BE MY BABY (5)
ガチャッ
部屋の奥で音がしたのでそちらに目をやるとそこには―――
悪魔!
悪魔が降臨した!!
何故だかはわからないが、直感的にコイツが蛭魔だとわかった。
目の覚めるような金髪を全部逆立て、わざと目立たせているかのような尖った両耳にはこれ見よがしなピアスが2個ずつ光っている。
つり上がった目も裂けたような口も、すっと通り尖った鼻梁も、放つ雰囲気も、何もかもが鋭角で鋭さを強調している。
常人とは違う。
一目で相手にそう思わせるだけの術をこの男はこの歳にして熟知しているのだと判る。
ただ者ではない…。
何の構えもしていない所に現れられたおかげで私は咄嗟に言葉が出なかった。
戸惑う私に全く気付くことなく、まもりが蛭魔に私達を紹介した。
「あ、蛭魔君!私の両親。今日の練習試合を見に来たの」
「わざわざ有り難うゴザイマス」
悪魔はあくまで儀礼で友好的な態度を示して来た。
友好的に来る者を邪険にする程、私の器は小さくない。
こちらも表面的にはにこやかに挨拶を返す。
「初めまして。君が蛭魔君か。娘から話しは良く聞いているよ。いつも娘がお世話になっているそうで」
「いえ、こちらこそイロイロお世話になってます」
差し出した手を蛭魔が握り返して来た。
「ほぉ、色々ねえ」
思わず顔が引きつりそうになる。
私も若い頃はスポーツマンでならしたもんだ。
若造にはまだまだ負けん!
爽やかな笑顔を浮かべながら、蛭魔の手をおもいっきり握った。
「ええ、イロイロ」
涼しい顔で蛭魔も私の手を握り返して来た。
痛いっ!!
半端無い握力の強さに思わず手を振りほどきそうになったが、父親のプライドでなんとか踏みとどまった。
「ははは。さすがスポーツマンだね」
全く平気なフリで笑顔をなんとか取り繕った。
「おい、マネージャー!ミーティングするから全員グラウンドに集めろ」
「!! はい!」
突然の蛭魔のぶっきらぼうな命令に、まもりはほんのり頬を染めると嬉しそうに「ハイ!」と返事して部室を飛び出して行った。
「まもりったら嬉しそうねぇ~」
一部始終を静観していた妻が頬に手をあてうっとりと呟く。
冗談じゃない!
なんでウチの娘があんな横柄な態度の命令を喜んで聞かなきゃならんのだ!?
ウチの娘言う事なら尻尾を振りながらひざまづいて聞く男がゴマンと居るはずだ!
その娘が命令一つでこき使われるなんて納得出来ん!
「試合開始までゆっくりしておいて下さい」
私達にそう言うと蛭魔も部室を出て行った。
「まもりが蛭魔君みたいなタイプを好きになるなんて意外だけど、案外、お似合いなのかもねぇ」
「はあ!?どこがだ!?」
「だって…あの子って、可愛いし、スタイルも良いし、性格も良いけど、真面目と言うか、融通がきかないと言うか…物事四角四面にとらえ過ぎて考えに余裕がなかったじゃない?それがアメフト部に入ってから変わったわ。良い意味で砕けたって言うか…人生に張りとか幅が出たように思うの。まさに青春って感じで毎日イキイキ輝いてるもの。それってきっと蛭魔君の影響だと思うのよね」
「……。」
妻の言葉に私はただ黙ってコーヒーを飲んだ。
続く
短くてすみません。
次回は早めのUP目指します~~~~!

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