった。
まさか私の可愛い娘に男だとぉ?!
あれだけ素敵で完璧な娘だ、モテないはずは無い。
しかし、完璧故にそんじょそこらの男にとって娘は遠くから眺めるしかない存在。
まさに高嶺の華!
稀に自分を知らない勘違い男が告白してくることもあったようだが、娘はそんな男に振り向くことはなかった。
娘はちゃんとわかっていたのだ。
自分と釣り合う完璧な男などそうそう居ない事を!
大体、恋人なんぞと言うものは、結婚適齢期になって探せば良いんだ!
まだ子供だ。
愛だ恋だのにうつつを抜かすなんて十年早い!
きっと純真無垢な娘は悪魔のような男に騙されているに違いない。
娘に彼氏が出来たと暢気に喜んでいる妻は当てにならない。
娘は悪い虫にたぶらかされて今は現実が見えなくなっているんだ!
騙されているんだ!
そんな娘を守れるのは父親である私しか居ない!
そうだ、いないんだ!
どうにかしないと!
私は害虫駆除を決意した。
・・・・・・が、父親の立場と言うのは微妙だ。
年頃の娘の心は扱いが難しい。
ひとつ間違うと取り返しのつかない事になりかねない危険を孕んでいる。
事は慎重に運ばねば……。
久しぶりに親子三人揃って夕食をとった時、私はさりげなさを装いつつ、それとなく娘に話しをふった。
「まもり、今度の日曜日、練習試合なんだって?」
「えぇ。そうなの。クリスマスボウルで優勝してからこっち、色んな学校から練習試合の申し込みが来ててね、蛭魔君は「実践が何よりも練習だ!」って申し込み片っ端から受けちゃうから本当、大変なのよ」
困りながらも嬉しそうな顔をする娘に歯軋りしたい気持ちをぐっとこらえ、にこやかに話す。
「そうなのか。蛭魔君ってのは一生懸命な子なんだね」
「蛭魔君に一生懸命な子って形容詞は似合わないけど…でも、まあ、一生懸命は一生懸命ね。一途って言うか、蛭魔君って本当にアメフト馬鹿なのよね」
そう言ってはにかむように微笑む娘に気持ちが萎えそうになりながらもどうにか立て直す。
「今度の日曜日はちょうど仕事も休みだし、一度試合を観戦してみようかなぁ」
「えっ?ただの練習試合よ?」
「別に練習試合でも構わないさ。まもりがそんなに一生懸命になっているものを一度くらい見ておきたいだけなんだから。もう少ししたら引退なんだろ?」
「えぇ。泥門は二年の秋で引退だから公式戦はもう出れないの。三年になったら練習試合も新入生が出るから出れなくなるわ…」
「差し入れ持って応援に行くから頑張ってくれよ」
「うん!」
疑われることなく作戦に突入できた事に私はほくそ笑んだ。
続く
もう少しは書けているのですが キリが良いのでここまで★
さわりしかないですね・・・。
タイトルはテキトー。
思いつかなくて★

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